まずは車検証の初年度登録を確認

車検証をご確認ください。

車検証には、「初年度登録」欄があります。

多くの場合、自己破産した場合の車の価値の算定は、この「初年度登録」から何年たっているかを基準に算定します。

そして、仙台地裁(仙台地方裁判所)の場合には、「初年度登録」から5年経っていると残存価値がないものと扱います。

つまり、ゼロ円なのです。

ただし、購入価格が300万円以上したり、外車の場合には、5年経っていても、売れる場合があるので、その場合には中古車屋さんに車を見せて、車の査定書をとる必要があります。

そして、査定書をとった結果、20万を超えるような価値がある場合には、残存価値(財産価値)あり、として売却処分をしなければならなくなります。

次に車検証の「所有者」欄を確認

車検証に「所有者」の欄があるのが分かりますでしょうか。

車をローンで購入した場合には、その所有者欄に、アプラスとかの信販会社の名前が入っていることがあります。

つまり、その場合には、アプラスに所有権がまだ残ったまま(留保(保留)されたまま)なので、このような状態を「所有権留保」されている、と言います。

そして、車のローンが完済されるまでは、車の所有権は、普段、車に乗っているあなたではなく、アプラス等の信販会社にあるのです。

もちろん、車のローンを完済しても、ただ名義の変更をしていないという状態もあります。

その場合には、「所有権解除」の手続きさえすれば、いつでも、あなたに変更できます。

(1)自己破産の前に代理人から受任通知(介入通知)がなされると?

自己破産を申請すると言っても、通常の場合には、その前に、各債権者(車のローン債権者を含む)に対して、今後、依頼者について、自己破産の準備をするので、今後の支払いをストップする旨の通知をします。

そして、車のローンがまだ残っている場合で、かつ、所有権留保がされている場合には、ローン会社(信販会社)は、車を引き揚げる旨の連絡をしてきます。

実際に、所有権留保がされている場合には、引き揚げると言われれば、ローンを支払えない以上は、これを拒むことができません。

ですので、破産の申請をする前の段階で、車は引き揚げられて、破産の段階では、車を売るとか売らないとかは問題にならないのです。

(2)所有権留保がない場合

所有権留保がついていない場合もあります。

銀行や信用金庫の場合には、車を担保にとらない、つまり、所有権留保をつけないので、車を引き揚げることはしません。

そうしますと、車を保有したまま、自己破産手続きに突入という事になりますが、その場合の取扱いについてはすでに述べた通りです。

車の残存価値がない、もしくは、20万円以下の価値しかない、場合には手元に残しておくことができます。

車の残存価値が20万円を超える場合には、破産管財人によって売却処分されてしまいます。

以上、まとめますと、

①車のローンが残っているか?

②車のローンが所有権留保付きか?

③車の残存価値が20万円を超えるか?

といことで、お持ちの車の運命が変わってきます。

自己破産の前に車を売っちゃった!

「もう、破産するんで車は売っちゃいました」

という方が良くいらっしゃいます。

もともと、借金の返済にも事欠く状況で、車を維持できないから、というのも分かりますが、これをやった場合には、まず破産手続きが破産管財に回されることが多いです。

もう、車が10年ぐらい経っていて、かつ、ボロボロで、走行距離も20万キロで、とおよそ、誰も買わないような車を廃車処分にする代わりに、1万円で引き取ってもらったというように、問題にされない場合もありますが、大概は、その売却の価格が正しかったのかどうなのかを破産管財人が調査するのです。

また、クルマの中古車買い取り業者等なら、それが売却価格の相場なのかとも思いますが、親族や友人間で、勝手に値段をつけて売ったということになると、その売却価格の正当性がさらに問題になります。

あと、よくあるパターンが、売却価格は正当であるとしても、

・売却に関する売買契約書だとか、領収書だとか、そういう書類をなくちゃった

とか、

・売却代金を生活費で使っちゃったけど、具体的に何に使ったのか忘れちゃった

とか、

こういうことも、車の売却に付随して、破産管財人の調査の対象になります。

できれば、売却する前に、破産や債務整理について弁護士に相談してもらいたいのですが、相談時点で、もう売ってしまったということも、まあ、多いです。

(その時点では、弁護士に相談しようとか、そういうことを思っていなかったのですから、仕方ないですが。)

破産手続きが開始したら車に乗らない(財団放棄)

車を保有したまま、自己破産手続きに突入した場合、基本的に、破産管財人が車を処分するのですが、よく、

「じゃあ、破産管財人が車を売るまでの間は、乗っていてもいいですか?」

と聞かれます。

ですが、破産手続きが開始した時点で、もはや車の管理権は、破産管財人に移ってしまったので、それ以降は、破産管財人の許可なく乗ることはできません。

そして、破産管財人は許可しません。

なぜかというと、交通事故を起こされるのが怖いからです。

交通事故を起こされると、破産管財人の管理する車が事故を起こしたという事になり、責任を問われるからです。

なお、破産管財人が売ろうとしたけど、実際には、売れないというケースもあります。

違法改造車とか、故障車とか、ですね。

その場合には、破産管財人は、その車を戻してくれます。

これを「財団放棄」と言います。

要するに、破産管財人からすると、価値がないので、「放棄する」ことになるわけです。