夫が家から出ていき、私と子供に家を出ろ!と。個人再生できますか?

~住宅ローンがらみの離婚問題。極めて多い類型のご相談です。名義が旦那のままで、他方で、住んでいるのが奥さんと子供。旦那は住んでもいない住宅ローンをこれ以上支払いたくない。なんとか、家から出て行ってくれと請求してきますが、それに対して、奥さんとしてはどう対応すればよいのか。住宅ローンと個人再生に関する誤解も含めて弁護士(宮城・仙台)がお答えします~

【ご相談内容】別居中の自宅の名義変更及び住宅ローンについて

夫は他の女性と交際し始めて、家を出て行ってしまいました。

以降、住宅ローンが残っている家には、私と子供の2人で暮らしています。

夫は手取りが35,6万円で、住宅ローンを夫が支払うほか、毎月10万円をこちらに送ってきていました。

しかし、夫は、

「家は売りたいから早く出ていけ!」

と言い出し、

「家を売らないのであれば、毎月の10万円の生活費の送金をとめる」

と脅されています。

私が、いくら夫に話しても埒があかないので、夫の両親(義父・義母)に対して、

「私も子供たちも家を出たら行くところがありません。」

「お義父さま、お義母さまにとっての孫たちを見捨てないでください!」

とお願いしましたが、

逆に、

「あんたも働いて、息子(旦那)の借金の返済を助けないのか?」

「あんたがそんなんだから、息子は他の女のところに行ったんだ。」

「(私の両親からもらった)あんたの貯金を出しなさい!」

などと言われています。

離婚のことも、もちろん考えていますが、今は、夫の借金の返済のために、私がどれだけ協力すべき義務があるのか、そればかりが気になっています。

また、夫が再生手続きというのをとって、住宅を維持してもらうことはできないのでしょうか?

【ご回答】

結婚後に購入したのなら、住宅は夫婦共有財産

まず、住宅ローンの残債(あとどれくらい住宅ローンが残っているか)を調べてみてください。

住宅ローンの残額が住宅を売却した(売却する)値段よりも下回っている場合には、余剰がでます。

(つまり、住宅を売って、住宅ローンを返してもお釣りがでる状態です。)

そして、結婚後に住宅を購入したのであれば、住宅(財産)の半分はあなたのものです。

いわゆる夫婦共有財産というやつです。

しかも、旦那が女を作って家を出ていったのであれば、婚姻関係を破綻させたのは、旦那の責任ですので、離婚となれば、離婚慰謝料を請求することもできます。

もちろん、子供もいるわけですから、旦那には、子供の養育義務があり、養育費を支払わなければなりません。

具体的な数字が分かりませんが、こういう諸々の旦那に請求できる金額をまずは計算してみてください。

そして、あとは、あなたがその家に住み続けたいかどうかをはっきり決めてください。

自宅とローンの名義変更をすることはできるか?

家に住み続けたいということであれば、家の名義をあなたに名義変更したとしても、原則として、今後はあなたが住宅ローンを支払わなければなりません。

(もちろん、旦那が住宅ローンを支払い続けるというのであればそうしてもらいたいですが、ご相談の内容からするとそのような合意をすることはほぼ不可能でしょう)

加えて、住宅ローンを、あなたに名義変更できるかというと、単に、今の住宅ローン会社(銀行とか住宅金融支援機構とか)に対して、あなたに名義変更するよう求めても、相手がそれに応じることはありません。

それではどうするかというと、あなたが新たに住宅ローンを借りて、旦那の持ち分も含めて、新規にローンの組みなおしをするしかないのです。

ただし、未だお仕事をされていないということであれば、銀行が新規ローンの借りいれを認めない可能性が高いです。

そうすると、今度は、旦那の住宅ローン名義のまま、その分をあなたが支払うという合意ができないかが、問題となります。

もし、旦那の側がそれでもいい(旦那名義の住宅ローンが残ってもいい)、と言うのであれば、その形もとることはできます。

他方、

「そんなことはできない。」

「住宅ローンを払ってくれなかったら、自分に支払いの督促が来るから困る。」

と言って、拒否してきた場合には、その形をとることもできなくなります。

いかがでしょうか。

基本的に、家を手放しても、どうせ、どこかを借りれば家賃を支払わなければならないのだから、住宅ローンを支払ってでも住み続けたい、という考えもあるでしょうし、多額の住宅ローンを負債として抱えるのは不安だということもあるでしょう。

もちろん、逆に、

家の名義は変更しないで、住宅ローンを支払い続けてくれ

ただし、子供が成人になるまで住み続けさせろ

という請求もあり得ますが、旦那の側が住んでもいない家の住宅ローンを支払い続けるということはしないでしょう。

仮に、支払ってくれても、その分、養育費を削って来るでしょう。

結論としては、どの程度、現在の住宅にどれだけ住み続けたい気持ちが強いかどうかによります。

家を売却しても借金が残る場合

次に、家を売却してもオーバーローンになる(家の売却代金だけでは住宅ローンの返済に足りない)場合、その残額は、旦那の借金として残ります。

その借金をあなたも支払わなければならない、ということはありません。

あなたに支払い義務はありません。

あくまで、借金の返済義務を負うのは旦那のみです。

仮に、離婚した場合でも、その住宅ローンの残債務をあなたが支払うことにはなりません。

ただし、逆に言えば、財産分与でもらう分もないということにはなります。

親からもらったお金を夫の借金返済に充ててはいけない

なお、あなたが親からもらった貯金があるということですが、そういう財産は「特有財産」として、財産分与の対象にはなりません。

まして、旦那の借金の穴埋めに充てる必要はありません。

個人再生は住宅ローンを圧縮する手続きではない

最後に、

「夫が再生手続きというのをとって、住宅を維持してもらうことはできないのでしょうか?」

という意味についてですが、もし、住宅ローンがすでに遅滞しているなど、住宅ローンのリスケを旦那が希望しているというのであれば、個人再生手続きを使う意味がありますが、そうでない場合には、あえて個人再生手続きをとる意味がありません。

個人再生手続きというのは、『住宅ローン以外の』借金を一部変減額して、分割払いで支払う手続きです。

したがって、個人再生手続きをとったとしても、住宅ローンは減額されません。

基本的には、決められた通り、住宅ローンを支払っていくしかないのです。

~以上、個人再生ないしは債務整理のお話と言うよりも、離婚問題についてのご相談ないしはご回答ということになってしまいました。たしかに、本件は、まず、離婚問題をどうするかをきちんと弁護士と相談しましょう、というのが弁護士(宮城・仙台)からのアドバイスになります~