1 自己破産における予納金とは

自己破産を申し立てようとする場合には、裁判所に納めなければならないお金があります。

・官報公告費用(「官報」という国の広報紙のようなものに掲載する費用)

 【同時廃止(同廃)事件の場合】

 →1万1644円

  
 【管財事件の場合】

 →1万5217円

※「同時廃止」事件というのは、破産管財人が就任しない破産事件になります。

ちなみに、「廃止」というのは、終了という事です。

破産を申し立てたものの、一見して、処分すべき財産がなく、かつ、免責についても調査する必要がないため、破産管財人をつけて何かをする必要がないという場合には、破産手続きとしては終了(廃止)となるのです。

この官報公告費用についても、「予納金」と呼ばれることがあります。

そもそも、予納というのは、予め納めるということですから、とにかく、先んじて納めるものはみな予納金です。

・破産管財人費用(破産管財人の報酬)

ですが、問題になるのは、この1万数千円の予納金ではなく、破産管財人の報酬です。

2 破産管財人の報酬(破産管財予納金)の額

仙台地裁(仙台地方裁判所)の場合、破産管財人の報酬も「予納金」として必要になりますが、その金額は3種類あります。

【免責調査型の場合】

→10万円(※弁護士が代理人についている場合)

この免責調査型というのは、破産管財人が調査・処分等する財産はないのですが、破産の申立人が、ギャンブル・浪費・換金行為等を行ったと思われる場合に、この人を免責するのが相当・適当であるのか、という調査をする事件の種類です。  

【財産調査・換価型の場合】

→20万円(※弁護士が代理人についている場合)

この財産調査・換価型というのは、破産管財人が財産を調査したり、財産を売却したり、回収したりする必要がある場合に、実際に破産管財人にそのような作業を行わせる事件の種類です。

例えば、家等の不動産や車がある場合にその不動産・車を売却したり、生命保険を解約して解約返戻金を回収したり、破産を申し立てた人が誰かにお金を貸している場合に、本人に代わってそのお金を回収したりします。

なお、この場合には、家や車の売却代金、保険解約返戻金、貸金回収金等、破産管財人がお金を手に入れることがありますが、そのお金は、破産を申したてた本人には返ってきません。

すべて、破産管財人の報酬になるか、債権者への配当に充てられます。

【通常管財の場合】

→30万円

弁護士が代理人についていない場合、例えば、破産申立人本人が手続きを行うとか、あるいは、司法書士に破産書類作成を依頼した場合には、弁護士が事前に代理人として行う場合に比べて、破産管財人の手間・負担が増えるということから、この場合には、予納金は高めに設定されております。

3 自己破産に必要な予納金のまとめ

以上、まとめますと、

1) 官報公告費用予納金は、同時廃止(1万1644円)か、破産管財(1万5217円)かによって異なるが、さほど大きくは違わない。

2) 破産管財予納金は、自分で破産手続きを行ったり、司法書士に依頼した場合には30万円がかかり、弁護士を代理人につけた場合で、財産の処分が必要な場合には20万円がかかり、免責の調査だけの場合には10万円がかかる。

ということですので、

「仙台で自己破産をするのに予納金が安い(少なく済む)事務所」

の答えとしては、

まずは、弁護士事務所に依頼するのは前提として、申し立て以前に、その代理人がキチンと財産を適正に処分してくれて、なるべく、同時廃止で済むような形が一番、予納金が安く済むということになります。

ただし、裁判所もなるべく破産管財事件にしようとしますし、あまりおかしな財産の処分の仕方だと、かえってあとで大変なことになりかねない(「何でこんなに安く車を売ったんだ!」とか破産管財人からクレームが入る等)ので、代理人に弁護士を付ける場合でも、気になることは後で問題にならないのかよく確認してください。

(とはいえ、現実問題として、依頼した弁護士がそうした方がいいと言っているのに「それはおかしいんじゃないですか?」とは言えないですよね)

弁護士の中には、自己破産を申し立てる前に、とにかく、不動産を売却して、車も引き揚げさせて、保険も解約して、何も財産がない状態にしておけば、管財事件にならずに同時廃止にしてもらえると勘違いしているような方も見受けられますが、そういうものでもありません。

重要なのは、事前に申立代理人である弁護士が財産を処分するのと、破産管財人が財産を処分するのとで、その処分方法や処分内容に差がないようにする(つまり、たとえ破産管財人がやったとしてもこのような処分になったであろうという形にする)ことです。

4 同時廃止のつもりで自己破産を申し立てたのに管財事件にされてしまった場合

ただし、それでも、

「先生が適正に処理されたのだとは思いますが、やはり、ここは破産管財人を入れて、その処分について一応、調査していただいた方が債権者の関係でも手続きが安定すると思うんですよねえ。」

などなど、いろんな言い方で管財人をつけようとしてきます。

そして、同時廃止を希望するとして自己破産を申し立てはしたものの、管財事件にされてしまうと、書記官から、

「本件は、管財事件として進めることになったので、30万円(20万円)を予納してください。」

と言われてしまうのです。

「ええ、そんな!同時廃止だと思っていたんで、そんな大金、急には用意できないよ!」

という方がほとんどでしょう。

管財人報酬の予納ができないとどうなるかというと、自己破産の申し立てが却下されてしまいます。

ですが、通常は、わざわざ却下されるのを待たないで、自主的に取り下げます。

そして、取り下げた後に、また、コツコツと管財人報酬の予納金を貯めていくしかないのです。

ベストな対応としては、管財にされる可能性もあるから、もしそうなった場合には破産管財人予納金をどうにかできるようにしておいて、同時廃止で申し立てをする、という形です。

ですので、その事件に対する予想というか見込みも大事です。