公務員の親が保証人になっていますが自己破産できますか?
『公務員』と聞きますと、
「お堅い」
「真面目」
「地道」
等々、とても借金返済に困っている等のイメージは出てこないのですが、
【公務員だって人間だもの】
と誰かが言ったとか言わないとか。
いずれにせよ、公務員であっても、ストレスから、つい浪費やギャンブルをしてしまうこともあります。
借金返済に苦しむことは当然あります。
借金の返済に窮して換金行為をしてしまうこともあります。
それに、たとえ、自分が浪費やギャンブルをしたという分けではなくても、様々なしがらみから、だれかの保証人、連帯保証人になってしまうことだってあるのです。
※ なお、浪費・ギャンブル・換金行為は破産手続き上の免責不許可事由ですが、裁判官の裁量で免責されることがあります。
連帯保証人になるのは、それだけ人がいいからとも言えます。
ですが、気前のよさで保証人になってあげたとしても、当の借りた本人がお金を返さなければ、連帯保証人も一転して、債務者になってしまいます。
債権者も、
「この人は連帯保証人だけど根はやさしい人なので請求しないでおこう」
「この連帯保証人は公務員だから請求は控えてあげよう」
などとは言ってくれません。
むしろ、債権者から見れば、公務員は絶好の取り立て先です。
それは、公務員はその給与が安定しているので給与差し押さえがやりやすい、とか、給与差し押さえをしても公務員を簡単には辞めないだろう、と考えられているからです。
その債権者の読みがあるために、すぐに、、
「連帯保証人としての義務を果たして頂かないと強制執行(給与差し押さえ)しますよ」
と事実上の脅しを加えてきます。
ただ、実際問題、難しい公務員試験を受けて、倒産することのない安定した職場に入れたのに、その公務員の地位を失いたくない、というのは切実です。
連帯保証人としての支払いはできないけど、自己破産すると公務員としての自分の立場はどうなるのか、と悩まされれている方も少なくないのです。
破産すると公務員の地位はどうなる?
結論から言いますと、破産しても、公務員の地位はどうにもなりません。
「どうにもなりません」というのは、(自己)破産しても、公務員の地位を失うことはないということです。
実際に、ご自身の職場の懲戒処分基準をご確認されるとよいかと存じます。
そこには、
・一般服務関係(欠勤等)
・公金公用物取扱い関係(横領等)
・公務外非行関係(放火等刑法犯)
・交通事故・交通法規違反関係(飲酒運転での交通事故等)
・収賄・職員倫理条例関係(収賄等)
等があるかと存じますが、例えば、
【債務整理関係 自己破産】
などとは全く書いていないはずです。
自己破産すると公務員資格を失うという法律もありません。
したがって、自己破産したところで、公務員としての勤務は引き続き行えるのです。
公務員が自己破産すると職場に通知されますか?
自己破産という手続きは裁判所で行うものですが、言うまでもなく、裁判所は官庁・役所です。
ですから、そこから類推して、
「同じ官庁同士は横のつながりがあるだろうから、公務員が自己破産したことは裁判所から各省庁・自治体に通知されるのではないだろうか?」
と不安に思う方がいらっしゃいます。
ですが、そのような通知制度はありません。
自己破産をすると、「官報」という国の広報紙のような媒体に掲載はされます。
ただ、その「官報」を日々、チェックしているという特殊な職場でない限り、自己破産をしたことが勤め先にバレてしまうというのは考えられないというのが原則です。
ところが、1つ困ったことは、公務員であるがゆえに職場にバレてしまう可能性がある事例があります。
それは、「公務員共済貸し付け」を受けている場合です。
共済貸付けを受けている公務員の自己破産
(1)共済貸し付けとは
共済貸付とは、その名の通り、公務員が加入している共済組合が、公務員に対して融資する(貸し付ける)制度をいいます。
そして、その用途により、非常に充実した種類の貸し付けを無担保かつ低利で行っています。
【共済貸し付けの種類】
・自動車や家電等を購入する資金
→ 普通貸付
・住宅を新築又は改築等する資金
→ 住宅貸付
・災害により家財等に損害を受けた
→ 一般災害貸付
・災害により住宅に損害を受けた
→ 住宅災害新規貸付
・現に住宅貸付又は住宅災害新規貸付を受けていて、災害により住宅に損害を受けた
→ 住宅災害再貸付
・療養資金
→ 医療貸付
・子どもの進学資金
→ 入学貸付
・子どもの修学資金
→ 修学貸付
・婚姻資金
→ 結婚貸付
葬祭資金
→ 葬祭貸付
・高額療養費の支給の対象となる療養資金
→ 高額医療貸付
・出産資金
→ 出産貸付
これだけの充実した種類があり、しかも、無担保で、その上、その利率は1%前後であれば、わざわざ銀行でお金なんて借りないですよね。
(住宅ローンは少し高めですが)
ですが、これが、自己破産の場合にはネックになるのです。
(2)共済貸し付けの返済を怠ると?
自己破産の場合には、全ての債務の支払いを停止することになります。
自分の都合で、こっちの債権者には支払うけれども、あっちの債権者には支払わない、ということができません。
これを「債権者平等の取扱い」と言います。
したがって、共済組合という債権者にも支払うことができません。
ここで、通常、共済組合への返済は、給与からの天引きで行われております。
そこで、その天引きを止めるためには、
「自己破産をしたので共済組合に対する支払いをストップしますので天引きをやめてください」
と申し入れしなければなりません。
その申し入れ窓口が通常は、職場の総務課とか人事課です。
当然、職場にバレてしまいます。
したがって、これがネックになるため、自己破産はしないで、任意整理をするという方もいます。
任意整理であれば、基本的には、どの債務を任意整理の対象とするかの選択権は、債務者側にありますので、この支払いとあの支払いは任意整理の対象にするけど、その支払いは今まで通り普通に支払う、ということができます。
実際問題、すでに述べた通り、共済貸し付けは利息が安いので、手数料払ってまで任意整理するメリットはあまりないのです。
また、その方の共済貸し付けの返済状況等によっては、職場にバレないで自己破産できる可能性もあります。
実際、公務員の方で職場にバレないまま、自己破産した人がいます。
ただし、その場合には、相談の際に、すべて弁護士に詳細に状況を説明して頂く必要があります。
破産すると公務員になれない?
自己破産すると公務員の受験資格がなくなるのではないか?
親が自己破産すると自分の公務員試験の受験資格に影響があるのではないか?
と心配されている方がいますが、
1.成年被後見人、被保佐人(準禁治産者を含む)
2.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者その他その執行を受けることがなくなるまでの者
3.懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
4.日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
というのが共通の要件で、あとは、年齢、学歴、場合によっては身体要件があるぐらいで、債務整理がどうとか、自己破産がどうとか言うのは問題にはならないのです。