個人再生や破産をしたらクレジットカードは無効?ないと困る場合は?

~いまは何でもカードの時代ですから、便利な世の中ですが、借金(債務)の整理をするとなると、クレジットカードは真っ先に問題になります。これを機会に現金払いでやっていこう、と切り替えるのも一つですが、身分証代わりにクレジットカードの提示を求められたりすることがあったり、海外のレンタカーやホテルでは、そもそもクレジットカードがないと車を借りられない、宿泊させてもらえない、ということもたしかにあります。どういう仕組みでクレジットカードは停止になってしまうのか?についてのご説明を弁護士(宮城・仙台)が行います~

【ご相談内容】クレジットカードと破産・個人再生について

弁護士に頼んで借金の整理をしたり、個人再生が認められたり、自己破産したりした場合、手持ちのクレジットカードはすべて無効となり使えなくなってしまうのでしょうか?

そういうのは継続して使用できるのでしょうか?

それとも、破産以外の整理の方法や個人再生の場合には違うのでしょうか?

勤め先が海外出張が多くて、クレジットカードがないと、ホテルに泊まることすらできません。

他方で、今回、借金の後始末を弁護士に依頼したとは言っておらず、言えばおそらくクビになってしまいます。

【ご回答】

債務整理をするとクレジットカードが一斉に使用停止になるわけではない

債務整理をすると、クレジットカードが使用停止になるということを心配されている方が多いですが、他方で、債務整理の受任の通知を弁護士事務所から出しても、まだクレジットカードが使える場合もあり、どうしてこのようなことが起こるのか、司法書士や弁護士でもこの状況を正確に説明できておりません。

まず、そもそも、そのクレジットカード会社そのものに対して、債務整理の受任の通知(これを「受任通知」あるいは「介入通知」と言います。)を出す場合、つまり、例えば、楽天カードを使用しており、楽天カードの支払いがもう出来ないので、債務整理をしたいと通知を出しますと、当該楽天カードは使用できなくなります。

それは、ある意味、当然であります。

それから、そもそも、債務整理の通知(受任通知、介入通知)などをしなくとも、支払いが滞った場合、この場合も当然ながら使用停止になります。

ですが、そうでない場合、つまり上記の例で、楽天カードについては使用できなくなるのは当然として、その他に、ヤフーカードを持っており、それについては、支払いも滞っていないし、債務整理の通知(受任通知、介入通知)もしていないという場合、使用が継続できる場合があります。

よく、債務整理をするとブラックリストにのるから、それ以降はクレジットカードが全部使えなくなる、ということが巷で言われており、その説明は大体正しいのですが、正確ではありません。

例えば、支払いが滞った場合や債務整理の通知(受任通知、介入通知)をした場合には、支払い停止という扱いになり、その事実が信用情報機関(クレジットカードの場合には、主に「CIC」(株式会社シー・アイ・シー(Credit Information Center)等)に登録されます。

従いまして、債権者に含まれていない会社のクレジットカードがつかえなくなるかどうかは、

1)その信用情報の登録がなされたこと(この状態を、「ブラックリスト」と言います)をクレジットカード会社が参照するかどうか、

2)どのタイミングで参照するか

により、

①当該クレジットカードの使用停止がなされるかどうか、

②いつ使用停止にされるか、

に関係してくることがお分かりいただけると思います。

なぜ支払い事故を起こしていないクレジットカードも使用停止になるのか?

ちなみに、当該クレジットカード自体の支払いを遅延したり、当該クレジットカード自体の債務整理をしているわけではないのに、当該カードが使用停止にされたり、無効にされる根拠は何かというと、それは、クレジットカード会社自体の約款(カード会員規約)になります。

ヤフーカードの場合を例にとるとには、ヤフーカード自体の支払いが滞っていたり、ヤフーカード自体の債務整理をするわけではないにも関わらず、使用停止にされたり、カードを無効にされたりする根拠が、以下に示されております。

『(参考;Yahoo!カード会員規約)

会員が次のいずれかに該当した場合、当社は、会員に通知することなく、カードの利用を停止し、または会員資格の取消、その他の必要な措置をとることができ、これらの措置とともに加盟店に当該カードの無効を通知し、また、加盟店、現金自動貸付機(CD)または現金自動預払機(ATM)などを通じてカードの回収をすることができます。なお、次のいずれかに該当し、会員がカードを利用できないことにより会員に生じた損害について、当社はいかなる責任も負わないものとします。また当社に損害が生じたときは、会員がその責任を負うものとします。

(1)会員が当社に届出るべき事項に関し届出を怠ったまたは虚偽の申告をした場合。
・・・・・

(5)本人会員の信用状態が著しく悪化したと当社が判断した場合。』

以上の「本人会員の信用状態が著しく悪化したと当社が判断した場合」というのが、ヤフーカードの場合の使用停止等の根拠になります。

信用情報機関で支払い事故が登録された= 信用状態が著しく悪化した

ということです。

どこのクレジットカード会社も似たような条項を持っています。

従いまして、例えば、なんらかの経緯で、信用情報を参照したところ、他のクレジットカード会社の支払いに関して、債務整理を行うことにより支払い停止等になっている場合には、「本人会員の信用状態が著しく悪化した」と判断できますので、使用停止等ができることになります。

信用情報の照会はどのようになされるか

以上の通りですが、「本人会員の信用状態が著しく悪化した」などというのは、自分の会社が発行しているクレジットカードについての支払い遅延の問題でも生じない限り、例えば、毎日、何度も全会員の信用情報を参照するなどということは到底できません。

あるとすれば、クレジットカードの有効期限の更新の場合に、信用情報を参照するということはあると思われます。

ただ、その場合ですら、信用情報の参照は行わず、自社の返済履歴等だけで判断して、新しいクレジットカードを参照するというような運用の会社ですと、新しいクレジットカードが届き、使用できてしまう、ということがあるかもしれません。

いずれにせよ、使用停止等になるかどうかは、そのクレジットカード会社の信用情報の参照がいつ行われるのかという社内の運用によるところが多いので、必ず、

「その会社のクレジットカードさえきちんと支払っていれば、安心して使用し続けられます」

ということも言い切れません。

これは、破産(自己破産)のみならず、個人再生でも、各クレジットカード会社との任意のリスケ交渉(いわゆる任意整理)でも、異なるところはありません。いずれも、「本人会員の信用状態が著しく悪化した」と言えることに変わりはないのですから。

~というわけで、債務整理をしても、クレジットカードが使える、使えてしまう、という状況があるのも、また事実なのですが、それはそれで問題なのです。任意整理であればまだしも、これから、自己破産の準備をしようとしているときに新たにクレジットカードを使って借金を増やしてしまうと免責が下りない可能性がでてきますし、個人再生の場合であっても、その債権が再生の対象とならない(減免されない)、あまりにひどいと申立が棄却されるということもあり得ます。少なくとも、清算価値に組み入れられて、借りた分以上の返済を求められるのは間違いないでしょう。ホテルの身分証代わりに提示して、支払いは現金で行うなどの工夫をしてもらいたいものです、というのが弁護士(仙台、宮城)からのお願いです~