~憧れの職業の花形であるお医者さんでも、経営が上手くいっていないところはあります。ただ、おかしなコンサルとかが入ってきて事態が悪化するケースもあるようで、しかも、コンサルは「弁護士なんかに相談しても破産させられるだけだぞ」とか常套句のように言っているようで、非常に腹立たしい限りですが、そんなことはないんですよ、というお話を弁護士(仙台、宮城)からさせていただきます~
【ご相談内容】クリニック(開業医)の個人再生について
大変、お恥ずかしい話ですが、私は開業医を営んでおります。
医療法人ではなく、個人事業主です。
以前は、近くに大きな工場があり、それに付随して、社宅等もありましたから、患者が途絶えるということはなかったのですが、その工場が海外に移転になってしまい、閉鎖になってから、患者数は減る一方です。
しかも、人件費は、勤続年数に応じてスライドで昇給させてきたので、支出は増える一方で、ずっと、苦しい経営が続いております。
一度、医療経営コンサルタントに依頼して、業務改善というのをやったのですが、それは、診療報酬をファクタリングと言って、要は、安く債権譲渡してしまうというもので、現金化が早くなっただけで、トータルでは余計、収益が悪くなってしまいました。
税理士からは、
「こんなやり方はとんでもない」、
と怒られてしまいましたが、かと言って、リース料やクリニック建設のローン等支払いは、毎月容赦なくやってくるので、この自転車操業のスパイラルから抜け出せません。
ただ、このまま、債務を増やし続けるといつか、Xデーが来るというのも分かっており、正直、診療にも身が入らないことも多いのです。
それもまた、ストレスとなってしまっており、正直、逃げ出したいというのが本心です。
妻も何も分かっておらず(私がはっきりと言っていないので当然ですが)、相談するところがありません。
また、弁護士に相談してしまうと、破産させられるということも聞いており、それまた怖いです。
正直、何をどう相談すればいいのかさえ分からないのです。
こんな危機的状況に対して、私としては、どうすればよいのか、道しるべというか、破産する以外にどのような選択肢があるのかについて、アドバイスが欲しいです。
苦しいです。
ただ、もう、売り上げは伸びないと思います。
1千万近くかけて、先ほどのコンサルに頼んで、ホームページの作り替え、インターネット広告、その他の看板広告、バス広告、いろいろやりましたが、全部、効果がありませんでした。
【ご回答】
債務整理は、クリニックを継続できるかを考えるのが最初に必要
苦しいですね。
しかも、診療にも身が入らないとはなんともお気の毒です。
ですが、売り上げゼロ、というわけではないのですよね?
ただ、どうなんでしょうか、例えば、その開業している地域が、その工場がなくなってしまったことにより、過疎的な状況になっているとかですと、確かに、人がいなければ医者という職業の性質上、経営を成り立たせていくのは難しいかもしれません(インターネットで何かサービスを提供できるとかいうものではないでしょうから)。
そういうことですと、「閉院」ないしは「移転」ということを考えないといけないかもしれません。
それとも、設備投資の程度も分からないですが、規模を縮小できるのであれば、要するに、リストラできるのであれば、生き延びられる状況でしょうか?
そういうやれることはやるという前提のもと、クリニックの債務整理について考える必要があります。
弁護士はすぐ「破産しろ」と言うのは本当か?
弁護士に頼んだら破産させられるという話はよく聞きますが、もちろん、勝手に破産などさせることはできません。
ただ、おっしゃっているのは、
「破産しかない!」
「破産して早く楽になったら?」
と強く勧められるのが怖いということかもしれません。
そういう弁護士もいるにはいるかもしれないです。
そして、破産を強く勧める理由が、
・本当にあらゆる手立てを講じても再生できる見込みがないからなのか、
・その弁護士が再生があまり得意でないため自信がないからなのか、
・再生は手間のかかり方が破産の数倍だからなのか、
は、通常は依頼者の方には見極めがつきません。
ただ、最初に相談した弁護士が、
「破産しかない」
と言っても、そこで断念する必要はありません。
大変だとは思いますが、重要な局面ですので、いくつかの事務所を回られることをお勧めします。
通常は、まずはリスケを考える
今の現状の債務の額等にもよりますが、通常は、まずは、リスケで当面のキャッシュフローを楽にすることが最優先でしょう。
ファクタリングについては、割引率がどの程度の業者なのか分かりませんが、おっしゃる通りで、早く現金化するために、本来もらえるはずの診療報酬を目減りさせているのはなんとも経済的に不合理な話です。
これは、本当に火事場の応急処置と考えるべきです。
支払い期間の見直し、月々の返済額の減額、元本猶予等のリスケを金融機関と話し合う必要があります。
そのコンサルさんは、そちらについては実行されたのでしょうか?
次に、重要なのはスポンサー探し
それと同時に考えなければいけないのは、スポンサー探しです。
逃げ出す覚悟(?)があるというのであれば、医療法人で、売りに出ているクリニックがあれば購入を検討したいというところは、潜在的にいくつもありますので、そちらに相談してみることも必要です。
最終的に条件が折り合わなければ、もちろん売らなくてもいいわけですし、また、個人再生(民事再生)の申し立て等の法的な倒産処理をすることを条件として提示してくることも少なくありません。
理由は簡単で、過大な債務の引き受けをせずに、要は、安く買いたいからです。
ただ、このままいけば、破産必死で、ぐちゃぐちゃになってしまうよりかは少しはましだと思える場合もあるかもしれません。
個人再生か、通常再生か
個人事業としておやりになられているということで、負債総額が5000万円以下であれば、個人再生で行けるかもしれません。
それにしても、事前に金融機関との話し合いは必要ですし、形式上も、個別の協議でやろうと思ったけど、それがうまくいかないので、法的な倒産処理に移行したと言えるようにしておきたいところです。
そして、何より、事前協議なしで個人再生(民事再生)を申し立てたとしても、別除権の問題や再生計画の決議の関係で、うまくいくはずがありません。
破産したから人生が終わりというわけではない
ただ、自己破産をして、現在は、雇われ院長をやっておられる先生もおります。
たまに、近況をうかがうと、
「理事長がうるさくて大変だ」とか、
「年棒があがらない」
などと不満も言われます。
(以前は、ご自身が「人件費が高すぎる」とこぼされていたのに。。)
そして、
「じゃあ、もう一度、自分でやってみるつもりはありますか?」
と聞くと、
「もう、あの(経営に頭を悩ませる)生活には戻りたくない」
そうです。
~今は、誰にも相談できない状況で、頭の中で、いろんなことがグルグルしていることでしょうが、一度、ご相談なされることを強くお勧めします。
いろんなパターンがあります。
たとえ弁護士を依頼したからと言って、任せっぱなしというわけにもいきませんが、1人でなんでも引き受けるというわけにもいきません。
弁護士の相談も別にいろいろ気の合う弁護士が見つかるまでやってもいいのです。自己破産しか勧められなくても、「ああ、そういう弁護士なんだ」と思えばよいだけです。
勇気を出して、一歩を踏み出してください、というのが今回の弁護士(仙台、宮城)からのアドバイスとなります。過去にそういう院長もいらっしゃいましたが、失踪とかしては駄目です~