~個人再生の申し立て手続きは、代理人として弁護士を依頼したり、書類作成を司法書士に依頼するとかいうことをしなくても、自分自身でもできます。ですが、大変です。しかも、必ず再生委員の弁護士がつくので、その再生委員との相性や、やり取りによっては、手続きの進行が困難に感じられるかもしれません。そんな場合に生じる疑問や今更ながら弁護士を依頼する否か等について、弁護士(宮城・仙台)がアドバイスをします~
【ご相談内容】個人再生を自分で行うことについて
個人再生は、司法書士や弁護士に頼まなくても自分でもできると言われたので、何度も何度も、裁判所の窓口に足を運んで、書記官という若い男性の方から、いろいろ教えてもらいながら、手続きを進めようとしています。
そして、ようやく、先日、個人再生の申請書類を作りおえて、必要な書類のコピーも全部整えて提出しました。
再生委員という弁護士の人がついて、その人の事務所に行ってまいりました。
ところが、私が提出した書類について、あそこがおかしいとか、ここが変だとか、言い出したので、
私は、
「全部、裁判所に言われてこうしているのにおかしいじゃないですか。」
「きちんと、書記官から先生に連絡とか引継ぎってされているんですか?」
と言ったところ、
その再生委員の弁護士から、
「直さないというのであれば、手続きが進まなくなりますよ。」
と脅されました。
どうにも、納得がいかないし、感じも悪かったので、再度、裁判所に行って、例の書記官にこの件を話したところ、
「裁判所は個別の案件についてアドバイスするところではないです。」
「再生委員の先生を選ぶことはできません。」
「変えることもしません。」
「再生委員の先生の言うことを聞いた方がいいと思います。」
「納得いかないとか、分からないということであれば、あなた自身が弁護士を探して相談された方がいいです。」
と急に態度がそっけないというか、冷たくなりました。
ですが、裁判所や再生委員を責めるわけにもいかないので、再生委員に電話して謝罪し、
「そういえば、未だに債権者から手紙やら書類が来るので、もう再生手続きが始まったのだから、(再生委員の)先生から、もう、本人(私)に連絡しないように言ってください。」
と腰を低くしてお願いしたところ、
「私はあなたの代理人ではないので、そういうことはしません。」
「あなたには、個人再生申し立てのための弁護士がついているわけではないので、たとえ、個人再生の手続きが始まっても、債権者からあなたに連絡が行くのは止まりません。」
と言われてしまいました。
本当にそうなんでしょうか?
個人再生や自己破産を申し立てた後は、督促してはいけないことになってると聞いたことがあるのですが。
それから、再生委員というのは、私の代理人なのではないとすると、いったい何なのでしょうか?
それから、裁判所の書記官も市民の窓口なのではないでしょうか?
今から、仮に、私に弁護士をつけるとしても、最初から頼んだのと同じ弁護士代金がかかるのでしょうか?
【ご回答】
個人再生における再生委員とは
再生委員というのは、あなたの再生手続きがきちんと要件を満たしており、進めてよいかについて、むしろ、裁判所側の目線で、いろいろチェックや指導をする立場の人間です。
言い方は微妙になりますが、別に、あなたが再生計画の認可を受けることができるようにするために、いろいろ活動することを使命としているわけではないのです。
(逆に、あなたと利害が対立するわけでもありませんので、誤解なきように)
「それはおかしい。
「再生委員の費用は私が払っているんだから、私が雇っているようなもんじゃないか。」
とおっしゃる方がいらっしゃいます。
お気持ちは分かります。
ですが、制度上は、再生委員の費用は、あなたが、一旦、裁判所に支払って、それを裁判所が支給するというのが、法的な流れになるので、(現実には、直接支払いますが)再生委員は、あなたから報酬をもらっているという感覚はないのです。
あなたを監督してやろうという意識でしょうし、むしろ、再生委員に任命してくれた裁判所に雇われているという意識が高いのです。
なので、意識の面でも、あなたの代理人でありませんので、あなたに代わって、債権者に連絡するなどということはあり得ません。
個人再生手続きを自分でやるなら債権者対応も自分でやる
それに、債権者からの直接の連絡があなたのところに来るという点ですが、それは、その再生委員が言っている通りで、あなたに代理人がついていない以上は、債権者はあなたに伝えたいことがある場合、あなたご本人しか伝えるところ(窓口)がありません。
例えば、債権者(銀行、カード会社、消費者金融等)からは、返済してください(督促)という以外にも、
・債権者が合併して名前が変わりました。
・債権者が保証会社から弁済を受けたので、これからは、保証会社から督促が行きます。
・債権者が債権を別の会社に譲渡しましたので、これからは、譲渡先の会社から請求されます。
・車を引き揚げたので、差し引きの残債務は○○円になります。
などなど、個人再生手続きが始まってからでも、いろいろお知らせすることはあるものです。
個人再生や自己破産の手続きが始まった以降は、督促できなくなる、というのは、
ひょっとすると、
個人再生や自己破産の手続きが始まった場合には、強制執行をすることができなくなる、
ということと
勘違いしてはいませんか?
たしかに、個人再生や自己破産の手続開始決定がなされれば、以降は、原則として、強制執行はできなくなります。
強制執行、具体的には、預金や給与の差し押さえなどは、個人再生や自己破産の手続開始決定がなされれば、それ以降はできなくなります。
取り立てストップ広告の本当の意味
よく、司法書士や弁護士の広告等で、
「司法書士が取り立てストップ!」
「弁護士が介入すれば、すぐに、督促がやみます!」
などという文言を目にするかと思いますが、これは、取り立てや督促自体がなくなったわけではなく、取り立てや督促をする先(窓口)が司法書士や弁護士になったというだけです。
お金を借りている(返済が遅れている)人の所に、直接の連絡がなくなるので、債権者が取り立てや督促を断念したのかと勘違いしている方がいますが、そうではありません。
ちゃんと、債権者からの連絡は、司法書士や弁護士になされているのです。
裁判所の手続案内窓口は市民の窓口?
あとは、「裁判所の書記官も市民の窓口なのではないでしょうか?」ということについては、裁判所の広報にお尋ねになるのがよろしいかと思います。
おそらくは、
「裁判所は一般的な手続きのご案内をするだけで、個別具体的な案件についてはお答えしておりません。」
というようなことを言うのではないかと思います。
弁護士を個人再生手続きの途中からつけた場合の費用
「今から、仮に、私に弁護士をつけるとしても、最初から頼んだのと同じ代金がかかるのでしょうか?」
というご相談については、直接、依頼を検討している弁護士にご相談ください。
ちなみに、うちの事務所の場合には、答えはYESです。
「最初から頼んだのと同じ代金がかかる」です。
ひょっとすると、
「ここまでは自分の力で書類を集めて提出までしたのだから、その分、値段は安くなるはずだ」
と思われるかもしれませんが、依頼者の方がご自身の独学でなされたのだとすると、それを再度、検討しなくてはいけないので、労力はさほど変わりません。
場合によっては、それを修正するのに、最初から、うち(弊所)で作った方が手間がかからなかった、ということも往々にございます。
ですので、4分の1までは自分でやるから、4分の1値引きとか、いうことはできないのです。
ちなみに言っておきますと、仙台地裁(仙台地方裁判所)の場合には、弁護士が申立代理人になる場合には、再生委員を付さない運用になっておりますので、再生委員の報酬分はかからないことになっております。
(※ 東京地裁(東京地方裁判所)は、全件、再生委員が就きます。)
ただ、もうついてしまっていますので、こちらもなかったことにはできません。
~個人再生手続きを自らの時間と労力で行っていこうかと考えている方には若干の参考になるかもしれません。以上、弁護士(宮城・仙台)からのアドバイスになります~