~テレビで報道されるような大手企業ですと、「民事再生が申請され・・・」と簡単に民事再生を利用できるような感じを受けますが、民事再生法により会社を再生・再建するというのそんなに簡単な話ではありません。営業、債権者、利害関係者、金、といろいろなハードルがあります。
今回は、会社の民事再生(会社の場合は「個人再生」ではない)について、弁護士(仙台、宮城)が基本的なところをポイントを選んでなるべく分かりやすくご説明したいと思います~
【ご相談内容】会社の民事再生について
その勤務先で、社長が民事再生だか、個人再生だかの申請をどうも、画策しているらしいのです。
弁護士やら公認会計士が入れ代わり立ち代わりやってきますし、社長はほとんど、銀行巡りをしている状態です。
ただ、民事再生とか個人再生法って、申立をするのにもお金がかかりますよね?
会社にはそんなお金があるようには思えないのです。
(だから、民事再生とか個人再生の問題になるのでしょうが)
こんな、負債を抱えてお金もない会社が立ちゆかなくなった場合でも会社や社長が民事再生とか個人再生を申請することは可能ですか?
申請してもだめだと却下されることもあるのでしょうか。
従業員数は25名で、借金は、数億円あるみたいです。
心配なのは、会社が民事再生になって会社がうまく続いてくれるかどうかです。
社長が個人再生をしようがどうでもいいのです。
そうでないと会社が破産になってしまうのではないかと心配です。
個人的な話として、残業代も賞与もカットになってしまったため、個人的に借金があり、借入の限度額も目いっぱいで、今度、任意整理をしていこうと思っているような状況です。
会社がなくなってしまったら、自身が個人再生とか、個人破産しなければないかとおびえております。
こんな不確定で先が見えない状況で、何処で何を相談すればいいのでしょうか?
【ご回答】
会社の民事再生の費用と種類(タイプ)
勤務先の規模感等で分かることは、「従業員数は25名で、借金は、数億円」ということだけですが、民事再生をするにもたしかに費用がかかります。
ですが、その費用は全部で2~3千万程度でしょうから、その程度は、いざ民事再生をするとなれば捻出するのではないでしょうか?
もちろん、赤字だということですので、たしかに、普通に考えれば、お金が余っているはずはないのですが、非常事態なので、いろいろなやり方があるのです。
それに、民事再生にもいろいろなタイプがあり、完全自力再生をするタイプもないわけではないですが、通常は、スポンサーが付きます。
ですので、スポンサーが費用を捻出してくれる場合も多いです。
会社は民事再生をしても営業を継続できるのか
重要なのは、通常の営業が再生申し立て後も、継続できるのかということです。
取引先関係の維持
仕入れがストップされたり、売却先が仕入れ先を変更してしまったりしてしまえば、実際には営業も何も立ちゆきませんよね。
普通に考えて、民事再生申立する(予定の)会社が、
「仕入れさせてください、支払いは翌月払いでお願いします」
と言ってきても、怖いですよね。
破産に移行するかもしれず、そうしたら新たに納品した分だけ、損失が拡大してしまいますから。
売り先さんも同じです。
「いやいや、売り先はお金が払う側だから、別に、モノが入れてさえくれれば再生会社だろうがなんだろうが関係ないでしょう」
って、そういうわけにはいきません。
それまで、その会社のために陳列棚を確保していたり、その先だって、さらに別の会社に納品する約束をしている場合に、
「やはり再生は無理そうなんで、納品はストップします」
と言われたりしたら大変です。
それに、イメージとしても
「再生会社だから、人手不足だろう。給与もろくに支払ってもらってないんだろう。商品も手抜きで作るんじゃないか?」
とやはりどうしてもネガティブなイメージが付きまとうので、もし、ほかに仕入れ先があるのであれば、あえて、再生会社を使おうという気にはならないのではないでしょうか。
民事再生後の資金繰りの問題
あとは、たしかに、お金の問題です。
当面の資金繰りが立たないのであれば、そもそも、営業が継続が難しいです。
債権カットを受けても零にはなりませんので、再生債務者が責任を持って、再生債権の弁済率と弁済方法を定めなければなりません。
そして、その際には、債権者平等の原則に基づき、清算価値以上の弁済額を10年以内に支払うという計画でなければなりませんが、債務免除益にも注意が必要となります。
債務免除益とは、債権をカットしてもらった分について、それは利益であるからその部分に税金がかけられるのです。
ですので、債権カットする額が大きければ大きいほど得だっていうものではないのです。
会社の民事再生がうまく行くかどうかは容易には予測できない
まあ、そういうわけで、民事再生の申請があったとしても、首尾よく、再生計画案が現実的に履行可能で、債権者から異議を出されず、認可されるかどうかというのは、本当に不透明な部分があります。
ですので、個人的な債務の整理についても、会社が存続するかどうか、存続したとしてもリストラの対象となるかどうか、リストラされないとしてもそれなりの収入が得られるかどうか、によって、かなり、債務整理の方針も影響を受けるでしょうから、よく相談して、決めた方がよいでしょう。
どこで相談するかは、親身になって事情を踏まえたアドバイスをくれそうな司法書士ないしは弁護士に相談してくださいとしか言えないですが、場合によっては、何軒も回ってもいいでしょう。
~そもそも、民事再生手続きをするのか、単なる銀行との協議による任意整理・特定調停で済むのか、はたまた、最終的には破産に追い込まれてしまうのか、その点は不明ですが、仮に、破産になったとしても、そのご友人が首になって職を失うとは限りません。破産しても、事業譲渡と言って、別の会社が事業部門ごと買う場合もあるからです。
いずれにせよ、今の段階では、弁護士(仙台、宮城)からは、ご友人自身の債務整理の問題については、会社の見通しも含めて、いくつかのパターンを想定して、対策を考えてみてください、としか、言えません~