会社の債務と社長個人の責任は別のもの
会社が債務を返済できずに自己破産することになったとしても、
会社の債務=社長個人の債務
というわけではありませんので、社長も自己破産しなければならないわけではありません。
あくまで、会社の借金、会社の買掛け、会社の支払い義務は、会社の責任です。
ただし、会社と言っても、会社は組織であって、人ではないので、債権者の方もその責任を誰かに追及しなければならいません。
その債権者からの追及の法的な窓口が代表取締役である社長なのです。
だてに、「代表」というわけではありません。
会社の代表なのですから、会社の責任については、社長が追及されるわけなのです。
とはいえ、重要なのは「代表取締役」という肩書であって、その人個人が誰かという事は関係がありません。
ですので、例えば、A会社の代表取締役が宮城さん(仮名)の場合には、A会社にお金を貸した債権者は、宮城さんに、お金を返すように迫りますが、仮に、宮城さんが社長を辞めてしまい、福島さん(仮名)が新たに社長になった場合には、債権者はもはや宮城さんには何も言えなくなります。
ですので、テレビ・新聞等で、責任をとって社長を辞任、などという報道をよく見かけますが、ああいう場合には、逆に言えば、その辞めた社長には何も責任を追及することができなくなります。
零細企業・中小企業の場合は、ほとんどがオーナー企業の形態です。
つまり、自らが会社の出資者(オーナー)であるのと同時に、自らが社長です。
ですが、会社が傾いて、債権者から社長に対しての督促が激しくなってきた場合に、そういう督促を受けるのが精神的にストレスなので(誰でもそうですが)、社長を辞めて、誰か別の人を社長に立てるということもできます。
そうなると、債権者は、たとえオーナーであっても社長にしか会社の債務の督促をすることができません。
そして、このオーナーが自分の代わりに立てた社長がいわゆる雇われ社長です。
会社が自己破産しても雇われ社長個人は何も関係がない
雇われ社長といえども、社長なので、例えば、会社の自己破産手続きをすると言う場合には、社長が会社の代表として、債権者集会に行ったりしなければなりません。
そこで、債権者からの厳しい非難を受けるかもしれませんが、それは会社を代表して非難を受けているわけです。
社長個人の責任を追及されているわけではありません。
ですので、会社の財産は、破産管財人によりどんどん売却・回収されていきますが、社長個人の財産は一切、手を付けられることがありません。
雇われ社長なのに連帯保証人なのは最悪
ですが、雇われ社長であっても社長なので、例えば、金融機関から借入れを起こすような場合には、金融機関は社長である代表取締役を連帯保証人にすることを求めることがあります。
自分の会社でなく、いつオーナーから解任されるか分からないという状況があるにもかかわらず、連帯保証人という重い責任を負わされるなんて、合点がいかないと思うのですが、そういう人がいます。
もちろん、最初は、会社がきちんと借金を返済すれば連帯保証人って言ったって、形だけのものに過ぎない、と思ったのかもしれません。
ですが、いざとなれば、つまり、会社が返済できない状況になってしまえば、金融機関から、連帯保証人としての返済を求められるようにはなってしまいます。
そして、通常は、会社の借り入れですと、ちょっとキャッシング、とか、消費者金融からの借り入れ等と違って、額が大きくなりがちです。
とても一個人で支払える額ではありません。
したがって、会社が自己破産する場合には、自らも破産しなければならないことになります。
会社と社長のセットでの自己破産が多いという理由は、この連帯保証にあると言っても過言ではありません。
株主(オーナー)は有限責任
会社のオーナーは、会社が自己破産をするときにどのような影響を受けるでしょうか?
例えば、会社のオーナーと社長が別で、社長が雇われ社長で、社長のみが会社の債務の連帯保証をしている場合、会社の支配者であるオーナー個人はどのような責任を追及されるでしょうか?
答えは、何もオーナー個人は責任を追及されません。
社長に別の人を立てて、自分は社長をコントロールする立場になっていたとしても、オーナー個人は無傷です。
正確に言うと、株主有限責任といって、そもそも、会社の財産自体が株主であるオーナーのものなので、会社が自己破産すれば、会社の財産は失うという意味では無傷とは言えないかもしれません。
しかし、オーナー個人が会社の債務について連帯保証人になっている等の事情がなければ、オーナー個人が豪邸にすんでいようが、高級車に乗っていようが、会社の破産管財人も、それらの財産を会社の債務の返済(配当)に充てろとは言えないのです。
もし、連帯保証人が雇われ社長のみで、その社長が債権者から詰められて、かつ、社長個人の財産が没収されるのだとすると、どうも腑に落ちないと感じるでしょうが、原則的には、オーナー個人の個人財産は別物として扱われるのです。