FXに関連する借金の整理について宮城の弁護士が解説
FXを他人名義の口座でやることの問題点
FXを自分ではなく妻などの他人名義でやることを「仮名取引」あるいは「借名取引」といいます。
「仮名取引」あるいは「借名取引」は、脱税やマネロン(マネーロンダリング)に使われるおそれがあるため、証券会社には、「仮名取引」あるいは「借名取引」を受け入れてはいけないという縛りがあります。
おそらく、どこの証券会社も、本人以外の名義での口座開設を許容していないはずです。
ですが、FX口座の開設は、今やインターネットで簡単にできてしまうので、全く他人になりすますことはできないでしょうが、家族や友人名義であれば開設することはできてしまいます。
いろんな理由があって自分の名義でFX口座を開設しないようですが、一番、多いのは副業禁止のようです。
ですが、証券会社も複数ある口座の中には、そういうものもあることは想定はできているとしても、正面切って他人名義だと分かれば、取引停止や口座凍結をしてくる可能性があります
税務上も結局、本人名義では申告出来ていなでしょうし、課税リスクも高いので、家族であっても他人名義の口座は利用しないでおきましょう。
というのが、まず、一般論としてあります。
そして、債務整理の関係では、重要なのはお金の出所です。
たとえ、妻名義であったとしても、そのお金が旦那の収入・財産から出ているのであれば、その残高もその取引も本人がやったことになります。
問題は、対証券会社の関係で、あんまりないと思うのですが、例えば、追証を求められたときに、強制決済だけでは済まずに、さらにお金を支払えと言われる場合には、やはり口座名義人に対して、つまり、妻に対して請求がなされる可能性があります(まず、されるでしょう)。
そして、その請求に対しての返済ができないという場合には、妻名義での債務整理が必要となります。
「先ほどは、お金の出所が問題だと言っていたのにおかしいじゃないか」
と思われると思うのですが、その理屈を対債権者にまで及ぼすのは難しいのです。
つまりは、自己破産や個人再生では、「仮名取引」あるいは「借名取引」は、本人取引と裁判所から判断されますが、他方で、任意整理等、直接に債権者との交渉により借金の整理をする場面においては、形式上の名義人、つまり名前を貸した方が当事者になるのです。
FXでロスカットしても借金ができてしまうのか
前提として、FXで借金することはまずありません。
FX業者は、ロスカットラインというものを設定しておりそれを下回ると「強制ロスカット」を行うからです。
強制ロスカットが実行されると、少なくとも、証拠金以上の損失の発生は防止できるからです。
もちろん、証拠金はなくなってしまいますが、それ以上の損失が出ないので借金にはならない、ということです。
「ここで損切りするなんてやめてくれよ」
と思う局面もあるでしょうが、これは投資家保護の仕組みであると考えられています。
特に、大きなレバレッジをかけて取引をする際には、取引相場において急激な為替変動により、莫大な損失になる危険があり、とても預けていた証拠金では賄えない場合があり得ます。
この非常事態に至らないように、一定ラインよりも含み損が増えた、投資家が
「もうちょっと様子を見てみよう」
などということをすることを許さずに、強制的に損切り(ロスカット)して、損失をそこで確定してしまい、損失が証拠金以上にならないようにするのです。
というわけで、このような強制ロスカットがある以上は、FX業者・証券会社に対して借金を負うことはないはずです。
ただし、ロスカットが追い付かないほどの急変動やシステム障害でロスカットがうまく作動しなかったということも理屈上はあり得ます。
しかし、そう多くは聞きませんし、支払えなくても多少の足が出る程度の額のマイナスになることがほとんどです。
ですので、債務整理のご相談で、
「FXで借金が出来てしまって・・・」
というお話もよくよくお話を伺うと、結局、証拠金(追証)を借金して突っ込んでいる場合がほとんどなのです。
つまり、
「ロスカットで借金ができた」
というのは正確ではなく、
【証拠金(追証)を借金して突っ込んでいたのでロスカットされて損失が確定してしまい借金が返せなくなった】
というのが正しい表現です。
借金は、証拠金(追証)を突っ込む以前からしています。
このあたりが良く分かっていない弁護士や司法書士がいるので、破産や再生でも、債務増大の経緯を読んでも、さっぱり裁判所も分からないのです。
分からないので、裁判所書記官からも、
「このあたりをもう少し補充して説明してください」
「関連する資料を提出してください」
となるのですが、聞かれている弁護士も良く分からないので、ただ、ご本人に、
「なんか裁判所からこう言われているんで、説明と資料を出してください」
と伝えるだけです。
それで、さらには、本人もFXのことは分かるけど、何が疑問なのかが良く分からずに、さらに、無関係な説明や筋違いの資料を出して来ます。
それも、弁護士の方でかみ砕いたり、整理するわけではなく、そのまま裁判所に提出、と。
さらに、・・・・・。
こんな感じです。