老後破産とは
老後破産というのは、法律用語ではなく、老後に破産状態になることをいいます。
極めて、抽象的な内容でありながら、人々を恐怖に陥れる響きを持った用語ではあります。
年金が少なくなる、
退職金がでない(想定より少ない)、
定年前にリストラにあう、
貯蓄してこなかった、
病気・介護費用で出費がかさむ、
様々な理由から、老後破産状態がやってくるわけですが、この問題の難しいところは、段々働けなくなる(収入がなくなる)と同時に支出はむしろ増えるというところにあります。
老後破産状態であり負債がある
要するに、老後破産状態というのは、
支出>収入(それに代わる貯え)
という状態ですが、その場合にはどうするかというと、その支出に足りない分を何らかの形で埋めなければなりません。
なんらかの形というのは、
1)支出を減らす
2)収入を増やす
3)借金する
の3択しかありません。
「1)支出を減らす」については、贅沢はしないなどというのは基本ですが、食費、住居費、医療費、介護費等、減らすにもおのずと限界があります。
「2)収入を増やす」については、高齢者の就職が難しいというのが基本にあります。
たしかに人手不足が言われており、その不足分を女性や老人で埋めようという国の施策もあるにはありますが、老人の場合には女性よりもさらにハードルは高いです。
身体的な問題もありますし、どうしても年齢が行くにつれて反射神経が衰えていくことも否めないことから、企業もそう簡単に、老人をどんどん雇い入れるという状況には至っておりません。
身体がきつくなくて、頭もそんなに使わなくてもよい仕事などというのは、そうないのです。
そうすると、どうなるかというと、
「3)借金する」
という選択をとりがちです。
しかし、退職後で高齢であるという前提でお金を貸してくれるところというのはそうはありません。
現在の銀行ないし金融機関の対応として、支払いが不可能となることが明らかな人にはお金を貸さないのです。
利用できるとすれば、キャッシングや消費者金融になります。
リバースモーゲージローン
ただし、持ち家があるとすれば、その持ち家を担保にお金を借り入れする方法があります。
リバースモーゲージとは、自身の持ち家を抵当(担保)に入れて、その資産価値分を借り入れるローンです。
「そんなことするなら、家を売れば同じじゃないか」
と思われるかもしれませんが、家を売るとなると、住むところがなくなってしまうのと、かつ、生活環境が、がらりと変わってしまうので老人にはきつい、ということがあります。
例えば、有名なところですと、某T銀行のリバースモーゲージがあります。
【利用条件】
契約者ご本人55歳以上。
年収(年金等)が120万円以上。
一戸建てまたはマンションに原則として単身・夫婦で住んでいる。
【資金使途】
資金使途は自由とされております。
例)医療費や介護費
生活資金
住宅の建替え・改築
【融資額】
500万円以上1億円以内
※もちろん、不動産の担保価値がそれだけあれば、の話です。
【融資期間】
死ぬまで。
【返済方法】
生きている間は利息だけ払い、死んだらその不動産を差し出すか、一括返済するか、になります。
※ただし、現実的に「一括返済」は難しいでしょうから結局、売ることにはなります。
以上、要するに、資産価値のある不動産を持っていれば、それに相当する部分を先に借りて、死んでからその家を手放すという金融商品です。
資産価値がないと貸してくれません。
(実際、T銀行も大都市圏の不動産しか相手にしません。)
老人が借金を抱えて無職の場合
(1)老人の借金の圧縮(整理)方法~自己破産
例えば、家(住むところ)があっても、資産価値がなく、仕事もなく、借金があるという場合には、どういう処理をすればよいでしょうか?
借金の整理方法としては、一番、分かりやすいのは、「自己破産」です。
自己破産して免責が許可されれば、借金はなくなります。
ですが、家も無くなってしまいます。
「どこかアパートでも借りればいいじゃないか」
という人もいるでしょうが、無職の老人で年金ぐらしの方がアパートを借りるというのは相当程度にハードルが高いのです。
ですので、自己破産するとともに、その資産価値のない自宅を誰か親族に買ってもらえるのがベストです。
子供等が協力してくれるとよいのですが。
自宅どころか、車も売る必要があり、保険も解約されます。
ですので、自己破産したくない、という人が出てくるのも無理からぬことです。
(2)老人の借金の圧縮(整理)方法~個人再生
それが難しいという場合には、個人再生という方法もあります。
個人再生は、債務の大幅なカット(圧縮)を受けて、残額を分割払いで支払うという手続きです。
自己破産の場合と異なり、自宅を手放す必要がありません。
自宅どころか、車も売る必要がないですし、保険も解約する必要がありません。
・家なし
・車なし
・保険なし
というのは老人にとっては大変厳しい状況ですので、これらを手放さなくてよいのはありがたいことです。
ただし、個人再生は、自己破産と異なり、借金が全額免除になりません。
借金が2割とか1割に減らしてはもらえますが、支払いは残ります。
その支払いができないようですと個人再生は使えないのです。
つまり、個人再生には、継続的な収入が必要です。
「じゃあ、無職の年金ぐらしは駄目じゃないか」
と言われてしまいそうですが、年金も立派な収入です。
そして、日本国の年金制度が崩壊した場合には分かりませんが、一応、継続的な収入とされています。
そこで、この年金収入を基礎として、返済可能であると裁判所から判断されれば、個人再生により借金(債務)圧縮をすることが可能です。