会社の借金と社長の責任

会社が倒産した社長のイメージ

会社の借金があったとしても、その返済責任を社長が負うという事ではありません。

日本では、中小企業・零細企業の多くがオーナー社長であるためか、なんでもかんでも社長が責任をとれという風潮がありますが、会社の責任は会社の責任です。

会社と社長個人とは別の法人格なのですから、社長が法的にどうのこうの言われる筋合いはありません。

では、なぜ、会社の借金について社長が文句を言われるのかというと、社長が会社の窓口だからです。

そして、社長が会社の代わりに会社の業務執行を行っているからです。

会社の債権者は、

「借金返せ」

と、会社の建物(ビル)にむかって言っても仕方がないので、代わりに社長に、

「借金返せ」

というのです。

会社がお金を借りたり、契約すると言っても、会社の建物(ビル)からニョキッと手が出て、代表印を押すということができないので、代わりに社長が代表印を押しているのです。

昔は、城が落とされて、国が敗れると、国主が腹を切らされたり、打ち首にされたりしましたが、会社は城でも国でもありません。

単に、会社の経営が失敗したという事ですので、腹を切る必要もありません。

会社破産で社長はどうなる?

そういうわけですので、会社が借金を返済できず破産する場合も、社長は、会社の代わりに破産申請書に代表印をつくわけです。

破産管財人も会社の建物(ビル)にむかって話をするわけにはいかないので、社長と話をするのです。

債権者集会でも、債権者が会社の建物(ビル)にむかって文句を言うわけにはいかないので、社長に文句を言うわけです。

ただ、外部から見ると、実際に会社の行為を行っているのが社長なので、会社=社長に見えます。

ところが、法律上は、会社≠社長なので、会社が破産しても、社長個人は破産しないのが原則です。

会社の財産は破産管財人に没収されてしまいますが、社長個人の財産は何も手をつけられることがありません。

ただ、会社が破産になって債権者への返済がなされないのに、社長個人がそれまで変わらず自分の家に住み、自分の車に乗って生活していると、

「会社だけを潰しておかしい」

「責任を感じていないのか!?」

と債権者から言われます。

いくら法律上の人格が別であることを言っても納得してくれません。

会社が敗れた場合には、社長も切腹することを債権者は希望します。

旦那は社長ですが個人的に消費者金融から借金あり

ただ、会社が破産しても社長は別だと言ったところで、会社が破産すると社長は職を失います。

それまでもらっていた役員報酬がなくなります。

そうしますと、社長やその家族は経済的なダメージを受けます。

また、例えば、それまでは社長は役員報酬があったから消費者金融やキャッシングの返済をしてこれたが、収入が絶たれれば当然、それらの返済も滞ります。

そのため、会社の負債とは別ですが、自らが社長職を失うことにより、収入が経たれて、個人的な借金の返済に窮するため、会社と同時に自己破産手続きをとらざるを得ない、というケースもあります。

一番多いのは会社の債務の連帯保証

ですが、やはり、会社と同時に社長個人も同時に自己破産を申し立てる一番多くの理由は、

【会社の借り入れを社長個人が連帯保証しているため】

です。

やはり、ほとんどの場合、銀行、信用金庫、信用組合、そして、日本政策金融公庫まで、社長の個人保証を求めてきます。

会社の事業を評価するのではなく、担保主義なので、プロパーでの融資はなかなか認めてくれません。

しかも、会社の借り入れは、到底、個人で保証できるような金額ではなく、いざとなれば、社長個人も自己破産しなければならなくなるケースは経験則上、分かっていることですが、現実の回収可能性というよりも、社長の一つの責任のあり方として、連帯保証はどうしても必要とされるのです。

雇われ社長の自己破産について

中小企業の場合には、いわゆるオーナー社長が多く、会社の出資者(大株主)でもありつつ社長ということですので、会社と社長個人の財産状況がほぼ一心同体です。

そして、会社が傾いてしまえば、社長個人も連帯保証人として、会社もろとも社長も自己破産ということで、ある意味分かりやすくはあります。

ですが、雇われ社長というのは、サラリーマンに近く、オーナーが解任したり、任期切れ後に再選任しない、という不安定な地位に置かれます。

他方で、逆に言えば、嫌になったら(会社が危なくなったら)、

「もう辞めます」

と逃げ出すことも可能です。

ところが、逃げられない場合があり、それが、連帯保証人になっている場合です。

いざとなれば、首を切られるかもしれないのに、会社の債務について連帯保証している(させられている)という状況で誠に厳しい状況ではあります。

もちろん、債権者の方にしてみれば、

「だったら最初から社長にならなければいい」

「そういう責任を引き受けるのが社長の仕事だろ」

と言われるのかもしれませんが。

会社の倒産は子供に迷惑?

「会社が倒産すると子供に迷惑がかかるから」

と倒産処理の正式な手続きをためらう社長が多いですが、会社の倒産については子供にとって迷惑です。

社長個人も債務者になっているため家に督促状が来る

家(自宅)を手放さざるを得なくて引越ししなくてはいけない

収入がなくなるので私立ではなく公立にしなければならない

等々、影響は大きなものがあります。

ただ、事あるごとに言っているのですが、

「倒産することが迷惑なのであって、倒産手続き(破産・再生)自体は、むしろ、きちんとしないと子供に迷惑がかかるのです。」

そこをよく理解していただきたいと思います。