ローン付住宅の賃貸、連帯保証人の事前求償権及び個人再生等の検討

~住宅ローンの連帯保証人になっただけでも大変なのに、その住宅が第三者に賃貸され、その家賃はローンの返済金にもあてられないというひどい状況について、弁護士(宮城・仙台)がアドバイスを~

【ご相談内容】連帯保証している住宅が賃貸に出されている場合の債務整理について

大変、お恥ずかしい話ですが、バカ息子が住宅を購入する際に、私は連帯保証人になりました。

早くに離婚して、私と息子とは、母一人、子一人で生活してきたもので、

息子が不憫にならないように、甘やかしすぎてしまいました。

今回も、息子が、

「どうしても、いい分譲マンションがあるから買いたい」

「自分はまだ会社勤めの日が浅いから連帯保証人を求められている」

と言うことで、息子のために、連帯保証人になりました。

そして、そのマンションで、息子は女の人(彼女)と同棲をしていたのですが、

いつの間にか、別れたようで、私がそのマンションに行ったところ、

驚いたことに、その元彼女とその母親が住んでおり、

息子はずっと行方不明だというのです。

ただ、私が

「このマンションは息子の名義の物件ですが・・・」

というと、その元彼女の母親が、

「そんなことは知ってます。」

「お宅の息子さんから頼まれて、この物件をお家賃を支払って借りているんです」

とのこと。

最初は、口から出まかせを言っているんだろうと思っておりましたが、

実際に、簡単な契約書もサインされているし、

毎月、お家賃を振り込んでいるという通帳も見せてもらいました。

そこで、私は、

「現在、住宅ローンが遅れていて、連帯保証人である私の方に請求が来ている。」

「その息子への振り込みをやめて、私に振り込んでもらえないか。」

と頼んだところ、

「そんなことはできない。」

「もし、お家賃の振り込みをやめて出て行けと言われたら困る」

「親子の問題は直接、親子間で解決してほしい」

と返答されました。

私は、

「ですが、このまま、住宅ローンを支払わないと競売になるかも」

と銀行から言われた言葉をそのまま伝えたのですが、

「そんなことも知っている。」

「ただ、競売になっても賃借人はお家賃を支払っている限り保護される」

と返されてしまいました。

本当に、そうなのかも分かりませんし、私の立場としてはどうすればよいのでしょうか。

私は破産になりますか?

私は、このマンションがどうなろうと構わないのですが、マンションのローンを引き受けるだけのお金はありません。

【ご回答】

賃借人は、賃貸人に家賃を支払っていれば保護される

息子さんは、行方不明なのに、お家賃だけはどこかで受け取り続けているんですね。

しかも、ローンを支払わないとは無責任なことです。

ただ、その元彼女の母親の言うことは、正しいです。

つまり、 あくまでも息子さんと賃貸借契約を結んだのですから、

賃貸人である息子に家賃を支払い続けなければならない

というのはある意味当然です。

逆に、息子さんに家賃を支払い続けていれば、競売にかけられて、落札されても、落札した人は、その賃貸借契約を無視して、その元彼女と母親を追い出すことはできません。

競売で落札する人は、そのような賃貸借契約があることを前提に落札しているからです。

競売になるかどうかより落札価格が問題

ですので、その元彼女親子に出て行ってもらうのは難しそうです。

ただ、あなたにとって重要な問題は、かかる現状のもとで、競売になったとして、いくらで落札されるかです。

その落札金額が、住宅ローンの残債務以上であれば、住宅ローン会社(金融機関あるいは保証会社)は、すべてのローンを回収できます。

したがって 、当然ながら 、それ以上の金額を、あなたに請求することはできません。

ですので、それでおしまいです。

落札金額が住宅ローン残債務以下であった場合

問題は、落札金額が、住宅ローンの残債務を完済するほどの金額でなかった場合です。

その場合には、住宅ローン会社から、

「競売の落札代金だけでは、住宅ローン完済にならなかったので、早く残りの債務を連帯保証人であるあなたが弁済してください」

と言われてしまいます。

そして、その残りの債務の金額が、数万円とか払える金額であればよいですが、そうでなければ、破産ないしは個人再生を検討しなければなりません。

連帯保証人の事前求償権とは?

以上が一般的な説明ですが、

その元彼女の母親の家賃が住宅ローンの返済もしない息子さんに流れていくのを、ただ指をくわえて見続けるしかない、というのはあまりにあまりですよね。

事前求償権というのがあります。

民法第460条(委託を受けた保証人の事前の求償権)

保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。

1)主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。

2)債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。

3)債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。

そもそも、求償というのは、本来お金を支払わなければいけない人(主債務者)がお金を支払わないでいた場合に、その人に代わってお金を支払った(立て替えた)人(保証人)が、

「あなたに代わって支払ってあげたので、立て替えてあげた分を私に支払ってください」

と言って、本来お金を支払わなければいけない人(主債務者)に請求できることです。

ですので、原則としては、立て替えた後に、立て替えた分を支払えと請求することができるのですが、

あなたのように、「委託を受けた保証人」の場合であって、

「自分が立て替えて払わなければならないことが確実である」

という状況の場合には、現実に立て替えてなくても、予め(事前に)自分に支払えと請求することができるのです。

住宅ローンを延滞しているのですから、「債務が弁済期にあるとき」にまさに該当します。

したがって、あなたは事前求償権を行使できます。

事前求償権の『行使』とは?

「『行使できる』ってどういうこと?」

と思いますよね。

つまりは、裁判に訴えてでも、請求できるということです。

「でも、息子は行方不明なんですが・・・」ということですよね。

八方手を尽くしても息子が見つからない場合には、公示送達と言って、

単に張り紙を出すだけで、送達した(息子に送り届けた)ということにできます。

さらには、その「裁判」ですが、いわゆる普通の訴訟をしてもよいですが、仮差押えと言って、通常よりも迅速な仮の暫定的な裁判をすることもできます。

ただし、その場合には、保証金が必要となります。

家賃の差し押さえ

そして、以上のように、

訴訟を起こして「判決」を取得するか、

仮差押えを申し立てて「決定」を取得すれば、

それによって、そのお家賃を差し押さえることが可能となります。

いくら残債務があるのか分かりませんが、その差し押さえたお家賃分ぐらいは、回収することができます。

しかし、

差し押さえたお家賃+競売でマンションを売却した代金

でも、なお残債務が発生してしまう場合には、

やはり、ご自身について、破産ないし個人再生等の債務整理(お金がないということであれば個人再生は難しいかもしれません)を考える必要があります。

~頼まれて連帯保証人になったという方は、主債務者が返済を怠った時点で、事前求償権が行使できるということをぜひ知ってほしいというが、弁護士(宮城・仙台)からのアドバイスになります~