宮城の弁護士による借金相談の事例からの解説
なぜFXで損失を拡大してしまう人が多いのか?
FX専業トレーダーの方は置いておくとして、FXに興味をもち、をちょっと調べてみると、
「FXで1年で1億円稼いだノウハウをあなただけに」
「泥沼からFXで月収100万円になった秘密」
「FX自動売買ソフトで毎月1000万円稼ぐ!」
等々の夢のような煽り文言・広告・宣伝があふれています。
いいですよね。
本当に、1年で1億稼げたり、月収100万円、1000万円が上がるのであれば、やらない理由はないですよね。
普通に考えても、おいしい話に見えるのに、しかも、そういうことを調べている人は前提としてすでにお金に結構、困っていたりします。
会社辞めて退職金を食いつぶしそうになっていたり、
失業保険が切れそうなのに仕事が決まらなかったり、
まとまったお金(子供の教育資金)が必要であったり、
日々の生活で車のローンのボーナス払いが迫っていたり、
と、しかも近い将来にお金が必要だったりします。
そうなると、人間は、コツコツ働いて、毎月、少しずつ貯金をしようという気持ちにはなりません。
なぜなら、毎月、2,3万円をなんとか無理して積み立てても、その金額はたかが知れているし、そもそも、それでは間に合わないという焦りも入ってくるからです。
じゃあ、どうするか?
となると、もはや、一獲千金を狙いに行くしかない、という考えに至るのです。
とはいえ、宝くじに行く人はあまりいません。
競馬とか、FXとかが多いですね。
それは、なぜか?
宝くじも、たしかに当たれば1億円なんですが、それは確実に運だけに頼るもので、自分が努力したり、工夫をする余地があまりないのに対して、競馬やFXだと、自分でコントロールできると思えるからです。
セミナーに出席して勉強したり、
秘密の教材を手に入れたり、
極秘情報を入手したり、
すごい精度の高いソフトを購入したり、
そういうことによって、自らの努力が加わり、一獲千金の確実性が増すような気にさせられるのです。
ですが、大概の方はそう簡単には稼げません。
むしろ、FXで損失が出ます。
すると、さらに焦ります。
短期間に大金を稼ごうとしてFXを始めたのに、むしろ損失がでてしまうなんて想定外です。
しかも、セミナー受講料、教材費、ソフトウェア代等々で、本人にとって、少なくない金額の「お勉強代」まで支払ってしまっています。
ですので、ますます、焦ります。
そして、さらにその損失を取り戻そうと、無茶な取引をしてしまう、ということで損失が拡大することになるのです。
実は、FXそのもので借金地獄になった人は少ない?
「FXで損失を拡大」と書きましたが、FXそのもので借金を膨らませる人は実はそう多くはないのです。
それは、「強制ロスカット」の存在によります。
「強制ロスカット」とは、FX取引上の損失が、FX口座への預託金・証拠金に枠内におさまるように、設定されたパーセンテージ以上に含み損が増えた場合に、自動的にそこで手じまいにする損切決済のことを言います。
この「強制ロスカット」働けば、最悪、預けてあるお金の枠内でしか損失は増えません。
ですので、FX会社に対する借金(追証)というのは増えない理屈です。
ただ、問題は、この後です。
「あーあ、証拠金も無くなったちゃったし、すっからかんだ」
「もう、これから当面は大人しく、仕事(探し)と貯金しなきゃ」
という澄み切った精神状態になる人は稀です。
もう頭に血が上ってしまい、さらに預託金を積んで、レバレッジを利かせて、大幅に損した分も含めて回収しようという気になります。
ところが、手元に預託金にするお金もないので、キャッシングやカードローンを使うことになります。
「再来月に支払いが来るのでそれまでに取り戻そう」
「50万借りて4倍にすれば、返済しても手残りが150万円出る」
などと頭の中は妄想で一杯になってしまいます。
そうなると危険です。
しかも、その間の生活費も結局、カードでショッピングしたり、借り入れしたりで凌ぐようになってしまいます。
健全な精神状態ではないですが、
「新しい教材(投資方法)を見つけた」
「今度のトレードのソフトは本物だ」
などと、もう2カ月後の入るはずのない儲けが勝手に計上されてしまうのです。
そして、FXの負けと借入枠の限度が来て、支払いに窮するようになって、ようやく、
「これが潮時だ」
と悟るのです。
FXによる借金は自己破産でなぜ問題になるのか?
FXでできた借金と言いますか、FX関連で増えた借金・債務の整理としては、何も自己破産のみならず、任意整理や個人再生等も理屈上はあります。
ですが、FXで究極まですってんてんになってしまっており、個人再生や任意整理をするにも支払いのための原資に事欠く人が多いのです。
もちろん、そこでスパッと足を洗って(?)、就職して月々の収入の中でコツコツ返済するという方も少なからずいらっしゃいますが、多くは、差し当たり自己破産しかない、という方が大抵です。
ただ、ご存知の方も多いかもしれませんが、自己破産の場合には、免責不許可事由という関門がありますので、そう簡単に自己破産も認められないという厳しい現実がございます。
裁判所からの免責を得るためには、反省して生活の基礎を成り立たせるのが大前提ですが、自己破産の申し立てに当たっては、専門家である弁護士にきちんと話したうえで、事前の準備が必要となってまいります。