【ご相談内容】宮城(仙台)の倒産情報はどうして出てくるのか?
宮城(仙台)で会社を営んでおりますが、正直、先行きが厳しく感じております。
税理士さんとも相談しておりますが、税理士さんも、
「自分は単に税務申告するのが仕事なので、そういうのは弁護士に相談してください」
と冷たく言われてしまいました。
ただ、実際に、会社が倒産した場合のことですが、どうして、実際に裁判所に申し立てをする前に、公表されたりすることがあるのでしょうか?
まさか弁護士さんが公表するわけではないと思うのですが、妻も子供もおりますし正直不安です。
【弁護士(仙台)からの回答】
倒産情報サイト(宮城・東北)
確かに、倒産情報は裁判所に対して申し立てをしない段階でも出てきます。
例をあげてみます。
「破産開始決定」
「破産申請へ」
「民事再生法申請」
などは、裁判所にその旨を申し立てるので分かっても不思議はありませんが、
「弁護士一任」
というのは、その名の通り、弁護士に会社の債務整理を一任しております。
なります。
こちらも
「破産手続き開始決定」
というのは分かりますが、
「自己破産へ」
「事業停止 経営破たん」
というのは、まだ、自己破産を裁判所に申し立てる前の段階です。
「事業停止 経営破たん」
は分かりますが、逆に、
「自己破産へ」
となっていると、
「なんで自己破産を申し立てることを知っているの?」
と疑問に思いますよね。
こちらも、
「破産手続き開始決定」
「破産手続開始申立」
「民事再生手続開始申立」
は分かるのですが、
「破産手続開始申立準備」
となっていると、
「どうして準備しているだけなのにそのことがわかるのだろう?」
と不思議に思いませんか?
帝国データバンクは、単なる速報にとどまらず、割と事業内容や倒産に至る経緯まで詳しく書いております。
それでも、
「事業停止 自己破産申請へ」
となっているのは、
「申請前にそのことを報じられるのはどういうことなんだろう?」
と首をかしげたくなるかもしれません。
なぜ裁判所に申し立てる前に倒産情報が出てくるのか
(1)弁護士からの介入通知
倒産状態になりますと当然ながら債権者に対する支払いができません。
支払い・返済を受けられない債権者は何もなければ、そのまま会社に押しかけます。
そうなったら混乱状態になるので、会社は、倒産処理を弁護士に依頼します。
すると、弁護士からは債権者に対して、通知を出します。
通知の内容は、その弁護士事務所ないしは弁護士個人の個性によるところが大きいのですが、そこには、かくかくしかじかで債務の返済が難しくなったので、これから債務の整理を行う旨が記載されています。
(弁護士からの介入通知・受任通知の例)
債権者各位
この度、当職らは、株式会社宮城仙台(仮名)及びその代表取締役である石巻登米(仮名)の債務の処理にあたっての代理人となりましたので、その旨をご連絡させていただきます。
株式会社宮城仙台は、創業以来、地域の建築工事を行ってまいりましたが、近年の公共事業の減少及び人件費・原材料費の高騰等により、資金繰りがひっ迫して、ついには、事業継続が困難になりました。
従いまして、令和1年10月末日をもって事業を停止させていただきます。
債権者・関係者の方々には多大なるご迷惑をおかけしますことを心よりお詫びいたします。
つきましては、まずは正確な債務の把握が必要であるために、各債権者様には債権調査票をお送りさせていただきますので、債権額等のご記入及びご提出のご協力をお願いいたします。
なお、引き続き、株式会社宮城仙台の債務処理についてはご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
本件に関しましては、当職らが一任され、窓口となりますので、くれぐれも、代表取締役である石巻登米ほか会社従業員、その家族等への接触・連絡等はなされませんようお願いいたします。
また、会社事務所・倉庫・会社の現場等はすでに施錠いたしておりますが、施錠の損壊等をなされたりしますと、警察等も介入する事態になりかねませんので、そのようなことがないよう重ねてお願い申し上げます。
(以上)
これは一例ですが、こういう通知を債権者が受け取れば、
「事業停止」
「弁護士一任」
というのは分かるはずです。
また、民事再生をする場合には、完全に事業は停止しません。
事前に取引先やメインバンクとも十分な打ち合わせがあっての話にはなるので、債権者から情報が帝国データバンク等に行くことは十分にあります。
そして、倒産情報をかぎつけた帝国データバンクや商工リサーチは、その弁護士に電話します。
(2)リサーチ会社による倒産処理担当弁護士に対する取材
電話がかかってきて、
(リサーチ会社)「今回、株式会社宮城仙台の破産を担当する塩釜(仮名)弁護士ですよね?」
(塩釜弁護士)「まだ破産と決まったわけではないけど債務処理を担当はしてます」
(リサーチ会社)「でも再生ではないですよね?だったら破産ですよね?」
(塩釜弁護士)「ですので、再生とも破産ともまだ決まったわけではないけど債務処理を担当してます」
(リサーチ会社)「倒産の原因は、社内の取締役の内紛ですか?」
「当社でも事前に調査はしているんですけど。」
(塩釜弁護士)「経営困難になった理由は複合的です。」
「取締役の内紛などありません。」
・・・・・・・・
こういったやりとりが若干あります。
これも、その弁護士事務所やその担当弁護士の個性がでます。
かなり詳細に話をする弁護士もいるはいるようです。
(3)私的な債権者説明会
法的な債権者集会ではなく、債権者が多い場合や規模がある程度大きくて混乱が予想される場合には、先行して、私的に説明の場を設けて、債権者説明会を開く場合があります。
そして、その場で、倒産に至った原因や会社の現状、そして、今後の処理の方針を示して、債権者にそれをしばらくは見守っていただくことをお願いするのです。
ですので、その説明会に出席したら、おおよその内容は分かるわけですし、例えば、
「今後は、すみやかに仙台地方裁判所に破産の申請をする方針です」
と述べれば、当然ながら、
「自己破産へ」
「破産手続開始申立準備」
「事業停止 自己破産申請へ」
という報道も出てくるのも了解できます。
本当に見込みで報道している場合もある
ただし、
(1)弁護士からの介入通知
(2)リサーチ会社による倒産処理担当弁護士に対する取材
(3)私的な債権者説明会
以上のいずれもやっていないのに、報道される場合もあります。
その場合には、債権者に対する聞き込みとか、事前に帝国データなどは情報を確保しているので、それらを総合して、速報の形で報じてしまうのです。
経験上、実際にそのようなケースが何件もありましたが、細部はともかく、大筋ではあっていることが多く、なかなかの情報収集力だと感心したりもしますが。