~自宅兼店舗で商売をやっている方の借金の相談はよくありますが、これは本当に大変です。商売そのものが、そもそもうまくいっていないからこそ、借金の問題が出てくるのですが、商売に関わることなので、通常のお勤めの方の場合と異なり、考えることが非常にたくさんあります。
今回はそれに離婚が、相続が、と複雑に絡んでおり、一応、お話はしますが、これは絶対に弁護士に相談しながらやらないと最終解決は難しいでしょう。あと、お父様の今後の人生もかかわってくるので、ちゃんと、本人も含めて進めていかないといけません。ということで、弁護士(宮城・仙台)からの解説になりますが、これは一般論ないしは相当いろいろな仮定の前提が入っていることを理解の上でお読みください~
【ご相談内容】営業店舗がある場合の個人再生・自己破産について
父は、白石で、敷地の上に自宅兼店舗を立てて、ずっと経営しておりますが、赤字続きです。
店舗というのは、昼は喫茶店で夜はスナックになっており、スナックは、知り合いの女性にママをやってもらっています。
毎月の支払いのために、とうとう、消費者金融にまで手を出すようになってしまいました。
もともとは、赤字と言っても大したことはなかったのですが、数年前に離婚してから苦しくなりました。
当時、離婚に際する財産分与と言っても、その自宅兼建物しかなく、それを半分渡すというわけにもいかないので、結局、父が借金をして500万円を支払ったのです。
その借金の返済に加えて、一度、水漏れ事故があり、その修繕のためにさらに日本政策金融公庫から借り入れをしましたがそれで拍車がかかりました。
それていて、店の営業は赤字です。
以上のことが重なったことで、正直、八方ふさがりです。
店はやめて、借金の整理をした方が、絶対に父も楽になるとは思います。
それとも、個人再生をしたら、店を続けられるのでしょうか?
ただ、このまま個人再生でも破産でも、借金整理に突入するとどういうことが待ち受けているのかが分からず、父にも借金の整理を勧めきれないところがあります。
父は、
「家を売ってしまえば借金の返済ができるのだから、やれるところまではやる」
と言っております・
しかし、敷地については、実は、祖母の名義のままになっていて、祖母が亡くなった後も父が祖母と一緒に暮らしていた関係で、なんとなく、父がそのまま使っているのです。
ただ、家を建てたときには、祖母はまだ存命で、父の他の兄弟も1人は仙台で、1人は石巻に出て行ってしまっていました。
住宅ローンの担保には、その土地も一緒に担保に入っていると思います。
何から手を付ければよいのか教えてもらえないでしょうか。
【ご回答】
大きく分けるとやり方としては3つだと思います。
不動産の売却活動(任意売却)をしてから債務整理を考える
≪不動産売却→債務(借金)整理≫
何から手をつければよいかというと、まず、その自宅兼店舗が売れるかどうかをあたってみることでしょう。
前提として、自宅兼店舗建物は、お父様の名義だということですが、建物だけでは売れません。
土地については、おそらく、兄弟で3分の1ずつ権利は持っていますので、その3分の1の土地の持ち分と建物を買うという特殊な業者がいれば、その業者に対して売ることも可能でしょうが、相当程度に買いたたかれる可能性があります。
ということで、もう、他の兄弟も仙台や石巻に住んでおり、白石に帰ってくる気もないということであれば、兄弟3人で一緒に土地を売るという合意を取り付けること、すなわち、土地を共同売却して、土地の代金を3分の1ずつ分けることで納得してもらえるのではないでしょうか。
不動産の売却価格により債務整理をどうするかが決まる
では、次に、土地と建物を一体として売却するとして、その売却代金が今の住宅ローンを返済するのに必要が金額になるかどうかが重要です。
ここで勘違いしないでもらいたいのは、他の兄弟の取り分には手をつけないで、つまり、建物の代金と土地の代金の3分の1の値段で、住宅ローンの残債務が返済できるかということです。
売却活動にあたっては当然ながら地元の不動産業者におおよその見込みを聞きこみしておいた方がよいでしょう。
また、事前に住宅ローン会社(銀行等)に相談するかどうかですが、まずは、先に売却活動を少し進めてみてからにしましょう。
そうでないと、無駄に騒動を引き起こす可能性がありますので。
住宅ローンが片付いても他の借金が残ればやはり債務整理が必要
それで、仮に、土地建物を売却できて、その売却代金から他の兄弟に取り分を渡 して、住宅ローンを完済することができても、他の借金も返済できるかが問題となります。
もちろん、それで全ての借金が返済できてしまえば、借金はなくなり終了です。
他方で、それでも借金がまだ残るということであれば、取りうる債務整理としては、その金額にもよりますが、自己破産にならざるを得ないのではないでしょうか。
お店はなくなるので、お店の売り上げがなくなりますので、収入がなくなってしまいます(そもそも、赤字だそうですが)。
すると、収入がない状況では、個人再生は申し立てても返済計画を立てようがありません。
仮定の収入をのせても認可されません。
もちろん、あなたが『今後、父に対して毎月○○円の援助をします』という念書を書いて、実際にそれを実行するという手も考えられます。
ただ、全額援助というのは、さすがに、裁判所も、返済の見込みがあるという判断に至らない可能性が高いです。
そもそも、書面決議で否決されて、認可するしないの段階に至らないのではないかという気も致します。
それとも、お父様がどこかに勤め始めて、継続的な年収を得られるということになれば、個人再生も可能でしょう。
以上が、≪不動産売却→債務(借金)整理≫の流れです。
いきなり個人再生を申し立てる方法
≪個人再生≫
個人再生を申し立てる場合のポイントは2つ。
1つは、住宅資金特別条項を利用する場合には、住宅部分の面積が店舗部分の面積より広いことが必要です。
1つは、先ほども触れましたが、お店の経営を黒字化しないといけません。
不動産と住宅ローンの残債務の差額によっては、返済額が大きくなるかもしれません。
具体的に言うと、例えば、不動産の価値が2000万円で住宅ローンの残債務が1500万円であるとすると、その差額500万円は絶対に返済に回さなければならない最低弁済額となります。
いきなり破産を申し立てる方法
≪(自己)破産≫
自己破産の場合には、破産管財人が付きますが、その破産管財人が何から始めるかというと、それは不動産の売却処分からです。
ですので、≪不動産売却→債務(借金)整理≫で述べたのと同じことを、破産管財人が行うということになります。
ただ、破産の場合には、残債務があっても、それはすべて免責の対象となるので、極端な話、お父様が無職・無収入になっても手続きとしては進められます。
~どうでしょうか。実は、かなり複雑な事情であることがご理解いただけたでしょうか。とても、ちょちょっとアドバイスして解決できるという類の問題ではありません。弁護を頼んできちんとやった方がいいと思いますが、その際のアドバイスというかポイントをお話ししますと、もう、いきなり「(自己)破産しかない。あとは裁判所(破産管財人)に委ねるしかない」としか言わない弁護士さんならやめた方がいいでしょう。一応、一通りの手段を検討したうえでの破産なら仕方ないですが、そうでないならあまりやる気はないということでしょう。以上が弁護士(仙台、宮城)からのアドバイスになります~