~破産だけは絶対にイヤ!なんとか、任意整理でお願いします、と言う方は多いですが。一時の感情的なお話としか思えない方がいらっしゃいます。お金の返済は現実的に考えましょう。それから、任意整理ももちろんよいですが、個人再生も検討してみてはいかがですか?そんな話を弁護士(宮城・仙台)がお答えします~
【ご相談内容】任意整理崩れと個人再生について
お恥ずかしい話ですが、複数社の消費者金融からの借金が返せなくなってきてしまいました。
当初は、昼間の仕事に加えて、早朝と深夜のトリプルワークでなんとかぎりぎり支払ってきたのですが、体調を崩してしまい、全部の仕事をなくしてしまいました。
それと同時に情けない話なのですが、働く気力というか、緊張感がぷつっと切れてしまいました。
どうせ、どんなに頑張ったところで、返せる借金ではないのです。
さらにお恥ずかしい話ですが、消費者金融からお金を借りた理由は、以前、交際していた女性との関係です。
直接的に、お金を貢いだわけではないのですが、全部私持ちで、一緒に、旅行に行ったり、食事をしたり、記念日・誕生日にプレゼントをしたりとしているうちに、借金が膨れ上がってしまいました。
両親にもこのことは相談していません。というかできていません。
また、その彼女とも、もう別れました。
任意和解や調停・個人再生等の債務整理の他、思い切って両親に頼るなどの方法があると思いますが、自己破産だけは躊躇しています。
その理由は、車がなくなると困るというのと、債権者の方々に全く返済しないというのは、あまりに無責任なような気がするからです。
できれば、消費者金融の会社に相談して、借金を多少減らしてもらうのと、可能な範囲の月額の支払いにしてほしいのですが、そのようなことは可能でしょうか?
【ご回答】
トリプルワークを前提とした長期返済計画は無謀
結構、借金返済に向けて頑張られたようですが、さすがに、トリプルワークはきつかったのではないでしょうか。
なんでも、継続性がないとうまくいきません。
特に、借金の問題は、現実可能性のある解決方法でないと、中途半端で終わっては、それまでの努力が意味のないものになってしまいます。
つまり、例えば、今のあなたの借金の額が300万円だとしましょう。
給料から、返済に回せるお金が、なんとか切り詰めて月3万円として、
全部返済するのに、100回(100か月)かかる計算になります。
つまり8年以上かかるのです。
8年もあると、また、その間に、何か急な出費を要する事態が生じるかもしれません。
仕事についても、今の仕事を続けられるかどうか不確定です。
何より、ある日、あなたの、節約ないしは切り詰め生活の緊張感が切れてしまうかもしれません。
そこで、今度は、何とか早く返済してしまうために、仕事やバイト・パートを増やすことも考えられます。
ですが、本来の仕事に加えて、ダブルワーク・トリプルワークをするというのは、短期間であればともかく、継続的に行うというのは、肉体的にも、精神的にも、大変な労苦を伴います。
2か月や3カ月の話ではないんです。
一時期の情熱に燃えて仕事を始めても、それを継続できるのかって話です。
長期返済が途中で力尽きたら?
それでも頑張って、例えば、 300万円の借金を200万円に減るまで返済したとします。
そこで、力尽きてしまったとすると、まだ、借金は残ったままです。
借金は残っているのに、借金を整理するための費用がない、ということになります。
借金を整理するのにも、費用が掛かります。
当該費用を捻出するのに、多くの方は、積み立て方式を使います。
そうすると、そこから、また、頑張って、借金整理の費用を捻出するための毎月の積み立てを開始します。
しないと債務整理ができませんから。
債務整理をするには費用がなければならないということです。
いかがでしょうか。頑張れそうですか?
そういうことも考慮して、現在のあなたの借金をどのように整理するかを検討する必要があるのです。
任意整理で減額はできるのか?
ちなみに、
「消費者金融の会社に相談して、借金を多少減らしてもらうのと、可能な範囲の月額の支払いにしてほしい」
というのは、これは、任意整理というものです。
任意整理とは、一旦、借金の支払いをストップして、今の借金の額を利息制限法に照らして、再計算して、本当の借金の総額を確定し、支払い期限を3年とか5年とかに定めて、月々の支払いをするというものです。
したがって、借りたお金の利息( 過去に支払った利息 )が、利息制限法に照らして正しい利息であったのなら、借金は減りません。
また、月々の支払額を抑えようとするとすると、支払い期限を長期間にする必要がありますが、自ずと限界があります、というか理屈上は何年もあり得ますが、あまりに長期間では債権者が受け入れません。
先ほど例で出した100回払いなどは、金融機関も受け入れないと思います。
ですので、借金の総額によっては、月々の支払額がそもそも支払えない額になる為、任意整理が無理であるということもあり得ます。
それでも、
「なんとか仕事を増やして頑張るから」、
とか、一時は熱い情熱をもって言い切るものの、その後、根気を維持できないで、断念する方は少なくないのです。
いわゆる「任意整理崩れ」です。
個人再生と任意整理との比較検討
自己破産を躊躇されるというのは分かりましたが、例えば、個人再生ですとか、両親に頼るとかいう方法も検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、手続き的には、個人再生は、任意整理と比べてみると、とても大変です。
・いろいろな資料を集めたり、
・弁護士や裁判所からのいろいろな質問について答えたり、
・答えるためにいろいろ調べたり、
しなければならないということがあります。
また、債権者の数にもよるので一概には言えませんが、一般的に、個人再生の方が費用が掛かると思います。
ただし、個人再生の場合には、8割程度の負債がカットされますから、債務整理後のことまで考えれば、任意整理よりも個人再生の方が、経済的負担は少ないと言えるでしょう。
そういうことを考えると、ご両親に「借金」の肩代わりではなくて、債務整理(個人再生)の費用を援助してもらって、手続きを進めるのがご相談者の方の場合にはいいような気がします。
任意整理崩れの後処理は意外と難しい
任意整理が続かなくて、結局、破産にしてほしい、個人再生に切り替えたい、と言う方は実は結構な数にのぼります。
「最初から任意整理で支払った分を手続き費用として積み立てればよかった」
と後悔される方もおります。
また、任意整理中に、いろんな支払いや買い物をしている関係で、特に、自己破産との関係で、管財人から突っ込まれることも多くなってきます。
~落ち着いて、仮に、任意整理で債務を返済するとした場合に、現実的に完済まで漕ぎつけられるかどうか考えてみていただけたでしょうか。以上、弁護士(宮城・仙台)からのアドバイスでした~