~破産を選択しようとするので、妻と離婚をするというご相談に対して、弁護士(宮城・仙台)がご回答申し上げます~
【ご相談内容】破産に際して妻と離婚することについて
本当は、個人再生をしたかったのですけれども、商売をたたむ関係で、無職になるので、破産申請することになりました。
破産申請する前に妻に迷惑をかけるわけにはいかないので、妻とは離婚しようと思っています。
妻には、さしたる財産はありません。
ただ、昨年、妻の実父が亡くなった際に、妻が実家の土地建物の2分の1を相続してしまっています。
当時は、私が、商売がうまくいっていないことを妻に告げていなかったので、相続を放棄することもできませんでした。
大した価値はないと聞いてますが、それでも、土地建物全体で3000万ぐらいにはなりそうなので、計算上は1500万円は妻の財産ということになります。
妻とその兄とでそれぞれ2分の1ずつ相続しておりますが、実際に住んでいるのは、その兄夫婦と子供1人です。
その家が私の借金整理や破産の問題で、競売になってしまうのは、どうしても、避けたいので、この度、妻と相談した上、離婚することにしました。
実は、妻には、連帯保証人になってもらっている債務もあります。
こちらについては、連帯保証人である以上、妻と離婚しても、妻に支払い請求が行くことは分かっています。
なので、こちらは、申し訳ないのですが、妻の方で、別途、債権者と協議してもらうことになっています。
夫失格・父親失格です。
妻には、破産するので、しばらくは養育費は払えないことを伝えました。
来月には、妻が子供を連れて、一時、妻の兄のいる元実家に行きます。
まとまったお金もないので、当面は、妻たちはそちらでお世話になることになります。
破産する以上、ここまでしか私にできることはないですが、これで一応は大丈夫でしょうか?
【ご回答】
夫の破産の妻への影響
大丈夫ではないです。
破産を申請するということで、どこまで準備がなされているのか存じませんが、そもそも、
【破産するから、妻の実家がなくなってしまうから、離婚する】
というのは理屈に沿いません。
破産するのはあくまでもあなたご自身なのです。
ですから、あなたが破産したからと言って、妻の相続財産がなくなってしまうということはありません。
妻が連帯保証していることと離婚
逆に、妻があなたの連帯保証をしているから、
妻の相続財産が差し押さえされる
とか、
競売にかけられてしまう、
ということを回避する目的であれば、離婚してもあまり意味がありません。
離婚しても、あなたご自身が分かっていらっしゃるように、連帯保証人であることに変わりがありません。
ですから、その債権者と妻とが協議をしたけれども、例えば、
分割払いが認められない
とか、
分割払いが認められても、その支払い期間が合意できない
とか、
一回当たりの支払金額が合意できない
という場合には、結局、協議はまとまらないということですから、一括でその連帯保証した債務を支払え、と求められることになります。
不動産持ち分の差押え~任意売却
そして、それができないということですと、その奥さんの資産である相続財産の持ち分について、差し押さえ→競売に進む可能性があります。
ただし、現実問題としては、なかなか、不動産の持ち分となると、競売をしても、落札者(入札する人)が現れにくいのです。
債権者としては、任意に売却して、その売却代金を支払いにあてるように求めてくる可能性が高いです。
「そんな競売をしても落札者が現れないような不動産の持ち分を誰に売却するのか?」
と疑問をお持ちになるかもしれません。
売却先候補として、真っ先に挙げられるのが、妻のお兄さんです。
もともと、お兄さん家族は、その家にお住まいなのですから、その家の持ち分全部を取得したいはずです。
ですので、
「お兄さんなら買ってくれるんじゃないか?」
と債権者も考えるはずです。
ですが、そうすると、たしかに、妻のお兄さんにまた迷惑をかけてしまうかもしれない、って思いますよね。
不動産共有の遺産分割をするのはよろしくない
ただ、不思議なのは、
どうして、そのような相続というか遺産分割をしたのか?
ということです。
たしかに、今は、妻とお兄さんは、仲が良くて、妻が2分の1の持ち分を有しているにも関わらず、お兄さん家族が住み続けられています。
ですが、将来的に、妻自身の相続が問題になる場合には、あなたのお子さんが相続することになります。
そうしたら、あなたのお子さんは、
自分で住んでもない家なのに、持ち分だけあっても困る、
ということにならないでしょうか?
できれば、その持ち分を妻のお兄さん家族側で買ってもらいたい、ということになりませんか?
その金額はともかくとしても、いつまでも、妻名義がお兄さんが住んでいる家に残り続けるのは、権利関係として極めて不安定な状況です。
相続対策だと思えば親族間売買は有効である
ですので、家の全部をお兄さん家族で利用する(している)以上は、
「家の2分の1の持ち分を買ってください。」
とお願いするのは、別におかしなことではありません。
「そんなお金(例えば、1500万円)をお兄さんは持っていない」
というのであれば、持ち分を買い取るということで、住宅ローンが組めるはずです。
それで、もし、連帯保証分が解消する、つまり、連帯保証の負債が完済できる、
というのであれば、家の問題はもう何もないわけですから、離婚する必要はありません。
逆に、連帯保証している債務が、妻の家の持ち分を売却した程度では全然足りないくらいに多額で、沢山の負債が残ってしまうのであれば、話は別です。
妻自身も債務の法的整理として、
個人再生や破産を検討しなければならないかもしれません。
そのようにして、きちんと整理するのであれば、それはそれでやはり離婚する必要はありません。
ということで、結論として、あなた自身の債務の整理の関係から言えば、
離婚することにあまり意味がありません。
いかがでしょうか。それでも、妻自身が離婚したい、とおっしゃっているのでしょうか?
~以上、破産を選択しようとするので、妻と離婚をするというご相談に対して、弁護士(宮城・仙台)からのご回答でした!~