弁護士解説編
自己破産ないし個人再生を利用できる方
自己破産や個人再生というのは借金の返済に窮した方が、なんとか合法的に債務の支払い義務の全部あるいは一部の免除を求めて行う手続きです。
したがって、借金の返済に窮していない人が自己破産や個人再生をするということはできません。
ただし、そもそも、借金の返済に窮していないのにも関わらず、自己破産や個人再生をする人はいないでしょう。
ですが、それでは、自己破産ないし個人再生は借金の返済に窮している人であれば誰でも利用可能な手続きであるのかというと、そうでもないのです。
例えば、財産を持っているのに、それを使いたくない、あるいは使えないので借金の返済に窮しているという人は実は結構いらっしゃいます。
たしかに、破産手続や個人再生を開始するには、「支払不能」=「支払ができないこと」であることが必要です。
支払い不能とは?
ですが、「支払不能」というのは、預金口座にお金は入っているけど、奥さんに預金口座を取り上げられているので、勝手におろして借金の返済に使うわけにはいかないのだ」というものを含みません。
そんなことを借金の返済を迫ってきている債権者に言ったとしてもまず聞き入れられるはずもないことはお分かりになりますよね?
支払い不能とは、借金の返済を普通に約束した通りに継続して行っていくことができない状況のことを言います。
(※なお、個人の破産の場合は、この支払不能が破産手続の要件ですが、法人の場合には少し異なります。)
どう計算してもまともに支払いを継続することはできないですよね。
「いやいや、また新たにクレジットカードを作ってそれを使ってキャッシングすれば、もう少し返済を継続できる」
「キャッシング枠はなくなってしまったけどショッピング枠が残っているのでショッピングしてすぐにそのものを転売・現金化すればできないことはない」
「ヤミ金で・・・・」
もう、このぐらいにしておきましょう。
こういうことに手を出してはいけません。
支払い不能ではないなら任意整理
少し、話がそれましたが、要するに、この度の事例においては、裁判所に申請する法的な債務免除手続(自己破産、民事再生)は、要件を満たさないためにこれらの手続を利用することができません。
この度は、借金よりも資産が多いため、返済しようとすれば(奥さんから離婚を告げられる覚悟をすれば)資産の中から返済することは数字上は可能です。
裁判所のみならずカード会社等の債権者だってそのように言ってくることはまず間違いありません。
任意整理とは個別の協議のこと
そのため残された方法としては、債務整理ないし任意整理として、個別に債権者と協議のうえで、
「なんとかこれぐらいの分割払いで勘弁してくださいよ」
と甘えてみたり、
「よそは認めてくれるのにお宅の会社だけが認めてくれないから破産するしかない」
と逆切れしたり、
まあ、なんのかんのと協議のうえで、分割払い、しかも、なるべく月々返済可能な金額での期間・回数での分割払いを認めてもらうしかありません。
単純な話ですが、払うべき金額(総額)が決まっているわけですから、返済期間が長ければ長いほど、月々の返済すべき額が少なくなります。
返済期間が長いと通常は利息が高い
しかも、例えば、住宅ローンなんかの場合には、返済期間が長ければ長いほど、1カ月当たりの元本は少なくなりますが、他方で、払うべき利息の額は多くなります。
ところが、なんと任意整理の場合には、将来の利息はつかないのです。
実は、その昔は、あまり筋のよろしくない金融業者もたくさんいて、将来の利息をつけないと返済の期間は長期は認めないなどという業者もいましたが、最近は、将来利息を求めてくるところはまずお目にかかりません。
そして、5年60回払いとか、7年84回払いとか、債権者との協議によるものですので、そこはなかなか確実にどれくらいなら大丈夫というのは言えないのですが、そうやって互いに条件を出し合って和解をしていくわけです。
ただ、NTTはなぜか、5年以上の和解を絶対にしません。
こういう頑なな業者もあります。
例:総額600万円
5年(60回) 10万円/月
7年(84回) 7万円/月(※千円以下切り捨て)
しかし、7年はちょっと長期に過ぎるので受け入れられないことも少なくありません。
全く、無利息なので、長期の返済を認めるインセンティブは金融業者側にはあまりないのですが、かといって、破産するよりはいくらかでも返済してもらった方がよいので、そのあたりの匙加減です、
ところで、今回の件、そう言いつつも、各債権者とは、すべて84回払い、つまり7年間の返済期間を内容とした和解をすることが出来ました。
そして、今のところは、返済を欠かさず行って頂いております。
任意整理費用をどう捻出するか?
しかも、まだ奥さんにはご本人曰く知られていないそうです。
なんで、給与口座をおさえられているのに知られないで済んでいるのだろう?と思いましたが、勤務先がとても理解のある企業らしく(意外に多いのでしょうか?)、給与の一部をご本人の別口座に送金していただいているらしいのです。
でも、そうしたら、普通に給与が減っておかしいと思われるんじゃないですか?とお伺いしたところ、それは当然ながらご本人も理解していて、減額分を穴埋めするために、せっせと仕事に勤しみ残業をなさったり、休日出勤をしているそうです。
ただ、そうしたら今度は、なんで残業しているのに給与増えないの?と聞かれないのかと思いますが、そういう突っ込みはないそうです。
まあ、残業してなんとかなるレベルならまずは良かったほうです。
返済をどうしようかというのは任意整理の相談中も話をしていたのですが、私も残業して、その分を別口座に振り込んでもらうというのは思い至らず、
「ご親族で一旦、立て替えてくれる人がいればいいけど」
とか
「身体はきつくなりますがダブルワークで足しにする人もいらっしゃいます」
等々のお話をした覚えがあります。
一瞬、この方もバイトをしようかと思ったらしいのですが、よく考えると、そんなら会社で頑張って残業すればいいやという、当たり前のことに気が付き、残業を増やした分だけ別口座に振り込んでもらうようにしたのです。
会社には、信じてもらえたかどうかは分からないのですが、最近、カードの引き落としが両方の口座でされるようになってしまい、お金を移動するのをどうしても忘れるときがあるので、お願いできないかと頼んだところ、了承してもらえたそうです(参考になりますね)。
しかも、残業が不自然にならないように率先して仕事を受けるようにしたら、会社からの受けがだいぶ良くなったという副次的効果もあったとか。
体は疲れるでしょうが、よく考えたら、これまでは早々に仕事を切り上げて飲み歩いていたのですから、よほど時間は効率化されております。
まだまだ気は抜けませんが、コツコツ頑張って借金を完済して、完済してもその勢いを忘れずに、貯金し続けられるようになってほしいものです。