個人再生しようとしたら自動車ローンがネックに!所有権留保って何?

~基本的に、今、手元にある資産・財産を残しておきつつ、債務の整理をすることができるというのが個人再生の一つのメリットですが、それが通用しないのが、所有権留保のついた車のローンを抱えている場合です。


ですが、そもそも、所有権留保という言葉を知らない人や、それがついていてもどのような意味があるのか、正しいのか、などを何も考えずに、車を返してください、と言われたら、ホイホイ応じてしまう人がいます。


返済できていないという引け目・負い目があるから仕方ないのかもしれませんが、通るものとそうでないものもありますし、あとで、個人再生の手続きを進める際に、「なんでそんなことしたの?」と言われるかもしれません。
ですので、この問題について、弁護士(仙台・宮城)からご説明をしたいと思います~

【ご相談内容】個人再生と自動車ローンについて

介護関係の仕事をしておりますが、自営でなく勤めです。

すいません。パチスロで借金を作ってしまったのと、ブランド品での換金行為をやってしまいました。

分かってます。

どこに相談に行っても、私は免責で引っかかるので、自己破産はできないと言われています。

そうなんですよね?

ですので、個人再生を申し立てるということで腹は決まっています。

債権カットさえしてもらえれば残りはなんとしても返します。

ただ、仕事場が車がないと通えないところにあるので、車がなくなると本当にお手上げなんです。

仙台市内ならともかく、私が住んでいる地域は、一人一台が当たり前で車がなければ生活できません。

年寄りの病院の送迎だってあります。

車はローンで買っているので、引き揚げられるかもって言うのも、どこに相談に行っても言われていますが、

これだけはなんとかならないでしょうか?

贅沢車でも、高級車でもありません。平成25年に購入した中古のワンボックスです。

【ご回答】

車のローンを滞納しても引きあげられるとは限らない

東京などの首都圏や仙台の地下鉄の便がよいところならともかく、そうでないと車は生活必需品ですよね。

ですが、そういう話とは別に、車にローンで組んである場合には、引きあげられてしまう場合があります。

ただし、ローンを組んでいる=必ず引きあげられる、というものでもないのでご注意ください。

そもそも、世の中いろいろ分割払い、やローンで購入するものってありますが、引きあげられるっていうものは、そうそうないですよね。

所有権留保とは

車が引き上げられるその根拠は、「所有権留保」という売買当事者間の特約によるのです。

通常は、売買で物を買ってしまえば、例えば、分割払いであっても、所有権自体は買主に移ります。

住宅だってそうです。

住宅ローンで家を買っていたとしても、所有権は買った側にあります。

ですので、その家を売ろうが、貸そうが、リフォームしようが、その買主が自由にできます。

お金を貸した銀行はただ、家を担保にとっている(抵当権を設定している)に過ぎません。

自動車抵当法

そして、実は、自動車の場合にも、お金を貸した方は、その自動車に抵当をつけることができます。

そのことを定めてある法律が、「自動車抵当法」です。

これは、車の場合と同じで、借主が所有する自動車に抵当権を設定し、自動車は借主に継続利用をさせる制度です。

抵当権設定契約を締結し、陸運局で自動車登録ファイルにその旨を登録します。

軽自動車には使えません。

この場合、車の所有権は買主(お金の借主)にあります。

自動車抵当の効果

ですので、不動産の抵当権と同じように、買主(借主)が返済を滞らせた場合には、担保の自動車を換金処分して残債務の返済にあてるだけで、「自分に車を引き渡せ」とは言えません。

ところが、この自動車抵当は、不動産のような高額商品ならともかく、車体価格に比して、抵当権の登録ないしは換金処分の手間費用が見合わないとされており、ほとんど使われていないのが実情です。

ただ、それはディーラーないしローン(信販)会社の事情です。

そこで、貸した(立て替えた)お金の簡易な担保の方法として、所有権留保が使われているのです。

所有権留保とは、自動車のローンを組む場合に、その所有権をローン会社に残しておいて、ローン返済が滞った場合には、ローン会社が車を引き上げることにより債務(債権)の回収をするものです。

ですので、所有権留保がついている間は、車検証を見ていただければわかると思いますが、買主とはいえ、単なる使用者でしかないのです。

個人再生と自動車ローンの関係

個人再生との関係でいいますと、個人再生を申し立てると住宅ローン以外は、債権者平等の原則により、弁済禁止になるので、たとえ自動車であってもローンの返済は禁止されます。

ローン返済をしないとどうなるかと言いますと、それはローン会社から見ると、ローン遅滞になりますので、ローン契約解除→自動車引きあげに入ることになります。

「払いたくても返済が禁止されているから払えないんだ」と言っても駄目です。

ただし、本当に早合点しないでもらいたいのですが、銀行などの金融機関のマイカーローンの場合には、単に、「自動車を買うためのお金」を貸しただけであり、所有権留保になっていないことがありますので、なんでもかんでも言われたからと、ハイハイと従わないでください。

所有権留保と所有者名義

さらには、所有権留保の場合であっても、所有者欄の名義には注意してください。

そこが、実際にお金を出しているローン会社の名義であれば、問題はないのですが、販売会社であるディーラーである場合には、所有権留保に基づく引きあげを認めなかったという最高裁判例もありますので、もうここまで来たら弁護士に引きあげ要請に応じるべきか否か相談してください(所有者欄がディーラーのままでも引きあげを認める最高裁判例もあり、判断が難しいです。

実は、ちょうど、ディーラーと返す返さないの話をしている際に、ディーラーの担当者が「あの裁判はおかしいんで、今、うちの弁護士があっちこっちで争っていて、あの裁判をひっくり返そうとしているんです」と言っていましたが、嘘だろうとか言っている最中に、この認める方の判例が出たのです。

ですが、そもそも、その2つの最高裁判例は扱う範囲が違うという見方もあります。

ちなみに、その時は、返さないまま、破産管財人に引き継ぎましたが、破産管財人は返却しなかったようです。)

それで話を個人再生に戻しますが、結局、名義もローン会社であったという場合には、車を引きあげられることになるのですが、車がなくなることにより生活できなければ話にならないので、いくつかの方法があります。

ローン完済と清算価値増額

一つは、ローンを完済してしまう方法です。

弁済禁止に反しますので駄目なんですが、その分、清算価値を増やします。

つまり、清算価値というのは、個人再生でしなければならない最低の弁済額なのですが、弁済してしまった分、その最低限の基準を引き上げるのです。

これは、完済する資金があればできますが、なければできません。

別除権の協定

次に考えられる方法としては、別除権の協定を行うというものがあります。

別除権協定とは、ローン会社との間で今後もローンを支払っていくのでその代わりに車を引き上げないという合意ないし協定です。

ただ問題は、裁判所の許可です。

ローン会社だけにローンを支払うのは個人再生の債権者平等の原則に反するので、別除権協定を締結するには裁判所の許可が要ります。

ご相談の事例の場合に裁判所の許可が出るかどうかというと微妙な気がします。

管轄の裁判所にもよりますが、教科書通りの事例(例えば、個人タクシーの場合のように、ダイレクトに車が商売道具とか)でないと全く認めないという裁判官もいます。

~以上のような感じですが、別除権協定はハードルが高いというか不確実な部分が多いので、可能であれば、やはり、ご親族などのご協力を得たりして、ローン完済で有無を言わさず所有権留保を終了させてしまうのが、確実ではあります。

その場合には、ご親族が支払ったわけですから、偏波弁済にはならず、清算価値(最低弁済額)の増加ということになりません。

もちろん、連帯保証人でもないとすると、今度は、ローン会社がその弁済を受領するのかという問題もありますので、やはり、弁護士に相談してください。こんなところで、弁護士(仙台・宮城)からのご説明を終わらせていただきます~