住宅ローンを返済し続けて家を守りたいですか?

「住宅ローンの支払いがきついので個人再生でローンを圧縮したいです。」

と、このようなご質問をたまに頂くのですが、個人再生でも住宅ローンは圧縮できないのです。

正確に言いますと、住宅をもう諦める(売却する)前提で、ただ、住宅を売ってしまうと、残債(残ローン)が残るので、その残ローン分について、個人再生で圧縮する、ということなら可能です。

ですが、住宅に住み続けながら、そのローンの額だけを、ただ少なくするということはできないのです。

「じゃあ、『個人再生で家を守れる』っていうのはどういうことなんだ!」

と思われるでしょうが、それは、自己破産する場合との比較で話をしているわけです。

自己破産をした場合には、住宅ローンだけを支払いながら、他の借金についてだけ免責を得て、支払い義務をなくす、ということはできません。

自己破産というのは、原則として、いまある財産は諦めるけれども、それ以上は支払えないので、支払い義務を免除してもらいたい、という手続きです。

ですが、個人再生の場合には、住宅ローン以外の他の借金については、大幅に債務を圧縮しながら、住宅ローンについては、今まで通り支払いを続けることができるために、結果として、

『個人再生で家を守れる』

っていうことになるのです。

従いまして、

「借金は他になく、ただ、住宅ローンの支払いが厳しい」

「だけど、住宅を売ったりすることはできない」

という方は、個人再生ではどうにもならないのです。

すいません。

住宅を守るためには、個人再生に住宅ローン特別条項をつけないといけない

住宅ローン特別条項とは、正式には、「住宅資金特別条項」ないしは「住宅資金貸付債権に関する特則」と言いまして、住宅ローンについてだけは、従来どおりに支払っていく(支払う許可をください)という条項です。

これをつけないと、住宅ローンを継続して支払うことができず、住宅ローン会社ないし銀行は、抵当権を実行して家を競売にかけてしまいます。

住宅ローン特別条項をつければ、(自己破産の場合と異なり)住宅を売却したりしなくてもよいですし、競売にかけられることもありません。

そして、住宅ローンが払い終われば自分の財産となります。

たしかに、住宅を手放せば、住宅ローンはなくなります。

ですが、今度は、どこかアパート、マンション、借家を借りて、家賃を支払う必要が出てきます。

引っ越し費用も、初期費用も掛かります。

それなら、住宅ローンを支払い続けられた方がいいじゃないか、という事になりますので、このような住宅ローン特別条項は、その必要性があるのです。

住宅ローン特別条項がつけられる条件

(1)その住宅が居住用であること

居住用でもない、単なる別荘とか、投資用の物件とかは対象になりません。

あくまでも、その人の居住場所を確保して、経済的更生に役立てるというものだからです。

具体的には、その住宅の床面積の2分の1以上の部分を専ら居住の用に供している必要があります。

でも、逆に言えば、2分の1あればよいのです。

例えば、1階部分で、飲食店とか何か商売をしていたような店舗用住宅の場合には、この要件が問題となってきます。

(2)住宅に住宅ローン以外の担保がついていないこと

住宅ローン会社や銀行が担保にとっているのは当然ですが、住宅がサラ金の担保になっているような場合には、住宅ローン特別条項はつけられないのです。

それは、住宅ローン以外の債権のために担保権が実行されて住宅が失われる危険性があり、住宅資金特別条項を定めた意味がなくなってしまうからだと言われています。

(ただ、その場合であっても、もともと担保を付けているわけだから同じことではないかと思うのですが、法律上そうなってしまっています)

よく、問題になるのは、ペアローンの場合です。

ペアローンというのは、夫婦で住宅ローンを組む際に、別々に持ち分をもって、その持ち分に別々にローンを組むタイプのローンを言います。

例えば、夫と妻がそれぞれ持分を2分の1を購入し(あわせて1つの住宅)、その2分の1の持ち分に住宅ローンも2分の1を借り入れるのですが、お互いのローンについて担保を設定するのです。

夫の持ち分A(←これに妻のローンの為の担保設定)

妻の持ち分B(←これに夫のローンの為の担保設定)

ですので、夫が個人再生を申し立てしようとすると、妻のローンの為の担保も設定されているから、

「【夫の住宅ローン】以外の債務についても、担保がつけられているではないか!」

と、ちょっと難癖ではないかと思われるほど杓子定規な話ですが、そう言われるのです。

夫の住宅ローンと妻の住宅ローンは、あくまで別個だと考えられるわけですね。

そういうわけで、ペアローンの場合は、夫が単独で個人再生を申し立てても住宅ローン特別条項を利用することができず、夫と妻が同時に個人再生を申し立てた場合でないと認めない、と言われる場合があります。

ですが、夫だけが借金があって、妻は住宅ローン以外何も借金がないという場合、わざわざ、夫婦そろって個人再生を申し立てるなんて、あまりに大げさすぎるので、当事務所の場合には、一方だけ申し立てて、他方については、再生委員に対して、妻の抵当権が実行されることなど考えられない、という申し入れをしています。