1 債務整理をすると今、持っているクレジットカードはどうなる?
債務整理をするということは、任意整理、個人再生、自己破産をするということですから、債権者に対して通常の返済、つまり、当初の約定(やくじょう)通りの返済をすることが出来なくなるということです。
従いまして、そのような状態を支払い事故と言いまして、各クレジットカード会社はそのような支払い事故があったことを信用情報機関に登録します。
信用情報機関というのは、クレジットカード会社、信販会社、消費者金融等が加盟している団体で、その中で、どこの誰がどのような支払い事故を起こしたのかを回しあっているのです。
ただし、よく考えていただきたいのですが、例えば、今、手元に「仙台クレジットカード」(※仮名)というカードがあったとして、仙台クレジットカードの支払いを怠ればそれは仙台クレジットカードが自社で、その人がどういう支払い事故を起こしたのかを登録します。
ただし、登録されたからと言って、
「速報!:仙台市青葉区在住の青葉太郎が仙台クレジットカードの支払い事故を起こした!」
とその信用情報機関の加盟店に通知が行くわけではありません。
各カード会社が自分でその信用情報機関に照会をしなけばなりません。
ですが、もし、その青葉太郎さんがもう一つのあまり使っていないクレジットカード「宮城クレジットカード」(※仮名)を持っているとして、その「宮城クレジットカード」株式会社は、毎日、毎日、青葉太郎さんの信用情報を照会すると思いますか?
そんなことはまずありません。
ですので、別のクレジットカード会社が信用情報機関に信用情報を照会しに行くまでのタイムラグがあり、逆に言えばそれまでは自由につかえるという事になります。
そして、どのようなときに信用情報機関に信用情報を照会するかというと、各クレジットカード会社によって様々で、当然ながら、その内容は公表されておりません。
定期的に照会をかけるパターン、
クレジットカードの更新のときに照会をかけるパターン、
自社のクレジットカードの支払いがなされている限り照会をかけないパターン、
等々、様々です。
ですので、本当に、例えば、自己破産の手続きをしており、その破産管財人の手元に更新後のクレジットカードが届られるなんていうこともあるのです。
※自己破産手続き中は、その事件が破産管財事件の場合、郵便物は一旦、破産管財人に郵便物が転送されます。
しかも、破産管財人も別にクレジットカードが届いた以上は本人に渡さないということはしませんので、実際に、破産管財人が、
「○○さん、三〇住〇の新しいカードが来ていましたよ。」
なんて、渡すこともあるのです。
「債務整理をすると、即、クレジットカードが使えなくなります」
「債務整理の情報がクレジットカード会社に通知されて利用停止になります」
「債務整理をしたことにより当然、クレジットカードは失効します」
なんて説明している弁護士や司法書士もいるとご相談者から聞いたりしますが、そんなことはあり得ないのです。
2 債務整理をしているのにクレジットカードを使うとどうなる?
ただし、勘違いしないでいただきたいのは、
「債務整理してもクレジットカードが使えるならぜひ使ってください!」
と言っているわけではないのです。
特に、自己破産や個人再生の場合には、債務整理をすると言っても、債権者に何も事前に通知しないまま、いきなり自己破産や個人再生を申し立てるわけではないのです。
通常の流れとしては、まずは、各債権者に、
「支払い(返済)が困難なので、これから債務の整理に着手します」
「つきましては、お宅らの債権者さんの債権の額をお知らせください」
とこういう感じの通知を出すのです。
「これを「受任通知」あるいは「介入通知」といいます。」
そして、自己破産や個人再生申立ての費用を積み立てつつ、申し立てに必要な書類や情報を集めて準備します。
つまり、受任通知(介入通知)から自己破産(個人再生)申し立てまでの間に時間があります。
すると、その間に、クレジットカードを使ってしまったとすると、債権者から見れば、お金を借りて(物を買って)、即座に「破産」した、とか、「再生した」、とかいう事を聞くことになるので、
「こんなのは取り込み詐欺だ!」
とか、
「借りて(買って)、すぐに破産なんてズルい!」
とか、
「こんな人に免責なんかおろすな!」
とか、
債権者が騒ぐわけです。
もともと、破産とか再生とかでは債権者は、いろいろ言ってくるものなのですが、特に、気を付けるのは自己破産の場合です。
債務整理(自己破産)に着手しているっていうことは、要するに、自らが支払い不能であると理解しながらも、借金を作っているという事ですので、これは免責不許可事由にあたるのではないか?との疑念を招きます。
免責不許可事由というのは、(自己)破産手続きにおいて何も問題がなければ通常は借金の支払い義務が免除されて、それ以降は借金を支払わなくてもよくなるのですが、免責不許可事由と言って、
ギャンブル
浪費
FXや先物
換金行為(ショッピング枠で買ったものを即、転売する行為)
等々の行為がある場合には、せっかく自己破産を申し立てたとしても免責しないとされているのです。
この免責不許可事由は破産法に規定されているのですが、その一つに、
”破産の申立てがあった日の1年前から破産手続開始の決定があった日までの間に,
破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら,
当該事実がないと信じさせるため,詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと”
というのが、免責不許可事由の1つになっています。
ただし、単にクレジットカードを使ってキャッシングをしたり、ショッピングをしたりすることは、別に、「詐術を用いて」いるわけではないので、免責不許可事由に該当するとはいえません。