自己破産とは

自己破産とは、債務者が借金等の返済が不能になった場合に、債務者が持っている財産を放棄する一方で、返済義務を全額を免除する裁判所の許可(免責許可)を得る手続きを言います。

従って、自己破産は、

①財産の調査・処分

②免責の調査・許可

とからなる手続きであると言えます。

自己破産と手持ち財産

自己破産手続きが開始された時点で、所定の基準以上の財産があるか、財産があるかもしれないので調査が必要とされる場合には、破産管財人が裁判所により、つけられます。

これを「管財事件」といいます。

破産管財人は、申立人の財産状況を調査します。

そして、調査したけど財産がなければ、財産に関してはそれで終了です。

他方で、財産がある場合には、売却できるものは売却し、回収できるものは回収して現金化します。

ただし、すべての財産が売却されたりするわけではありません。

・残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金

・現金99万円

・解約返戻金20万円以下(複数の場合、その合計額)の保険

・売却金20万円以下(複数の場合、その合計額)の車

・家財道具

こういうものは手元に残しておけます。

よく、「布団とかテレビとか大丈夫ですか?」と聞かれることがありますが、

日常生活に使っているものが売却されてしまうということはまずありません。

何か商売でもしている場合でない限り、売却されるケースで多いのは、不動産(家・土地)と車です。

解約返戻金が20万円を超える保険(生命保険・損害保険)も解約されるケースとして多いです。

そして、売却したりで現金化された後、そのお金は、破産管財人が報酬として受け取るか、

破産管財人が報酬としてもらっても、なお、余剰がある場合には債権者に支払われます。

手持ち財産がない場合の自己破産手続き

手元財産がなく、破産管財人が調査をいれるまでもないという場合には、破産管財人はつけられません。

※ ただし、現金が33万円以上ある場合には、なぜか機械的に破産管財人がつけられます。

 その場合、破産管財人は何もすることがありません。

 何もすることがないですが、破産管財人報酬は支払う必要があります。

ただし、財産的な調査等は不必要であるものの、免責の観点で問題がありそうな場合にはやはり破産管財人がつけられれます。

破産管財人による免責調査

破産手続きには、免責不許可事由というものが定められており、具体的にはつぎのようなものがあります。

「浪費」
自らの収入に照らして、不相応な高額のショッピングや飲食、遊興(ゲーム課金・旅行等)

「賭博(ギャンブル)」
パチンコ・パチスロ・競馬・競艇・競輪・宝くじ

「射幸行為」
株投資・FX・仮想通貨取引・先物取引

「換金行為」
クレジットカードで購入した商品を換金(ショッピング枠の現金化)

「偏頗弁済」
特定の債権者に対してだけ返済

以上のような行為は、「免責不許可」と言って、裁判所が免責を許可しないのです。

しかしながら、

たった数回、競馬をやってしまった、

ちょっと一時期、ショッピングにはまってしまった、

うまいこと言われてFXに手を出してしまった、

等々の理由から、これで免責を許可しないのは気の毒だ、という場合もあります。

さらには、かなりガッツリとパチスロをやってしまったものの、

ハッと目が覚めて今は反省している、

現在は収支のとれた生活を送れている、

ギャンブルですってしまった金額の一部を積み立てる、

等の行為により、免責を例外的に認めていいという場合もあります。

このような一切の事情を総合的に考慮して例外的に免責することを「裁量免責」といいます。

裁判官の「裁量」により「免責」をするので、「裁量免責」というのです。

裁判官の免責があっても支払い義務が残る債権

・税金(住民税、固定資産税、自動車税等)、国民健康保険料、国民年金等

・悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

・養育費、婚姻費用

・従業員の給与(個人事業主の場合)

以上のような、債権については、せっかく、破産手続きを申立てて、しかも、裁判所の免責許可を受けても、支払わなければならないのです。

自己破産のデメリット

(1)信用情報機関に自己破産をしたことが登録される。

そのため、クレジットカードが使えなくなる、更新できなくなる、新規に作成できなくなる、ローンが組めない、という期間が5年間(住宅ローン及び銀行系ローンの場合には10年間)続きます。

(2)職業制限

警備員や保険の外交員は、自己破産を申請するとその資格を一旦、失うことになります。

会社の取締役の場合には、自己破産申請により、一旦、取締役は解除されます。

逆に言えば、そういう職業についていない場合には、例えば、公務員であっても、それを理由に職を失うことはありません。

そもそもが、会社に自己破産をしたことを知られるということはないのですが、会社は従業員が自己破産をしたこと自体を理由に解雇することはできません。

ただ、会社から、あるいは、会社の組合から借り入れをしている等の場合には、当然知られてしまいますし、他方でその返済をすることもできませんので、結局、その借金は免責になり、かなり気まずいことになる可能性はあります。

(3)財産が換金(換価・売却)処分される

自己破産においては、財産が換金(換価・売却)処分される件についてはすでに述べた通りです。

(4)偏頗弁済取り戻し

どうしても大事な知り合いだから、絶対に不義理ができない先輩だから、生活に困っている親族だから、と特定の債権者に対してだけ返済することは偏頗(へんぱ)弁済と言って、免責不許可事由になることは述べた通りですが、それなのに支払ってしまった場合には、破産管財人がその人に対して返金を求めます。

破産管財人からの返金要求に対して、きちんと返金する、ないしは返金できるならいいですけど、もうお金を使ってしまって返金できない、と言う場合には、破産管財人から訴訟が起こされることもあります。

(5)保証人への請求

借入に際して、親族や友人、その他の方に保証人になってもらっている場合には、自己破産をすると、まもなく保証人に対して、代わりに支払うようにとの請求が行きます。

もともと、本来払うべき人が払えなくなったときのための保証人なので、当然といえば当然なのですが、保証人がきちんと返済する、ないしは返済できるならいいですけど、返済できない、と言う場合には、債権者から訴訟が起こされることもあります。

場合によっては、その保証人も自己破産しなければならなくなるかもしれません。

自己破産に適している方(まとめ)

(1)失って困る財産がない

財産があっても、それを失っても致命的でない、または、財産がもともとなければ、

管財人を付けられて調査されたり、財産を売却されても困りません。

(2)免責不許可事由がない

免責不許可事由がなければ、管財人をつけられて調査されることもないし、

破産を申し立てたのに免責されないで、時間・労力・費用を無駄にした、ということもありません。

(3)偏頗弁済ないし保証人がいない

偏頗弁済も保証人もいなければ、自分が破産を申し立てたことにより迷惑をかけることもありません。

(4)職業制限にひっかからず、会社からの借り入れもない

職業制限にひっかかることもなく、会社からの借り入れもなければ、自己破産をしたとしても、今の勤務を継続できます。

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