弁護士解説 編

相続した財産に不動産がある場合の借金と相続放棄について

相続と言うのは、財産も借金も全部を一括して引き継ぐことです。

ですので、財産だけ相続する、とか、(そんな人はいないでしょうが)借金だけ承継する、ということはできないのです。

なんなら、もともと、借金しかない、という場合であれば、なんの考えも必要とせず、相続放棄あるのみですが、財産もあるけど借金もあるという場合には、相続すべきか否か、相続したとして借金をどのように整理するか、というとても悩ましい問題が生じます。

相続すべきか否かについては、財産の額と借金の額を比べて、財産の額の方が少なければ、マイナスになるので相続放棄をするということに理論上・計算上はなります。

また、借金の方が少なければ、相続をした上で、相続財産の中から借金の返済分を捻出します。

ここまでは一見簡単なことのように思えます。

ところが、相続財産・遺産と言うのは、現金や預金ばかりではありません。

今回の例でもそうですが、1500万円の自宅があるから、その一部を売却して借金350万円を返済するなんてことが出来ればよいですが、そんなことは通常は不可能です。

出来るとすれば、家を1500万円で売却して、その売却代金の中から借金350万円を返済することです。

ところが、この売却自体も簡単な話ではなく、売却すると不動産屋の仲介手数料が発生します。

また、売却した場合には、税金もかかります。

そういう計算もしなければなりません。

そもそも、1500万円で査定は出ているものの、必ず、その価格以上で売れるという保証もありません。

また、売却しようとしたら、境界がどうの、道路がどうの、と問題が出てきて、当初の査定価格を下回るケースもあります。

ただ、それまで住んできた、住み慣れた愛着のある家に住み続けるというメリット、その居住地域でのお付き合いや利便性等、金額では図れないものもあります。

ですので、こっちとこっちを比較して、パパっと決める、という具合にいかないこともよくあります。

相続した財産に株式がある場合の相続も悩ましい

似たような例としては、自分の家でやっている商売についての会社の株式なんかもそうですね。

株式の価格の出し方というのもありますが、そんな価格は、正直、意味がありません。

その値段で売れるというものでもないからです。

それに、仮に、借金と株式の価値を比較して、借金の額の方が多いとしても、家業を継ぐ以上は、相続放棄をします、とも言えません。

借金を相続した(してしまった)場合はどうすればよいか【原則は任意整理】

そして、仮に借金も相続した場合の借金の整理方法ですが、もし、相続財産に現金・預金があまりない場合には、今回のように任意整理をするしかありません。

財産があるわけですから、自己破産をすることはできませんし、破産するのでは、何のために家を相続したのか分からないです(だったら相続放棄しておけばよかったということになります)。

相続した借金の整理として個人再生(民事再生)はできないのか?

その他には、個人再生(民事再生)という債務の整理方法もありますが、個人再生の場合には、財産を売却したり手放したりする必要はないのですが、清算価値保障の原則というルールがあります。

これは、持っている財産の価格以上の返済をしなければならないというルールです。

今回の例で言いますと、

財産(家):1500万円

借金   :350万円

という場合には、通常は、350万円の借金がある場合には、借金は100万円にまで圧縮されるのですが、1500万円という財産があるために、1500万円を下回る返済は認められないのです。

しかも、個人再生をする場合には、相続した財産のみならず、自分固有の財産も清算価値保障の原則の計算に組み入れられますので、もし、相続財産としては家しかないとしても、自分の財産として例えば、100万円の車がある場合には、それも合計して計算されます。

財産(家):1500万円+財産(車):100=1600万円

借金   :350万円

もちろん、借金自体が350万円しかありませんので、それを超える返済をしろと言われるわけではありません。

ですが、そうしますと、350万円全額を返済しろ、と言われてしまうことになり、結果として、わざわざ、個人再生をする意味がないのです。

全くないとは言いません。

例えば、個人再生の場合には強制的に分割払いを認可されますので、3年の分割とか5年の分割という具合に分割払いをしたいが、どうしても債権者(消費者金融会社、クレジット会社等)が分割払いを認めてくれない、という場合には意味があります。

また、すでに、裁判を起こされてしまっており、放っておくと強制執行として、家や給与を差し押さえられてしまうという切迫した事情があるときには、個人再生には、強制執行を停止する力がありますので、個人再生を申し立てるということにやる意義があるでしょう。

個人再生、任意整理、相続放棄にかかる費用は、個人再生≧任意整理≧相続放棄

個人再生をする場合にも、任意整理をする場合にも費用がかかりますが、通常、任意整理は交渉・協議すべき債権者の数に比例して費用が計算されるので、債権者が多い場合には、任意整理の方が費用が高額になることが考えられます。

ちなみに、相続放棄をする場合にも費用がかかりますが、相続放棄の費用は、相続放棄をしようとする相続人の数に比例します。

いずれの場合も、必ず、弁護士に相談して事前にお見積りをとってみてください。

相続した借金の任意整理のやり方・進め方

今回は、不動産という形にせよ、資産の方が借金より多いという資産超過の場合で、個人再生をする特別の理由もありませんでしたので、任意整理をしました。

債権者との交渉中に、債権者から、

「家があるんだから家を売って返済してください」

と言われたら嫌だなあ、分割払いの交渉が難しくなるなあ、と思っておりましたが、そのようなことはどの債権者からも言われませんでした。

債権者としても、相続放棄を予想していたところで、任意整理の申し出があったということではないかと勝手に想像しております。

なぜなら、そもそも、亡くなられた方の借金を相続人にまでトコトン請求するというのは、金融機関のスタンスとしてはあまりなく、通常は、死亡が分かる資料を送ってください、とか、相続放棄したらお知らせください、とか、そのような対応をしてきます。

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