自営業で、個人再生でなく破産を選択した場合、仕事は続けられる?

~自営業をしているが個人再生ではなく破産をしようという方に、弁護士(仙台)がアドバイス~

【ご相談内容】自己破産と事業継続の可否について

自営業をしています。

実は、自営業ということでは、もう、10年以上になりますが、

以前は、自動車の鈑金・塗装業をやっていました。

ですが、最近は、めっきり客が減ってしまったので、

新しく、中古の自動車部品の輸出をすることにしました。

もう、仕入れ先も見つけましたので、

あとは、その都度、海外に行って顧客に説明して、

商談→輸出→代金回収という流れになると思います。

ところが、鈑金・塗装業時代にできた借金がかなりあるので、

こちらを整理しなければなりません。

日本政策金融公庫と銀行と信用金庫の3社です。

個人再生というものあると聞きましたが、

この中古の自動車部品の輸出もまだこれからということで、

返済の原資もありません。

ですから、自己破産をするしか整理のしようがありません。

ですが、このように新しい商売を始めながら、

自己破産ってできるものなのでしょうか?

自己破産をすると働いちゃいけないのでしょうか?

あと、部品の仕入れはどうなりますでしょうか?

具体的なビジネスモデルはこんな感じです。

1 部品を仕入れて、各仕入れ先から、一旦、友人の持っている倉庫に集積

2 海外の販売先に輸出して、代金は相手方が受領検品しての支払い

3 支払いがあったのちに、仕入れ先には支払い

ということで、お金がないので、先に仕入れ代金を支払わなくてもよいようにしています。

ちなみに、かなり古いですけど、中古の自動車があります。

こちらは、仕入れの関係で、取り上げられると困るんです。

ですが、自己破産すると、車はもてないとなるのでしょうか。

【回答】

自己破産と事業継続

まず、たしかに、そもそも、売り上げが立つのか立たないのか

が分からない状況ですから、選択としては、個人再生ではなく、

破産になるというは合理的な選択です。

次に、車の件について申しますと、

基本的に、5年を経過して、減価償却したような車については、

破産財団から放棄されます。

破産財団から放棄というのは、

要するに、破産管財人が管理する財産から外すということです。

破産管財人が管理しないということになると、

結局、元の所有者のところに戻ってきますから、

あなた自身が所有し続けられることになります。

自己破産と事業用在庫の関係

それから、その新規ビジネスの件ですが、

これは、結構、破産手続きと同時並行は難しいです。

基破産手続きが開始すると(これを「開始決定」といいます)、

その時点でのあなたの財産は、

すべて裁判所・破産管財人の管理下に入ります。

この破産管財人が管理することになった財産を

「破産財団」

といいます。

そうしますと、破産手続き開始の時点で、

例えば、大量の中古自動車の部品の在庫があった場合には、

それは、破産財団の一部になるので、

破産管財人がこれを売却するなりして、お金に換えて、

破産費用(破産管財人の報酬)

ないしは

破産債権者への配当

に回すことになります。

あなたが在庫である中古自動車部品を勝手に処分することはできなくなります。

また、仮に、破産手続き開始の時点で、

あなたが、すでに、部品を売っちゃってしまっており、

代金の支払いを待つばかり、という状態になっている時でも、

その売掛債権は、やはり、破産財団の一部になるわけですから、

結局、その売掛金は、破産管財人が回収して、

破産費用(破産管財人の報酬)

ないしは

破産債権者への配当に

に回すことになります。

自己破産と弁済禁止効

また、仮に、破産手続き開始の時点で、

売却先から、検品も終わって、代金の振り込みがなされて、

そのお金があなたの口座に入ってきたとしても、

あなたが仕入れた先に対する買掛金は負債となりますので、

こちらについても、あなたが勝手に、その仕入れ先に仕入れ代金を支払うこともできなくなります。

これを自己破産の開始決定による弁済禁止の効力と言います。

ですので、当然ながら、一度、そのような目にあった仕入れ先、

つまり、代金をとりっぱぐれた仕入れ先は、次から、仕入れをさせてくれなくなるでしょう。

ですから、結局、ビジネスを継続できなくなるということです。

これから、そのビジネスに着手するということでしたら、

ちょっと、待った方がよろしいかと存じます。

そして、速やかに、破産の手続きをすすめた方がよいと思います。

破産手続きであっても継続できるビジネスモデル

「いやいや、破産の費用を工面するためにも、早く、新しいビジネスをやりたいんだ」

というかもしれませんが、そうであるならば、

そのビジネスのアイデアを誰かに提供してはいかがですか?

そして、売掛とか在庫とか買掛とは持たないで、

あなたは、外注ないしはコンサルとして関わり、

売り上げのパーセンテージをもらうような形態にしてはどうでしょうか?

まあ、もちろん、そのような仕事のパートナーを見つけること自体も容易ではないとは思いますので、

とにもかくにも、債務整理を急ぐのが一番だとは思いますが。

~以上、自営業をしているが個人再生ではなく破産をしよという方に対する弁護士(仙台)からのアドバイスでした~