自分で破産や個人再生の手続をできますか?部分的に弁護士に依頼可能?

~ご主人のことで、ご主人自らが自己破産ないしは個人再生の手続きをすることができるかどうか心配されている奥様からのご質問で、しかも、自分にもどんな影響があるのかについて誤解されているようですので、弁護士(宮城・仙台)がご回答させていただきます~

【ご相談内容】自分で破産・個人再生手続きができるか及び破産等の家族への影響について

うちの主人が借金を抱えてしまっており、「破産法か民事再生法を適用」すると言っています。

ただ、主人は、

「お金がないので、破産法や民事再生法を自分でやる!」

と言っています。

私は、

「そんな難しそうなことを自分でするなんて無理じゃない?」

と言ったのですが、

「弁護士に全部頼むと費用が高くつくから、自分でやってみて分からないところだけ弁護士に頼む」

「それでも弁護士の費用が高い場合には、行政書士に頼む」

と言っております。

そんなこと可能なのでしょうか?

主人は、現在、失業中で、時間だけはあるので、自分で本当にできるのであれば、それに越したことはないとは思いますが。

また、分からないところだけを弁護士さんに依頼すると言っても、その場合に、どの程度の費用が掛かるのかもよく分かりません。

また、私に対しては、

「破産法や民事再生法をやると、お前の貯金やクレジットカードも没収される」

「お前の会社にも俺(主人)が破産法や民事再生法をしたことがばれてしまうので、今のうちに別れよう」

と言ってきています。

やはり、私の貯金やクレジットカードは没収され、私の勤務先にもばれてしまうのでしょうか?

その場合、離婚すれば、私の財産が没収されたり、私の会社にばれたりはしないものなのでしょうか?

【ご回答】

自分で手続きできるかどうかは、その人次第

お金がないので、破産ないしは個人再生の申し立て手続きをご自分でなさるということですね。

ご自分でなさることは、特に、法律で禁止されているというわけではありませんので、やること自体は可能です。

あとは、ご主人がどの程度できるかによりますが、それは、なんとも言えません。

それは、大工でもないけど、「私でも家は作れますか?」と大工に聞くようなものです。

その人次第です、としか言いようがないでしょう。

分からない箇所だけを引き受ける弁護士はいない

問題は、分からないところだけ、できないところだけ、弁護士に頼む、という点ですが、

そういう依頼の受け方をするところは、おそらくですが、ないんじゃないでしょうか。

例えば、申請書書類が10ページあるとして、

「3ページ目のこの部分と9ページ目のこの部分がうまく書けないので、そこだけお願いします」

って言われても、結局、ほかの部分も見ないといけないでしょうし、ほかの部分も間違っている、ないしは適切ではない、と気づいた場合に、

「そこは依頼されていないので、そこは修正しない」

と間違っていると分かっていながら、敢えて指摘しない、いうわけにもいかないですからね。

万が一、

「まあ、それでも、いいですよ」

って言う弁護士がいたとしても、全部を依頼する場合と比べて、そんなに費用は安くならないでしょう。

行政書士のことはよくわからないです。

司法書士か申請書類を作るというのはありますが、行政書士がそんな申請書類を作るというのはあまり聞いたことがありません。

いずれにせよ、司法書士にも行政書士にも、自己破産の申請や個人再生の申請の申請(申立)代理人としての資格はありません。

ですので、申請書類についてチェックしてもらって、何かアドバイスなり、指導・添削を受けることができるのか?ということになります。

それも、その行政書士次第です。

夫が破産ないし個人再生を行った場合の妻への影響

ご主人が言うには、

破産法や民事再生(個人再生)をやると、やった本人のみならず、その配偶者の貯金やクレジットカードが没収される

ということみたいですが、

妻(配偶者)のものは、妻のものですから、没収されるはずがありません。

ひょっとして、貯金に関して、本当は妻のものだけど、夫名義になっている、

なんていう特殊な場合ですと、没収というか、

「それが夫名義である以上は夫の財産である」として、破産財団に組み込まれる

ということはあるでしょう。

それは本当は妻のものである、と立証するのは容易ではないです。

ちなみに、破産財団に組み込まれる、というのは、要するに、そのお金が、

破産管財人の報酬や債権者への配当に回されるということです。

ですので、こういう場合でもない限り、没収されないので、別れる別れないを考えなくてもいいです。

夫の破産や個人再生が妻の勤務先にバレることはない

次に、夫が破産ないしは個人再生をすると、妻の勤務先にばれるのか、ということですが、

ばれません。

あくまでも別人格ですので、自己破産や個人再生の手続き上、妻の勤務先に何か連絡が行くということはありません。

ただし、妻が夫の債務(借金)の連帯保証をしていて、 債権者からその支払いを請求されたというなら、話は別です。

(そもそも、その場合には、妻も債務整理を考えないといけません。)

そうでなければ、バレる理由が考えられません。

ですので、このことを理由に離婚することを考える必要はありません。

自分の時間単価を知る

最後に、一言だけ言わせていただくと、自己破産にせよ、個人再生にせよ、それなりに大変です。

いろいろ調べたり、聞いたりしながら、手続きを進めていこうと考えているのかもしれませんが、そうすると、かなり時間を消費します。

しかも、弁護士に依頼していないということは、自己破産や個人再生を申し立ててその「手続き開始決定」が裁判所から出るまでの間、ずっと債権者からの督促は止まりません。

債権者の対応をしながら、自分で自己破産や個人再生を申し立ての準備をすることも大変ですし、裁判所の書記官からの補正指示に対応するのも特に、仙台地裁(仙台地方裁判所)の場合にはかなり難易度が高いと思われます。

失業中であるということですが、むしろ、働いて、債務整理の費用をためることを考えた方が現実的ではないですか?

~結局、ご主人自らが自己破産ないしは個人再生をできるかどうかは、分かりませんが、部分依頼はあまり期待できないと思います。ただ、あなた(妻)への影響(財産没収・勤務先にバレる)はないので、離婚を考える必要はありません。以上、弁護士(宮城・仙台)がご回答させていただきました~