弁護士解説編

破産手続きが管財になるか同廃になるかは大きな違い

破産の申し立て時には、一応、申立代理人が、このケースは破産管財人がつく破産管財手続きか、それもとも破産管財人をつける必要がない同時廃止手続きかを選ぶチェック欄があります。

それなら、申立代理人が同時廃止と選べば破産管財手続きにならないで済むのではないか?と思われるかもしれませんが、そういうものではありません。

さすがに、浪費・ギャンブル、未回収の貸付金があるという状況で、破産管財人は不要です、と言っても、通常であれば、裁判所が、

「いや、このケースでは破産管財人をいれて調査させる必要がある」

と破産管財手続きに回すことが明らかです。

もちろん、ギリギリのケースもあります。

例えば、ギャンブルをやったことはあるけれども、

数年前にやめている、

金額がそんなに多額でなかった、

浪費と言えなくもないけど、その当時は、十分に毎月のお給与から支払いを継続することができるはずだったのに、突然、リーマンショックやコロナショックのようなことがあったために、リストラ・失職した

等の場合です。

上申書等で管財でなく同廃が認められることもある

その場合には、上申書という書類を提出したり、資料を添付したりして、こういう事情だし、破産管財費用もないので、同時廃止手続きで進めてもらいたい旨の上申(要は、お願い)をすることにより、破産管財手続きに回されないで済むこともあります。

ですが、これはかなりレアです。

上申(お願い)しさえすれば、なんでも同時廃止手続きにできるというものではありません。

また、貸付金の未回収金についても、相手が行方不明であるとか、相手自身が自己破産している、生活保護を受けている等の状況ですと、回収することはほぼ不可能ですので、その旨を上申することにより、

「たとえ破産管財人をつけたとしても、もはや回収できる可能性はありません。」

「したがって、破産管財手続きでなく同時廃止手続きでお願いします。」

という願いが受け入れられる可能性があります。

本ケースでは、一応、元カレと電話連絡はつく状態なので破産管財人も多少、調査はしたようです。

しかし、結論としては、破産管財人は、申立人の女性に同情は示してくれましたが、元カレを訴えるとかはしないままで終わりました。

他方で、昔のパチスロやブランドショッピングについては、

「もうやっていないですよね?」

と確認されたぐらいで、ほとんど触れられませんでした。

もちろん、反省文をしっかり買いて提出済みなので、聞いても同じことを言うだろうと思ったのかもしれません。

そして、なんとか破産の免責が認められることになりました。

管財人は回収可能性がない貸付金として財団放棄

結局、破産管財人も回収できず、破産管財人はその貸金請求権を放棄しました。

「放棄」したとは、要するに、

「あとは、自分で好きにしてください」

ということです。

そこで、

「もし、元カレの追及をするつもりなら、元カレへの債権が消えてはいないので、反省を迫る意味合いであれば、やってもいいかもしれませんがどうしますか?」

とお聞きました。

しかし、実は、その時点で新たに交際を始めたそうで、とれるかどうかも分からない(可能性の低い)貸付金のために、元カレがどうのと騒ぐのも、その交際相手に悪いので、もういいです、って言うことでいした。

ちなみに、その交際相手とは最終的に結婚することになり、今は専業主婦です。

そういうこともあって、逆に考えれば、結婚前にすべてのゴタゴタを整理できて本当によかったとのことでした。

自己破産手続きについて管財事件と同廃事件のまとめ

自己破産手続きが管財事件になるか、同廃事件になるかは、依頼者の方にとって経済的負担が違うので、なるべく同廃事件になるように努力はしますが、どう考えても管財事件というのも存在するので、努力だけでどうにかなるものではありません。

(1)管財事件になる自己破産事件

・財産額が33万円以上

・法人の代表者や個人事業主

・債務額が多額である

・免責不許可事由がある(あるはその調査が必要)

・換価や処分(売却)すべき資産がある

・財産調査が必要(過去に大きなお金の出入りがある等)

(2)管財事件になった場合の効果

・管財費用を収めなければならない

・債権者集会が開かれる

・管財人の調査やその他の手続きのため時間がかかる

(3)同廃事件になる自己破産事件

 管財事件にならない自己破産事件は同廃事件として扱われることになります。

(4)少額管財の特例

管財事件と言うは、管財人が就任して、その管財人に報酬を支払わなければならない事件ですが、この報酬が多額だと破産する人は困ります。

通常の管財事件ですと、この費用自体が60万以上かかります。

そこで、弁護士代理人が就いて、管財人の負担を軽減することができれば管財費用は少なくて済むはずです。

そのような考え方から、少額管財(簡易管財)などと言って、弁護士がついている破産申立事件については、管財費用を20万程度に抑えた運用とするという裁判所があります。

仙台地方裁判所もこの運用を取り入れております。

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