~きわめて多い質問ですが、ブラックリスト(信用情報)との関係で、どの債務整理がいいのか?というご相談内容について、弁護士(宮城・仙台)がお答えします~
【ご相談内容】任意整理とブラックリスト(信用情報)について
カードキャッシング、銀行カードローン、サラ金で、借金が大体全部で500万ぐらいになってしまいました。
いろいろ、滞納しており、特に、サラ金からの電話の取り立てがきついです。
いよいよ、債務整理を考えなければいけない状況です。
債務整理ですが、任意整理がブラックリストの関係で、有利だと聞いたことがあるので、
個人再生法より任意整理を相談したいと思います。
いずれにせよ、給与もあるし、住宅ローンもあるため、破産は避けたいです。
任意整理だと、ブラックリストにはどのように載るのでしょうか?
また、破産・個人再生法の場合には、7年たつと、車や住宅ローンも含めて普通に生活できるようになる、
と聞きましたが、任意整理については、いつから普通に生活できるようになるのでしょうか?
【ご回答】
任意整理をするとブラックリストにはどのように掲載されるのか?
「任意整理がブラックリストにどう載るのか」というのは、
任意整理をすると、どのような形で信用情報に掲載されるか?ということです。
信用情報機関は3つありまして、それぞれ、フォーマットが違います。
株式会社日本信用情報機構(JICC)
まずは、株式会社日本信用情報機構(JICC)から見てみましょう。
★株式会社日本信用情報機構
英語表記 : Japan Credit Information Reference Center Corp.
略称 : JICC(ジェイアイシーシー)
会員は、貸金業法または割賦販売法に基づく登録事業者、信用保証業者、またはリース業者等です。
カードキャッシングやサラ金(消費者金融)はこちらが問題となります。
画像が小さくて申し訳ないのですが、
JICCの信用情報記録開示書ファイルD(借入情報を主とした情報)の見本です。
上記見本の「17」というのが、
【異動参考情報】(遅延等にかかわる情報や法的手続きにかかわる情報)で、
任意整理(債務整理)もここに記載されます。
そして、任意整理(債務整理)の場合には、
「お客様がご契約先に返済金額の減額等を申し入れた」ときから、5年を超えない期間記載され続けます。
株式会社シー・アイ・シー (CIC )
次に、CICです。
★株式会社シー・アイ・シー
英語表記 : Credit Information Center CORP.
略称 : CIC(シー・アイ・シー)
会員は、信販会社、百貨店、クレジット会社、リース会社、消費者金融会社、携帯電話会社等です。
カードキャッシングやサラ金(消費者金融)はこちらも問題となります。
JICCとCIC双方に加盟している会社は多いです。
画像が小さくて申し訳ないです。
CICの開示情報報告書の見本です。
上記見本の「4」というのが、【異動】の記載です。
【異動】の記載は、
1) 返済日より61日以上または3カ月以上の支払の遅れ(延滞)があるもの、あったもの。
2) お客様に代わって保証会社が返済したもの。
3) 裁判所が破産を宣告(破産手続開始が決定)したもの
があったときに記載されます。
JICCのように、「債務整理(任意整理)」というのがありません。
そして、下記のように、
『裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか?』
との質問(?)に対して、
『特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません。
CICに登録される信用情報は、消費者と当社の加盟会員であるクレジット会社等とのクレジットやローン取引に係わる申込内容や契約内容、支払状況などの客観的事実に限ります。また、CICに登録される信用情報には過払い金返還請求や、弁護士等が介入した旨をコメントするような登録項目はありません。』
との回答(A)がなされております。
ただし、すでに述べた通りで、延滞が61日以上または3カ月以上ある場合には、
【異動】と記載され、
かかる【異動】情報(記録)は、延滞などが解消した後も、
情報の保有期限、すなわち、契約終了後5年間は記録が続きます。
そして、任意整理の場合については、契約終了とは、要するに完済した日なのです。
つまり、CICで考えますと、例えば、
・一定期間の延滞をしてしまって、【異動】情報(記録)が載った。
・その後、弁護士とか司法書士を介入させて、任意整理をした。
・支払い期限が長い方がいいので、例えば、5年間の支払い期間とした。
・5年間かけて支払いを行い、ようやく支払いを完了した(完済した)。
とすると、そこ(契約終了)から、5年間、
【異動】情報(記録)が載り続けることになるのです。
結構長いですよね。
全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
次に、全国銀行個人信用情報センターを見ます。
★全国銀行個人信用情報センター(あるいは、「全銀協」)
会員は、銀行等です。
銀行系カードローンはこちらが問題となります。
基本的には、CICと同じです。
つまり、債務整理(任意整理)を行ったという情報は登録されないですが、延滞は当然ながら登録されます。
具体的には、「6」の「返済区分」が「延滞」になります。
なお、「延滞」とは、
「お約束の返済日が過ぎても、一定の期間ご返済をされなかったことを示します」
ということで、具体的に、何日過ぎたら「延滞」とするという定義がありません。
「延滞」情報は、延滞解消日から5年から載り続けます。
「延滞解消日」とは、すなわち、任意整理の場合には、それを完済した日になります。
以上、どうでしょうか?
任意整理とブラックリストのまとめ
「任意整理がブラックリスト上有利だと聞いたことがある」みたいですが、
端的に言って、信用情報の観点からすると、CICでも全銀協でも、
任意整理が終了して、そこから5年ということになるので、
任意整理での返済期間が3年なら、3+5=8年間
任意整理での返済期間が5年なら、5+5=10年間
任意整理での返済期間が7年なら、7+5=12年間
(ここまで来ると、破産の官報掲載情報の10年間よりも長い@全銀協)
信用情報上、【異動】ないし【延滞】になったままですが、何が有利なのか全く分かりません。
破産や個人再生に比べると、たしかに、利息がつかないとは言え、きちんと返しているので、
有利になったような気がするのかもしれませんが、
上記の通り、【異動】ないし【延滞】になったままの期間が長く、実際上、特に有利とはいえないでしょう。
~この手のご相談については、破産だと7年だとか、破産より任意整理の方がよいとか、根拠不確かな情報が氾濫しておりますが、いったいその情報はどこから出ているのかきちんと確認してから行動しましょう、というのが弁護士(宮城・仙台)からのアドバイスになります~