任意整理とは

任意整理とは、債務者が借金等の返済が困難になった場合に、金融機関等の債権者と個別に交渉の上で、現在の債務の支払い条件を見直すことを言います。

具体的には、なるべく返済期間を延ばしたうえで、月々の返済額を少なくして支払い負担を減らしたり、一括で支払う代わりに利息や遅延損害金あるいは元本を減額すること等を内容とする和解をすることが多いです。

ただし、返済期間を伸ばすとは言っても、10年等の長期の返済を債権者が承諾することは少なく、7年程度が限界であるのが通常です。

さらには、任意整理と言うのはあくまでも債権者との和解ですので、債権者の側に和解に応じる義務はなく、債権者が和解を承諾しない場合には、自己破産や個人再生などの裁判手続きと異なり、債権者側に強制することはできません。

なお、元本を減額することについては、なかなか債権者が承諾しません。

任意整理において元本が減ることがある理由

「そうは言っても、インターネットで『任意整理をしたらこんなに借金が減りました!』って見ましたけど」

って言う方が結構いるかもしれません。

それは、債権者が好意で債務元本を減らしてくれたのではなく、数年の取引の結果『過払い』が発生していたのです。

そうです。あのテレビやラジオでも宣伝している「過払い金」のことです。

2010年により、法律の改正があり、それにより、貸金業者は、利息制限法の範囲(20%まで)を超える高金利は取っていけないことになりましたが、それまでは払う方が文句を言わないで払うのであれば取って構わないというグレーな内容になっておりました。

そういうことで、2010年以前から、クレジットカードのキャッシングや消費者金融を利用されていた方は、高金利を支払っている可能性があります。

そこで、その高金利分を払い過ぎであるとして計算すると、今ある借金の額から随分と減るケースがあります。

これが、任意整理で元本が減る最大の理由です。

そして、あまりに高金利を支払っていた期間が長いと、元本が減るだけでなく、むしろ払い過ぎだったということになり、これが「過払い金」になるわけです。

任意整理と手持ち財産

自己破産と異なり、任意整理においては、手持ち財産を処分することはありません。

ただし、任意整理手続きにおいては、債権者側も何も拘束されるわけではないので、どんどん、裁判手続きを進めたり、強制執行をすることも債権者の自由と言えば自由です。

ですので、ぐずぐずしていると、家を差し押さえたり、預金を差し押さえたり、車を差し押さえたり、給与を差し押さえたり、と財産を差し押さえられる恐れは、あります。

また、金融業者も、和解の話合い(交渉)をするに際して、勤務先や財産状況・債務の状況等を詳しく問い合わせてくるところがありますが、それによって、財産状況や勤務先情報をつかんで、強制執行をすることも可能となります。

他方で、自己破産・個人再生は、債権者に対して、「強制執行の禁止」をする拘束力がありますので、手続きをしている間に、家や給与が差し押さえられる等の危険はありません。

ただし、任意整理として、誠実に交渉している間に、裏でこっそり強制執行の準備をして、不意打ちでしかけてくるという金融業者はそうはいません。

ただ交渉がまとまらず破談になった場合に備えて話合いは慎重にしなければなりません。

住宅ローン・自動車ローンその他の債務

住宅ローンや自動車ローンも任意整理の対象になることはなるのですが、そもそも、これらの場合には、家や自動車を担保に取られていることが多いので、交渉がもつれると、債権者は、家を競売にかけたり、自動車を引きあげたりしてしまいます。

そうなってから、

「やはり交渉はしないので元に戻してください」

と言っても元には戻せないので、こういう債権者については、交渉せず、そのまま支払いを続けておきながら、

他の債務だけを任意整理の対象とするということも可能です。

どの債務(債権者)を任意整理の対象として、どの債務(債権者)を任意整理としないとするかも自由です。

この柔軟性が任意整理の特徴です。

任意整理と第三者の関与

自己破産の場合に破産管財人が就いたり、個人再生の場合に再生委員が就いたりするのとは異なり、任意整理では第三者は関与しません。

債権者と債務者の個別の交渉だけです。

また、自己破産の場合と異なり、裁判ではないので、免責不許可事由というものもありません。

さらには、様々な書類を提出しなければならないということもありません。

任意整理のデメリット

(1)債務支払いが必要・大して支払額が減らない

自己破産であれば、税金、養育費等を除けば、債務額は免責されてゼロになりますし、

個人再生であっても、最大で90%債権カットされます。

任意整理は、過払いがなければ、債務が交渉により多少は減るかもしれませんが、ほとんど減らないです。

(2)ブラックリスト・官報掲載の問題

自己破産や個人再生をしなければ、ブラックリストに載らないで済むなどと言われていますが、そんなことはありません。

約定の返済ができなくなったのですから、任意整理をしたところで、信用情報機関においては、支払事故扱いです。

ただし、「官報」という国の広報誌のようなものには掲載されません。

ですので、何か理由があってどうしても「官報に掲載されるとまずい」という方は自己破産・個人再生はできませんが、そういう方はあまりいないと思われます。

(3)保証人への請求

任意整理の場合であっても、借入等に保証人がいる場合には、やはり、保証人に対しても請求がいきます。

約束した返済ができなくなったときのための保証人なので、任意整理であっても、支払いが遅れている以上は請求されてしまうのです。

ですので、保証人がついている債務は手を付けないでおくか、連帯保証人に請求がいかないようにかなり債権者に譲歩した内容で和解するしかないです。

任意整理に適している方(まとめ)

(1)支払い余力がある

債務がさほど減らない中で返済を続けていかなければなりませんので、給与ないしは自営であっても、支払い余力がないと任意整理は行えませんし、それがあれば任意整理は可能です。

(2)失って困る財産がある

住宅とか、車とか、保険とか、それを手放さずに任意整理は行えます。

(3)免責不許可事由がある

免責不許可事由があって免責許可を得るのが厳しいと予測される場合には自己破産はできないので個人再生か任意整理を選択するしかありません。

(4)保証人に請求が行くと困る

任意整理の場合には、どの債務を任意整理の対象にするかどうかは、自分で選択して決められます。

ですので、保証人がついている債務は任意整理の対象とせずに約定通り支払っておけば、保証人に請求がいくことはありません。

(5)偏頗弁済・職業制限

任意整理の場合には職業制限もありませんし、偏頗(へんぱ)弁済があるかどうかも問題となりません。

つまり、特定の債権者に対してだけ返済することを偏頗(へんぱ)弁済と言って、自己破産や個人再生の場合には債権者平等違反として問題とされますが、任意整理の場合にはあくまで個別交渉の結果として債権者平等になっていない場合があっても問題とはされないのです。

【参考】こちらもご確認ください

個人再生に適している方

自己破産に適している方

借金の督促を放置するとどうなるか?