~競売のイメージは人それぞれかもしれませんが、中には、「家が競売になる」って聞くと、たくさんの男の人が家にやってきて、なんか家に差し押さえの紙を張り付けるみたいな怖ーいイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。ですが、そういう感じではありません。最初は、裁判所から「不動産競売開始決定」という通知が来るところから始まります。
今回は、競売手続きの進み方の概要とその後の借金の整理について、弁護士(仙台、宮城)が基本的なところをポイントを選んでなるべく分かりやすくご説明したいと思います~
【ご相談内容】競売手続きの流れと競売開始決定後の個人再生について
住宅ローンが払えなくなり、とうとう、代位弁済がなされたという通知が来てしまいました。
さらに、先月、仙台地方裁判所から競売開始決定なる書面がとうとう家に来たのです。
ですが、そのあとは、あまり何も変わらず、特に、誰からも出ていけと言われていないので、住み続けています。
もちろん、このままずっと住み続けられるとは思っていません。
今後、この家、私の借金はどうなるのでしょうか?
それから、これで私は何もしなくても借金の整理は勝手にされるのでしょうか?
もう、債権者から給与が差し押さえされるとかは、心配しなくてもよいでしょうか?
加えてですが、今更、民事再生手続きとか、個人再生手続きとかで、ある程度の債権額を支払って、家を維持出来たりとか無理ですよね?
【ご回答】
競売のイメージと実際
競売のイメージとして、何かたくさんの人がやってきて、家を差し押さえて、家を追い出される感じのイメージをお持ちの方が少なからずいらっしゃるようです。
ですので、実際に競売されるという事態に遭遇しても、
誰も押しかけてこず何やら静か
何が起こっているのか分からない
家に張り紙をしに来ない
なぜだろう?
本当に競売手続きが進んでいるのだろうか?
と疑問に思い困惑する方も多いようです。
競売手続きの進行
競売手続きは、まずはスタートは競売開始決定がなされることから始まります。
開始決定後さほど時間を置かずに、執行官から照会文が来るはずです。
それから1か月ほどして、執行官と評価人が家に来ます。
いろいろ写真を撮ったり、近所と土地の争いがないか、とか、土地の所有者はどうかとかを質問をしてきます。
物件自体の評価や調査のみならず、関係各所に対しても照会を行います。
そして、「現況調査報告書」、「評価書」が作成され、一般に公開されます。
それを見て、一般の人(もちろん多くは業者ですが、一般の方の参加も最近はかなりあるようです)が、その物件の入札に参加するかどうか、入札するとしていくらで入札するかを決めます。
現地を視察する人も出てきます。
さらには、今更ながら、
「競売だと安くしか売れませんよ。」、
「競売だといつ出て行けって言われるか分かりませんよ。」、
「競売だと引越し代がもらえないですよ。」
などと言って、
「今からでも遅くないから、うちに任せて任意売却しませんか?」
と声を掛けてくる(訪問してくる)業者も出てきます。
こういう感じになってくると、さすがに、
「ああ、競売になってしまったのだなあ」
という実感が湧いてきます。
それで、その後に、入札(開札、落札)が行われると、あなたの家はその最高額入札者のものになります。
競売で落札された後の処理
落札によって、たしかに、あなたの家は第三者に売却されてしまいました。
そんなわけですから、その売却代金が入ってきて、借金の返済に充当されます。
ですが、その売却代金が借金の全額返済に満つるとは限りません。
具体的に言うと、2000万円住宅ローン残債務があり、競売の落札代金の最高額が1500万円であったとすると、やはり500万円はローンが残ってしまいます。
ですので、しばらくすると、保証会社から、
「残債務についてはご返済はどのようにお考えですか?」
と照会が入るようになります。
そして、それでも払わない(払えない)でいると、そのうち、訴訟が起こされます。
そして、支払い命令(判決)が出て、それでも払わない(払えない)でいると、ひょっとしたら、給与の差し押さえもあるかもしれません。
ですので、基本的には、残った借金についても何らかの整理をしないといけません。
任意整理なのか、自己破産なのか、個人再生なのか、
を残債務の額と収入状況に応じて検討し、対応が必要になります。
ただし、結構な確率で、保証会社は、サービサーに残ローンの債権を売ってしまいます。
過去の例には、そのサービサーとの交渉で残債務の金額からすると、格安・激安の金額で和解できたという例もあります。
ですが、そのような例は債権者(サービサー)側で早く処理したい等の事情があるなど、タイミング等の問題でもありますので、あまりにその点を期待しすぎてもいけません。
競売開始決定が出されても個人再生ができるか
最後に、競売開始決定が出た段階で、今から、個人再生を申し立てて、住宅が維持できるか、ということについては理論上は可能です。
ただし、保証会社の弁済後6ヶ月以内に個人再生を申し立てることが必要です。
”保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第204条第1項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。”
そして、それと同時に、競売の中止命令の申し立てをすることにより、一定期間、競売の進行を停止することができます。
そして、その後に、金融機関(銀行、保証会社)と協議をして、再度、住宅ローンを契約して、その内容を取り込んだ再生計画を裁判所に提出して認可を得ることにより、従前の状況に復帰(巻き戻し)することができます。
つまり、保証会社の代位弁済はなかったこととされるのです。
”住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合において、保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行していたときは、当該保証債務の履行は、なかったものとみなす。ただし、保証会社が当該保証債務を履行したことにより取得した権利に基づき再生債権者としてした行為に影響を及ぼさない。”
ですが、文章にすると簡単そうに見えますが、とてもハードルは高いとお考え下さい。
金融機関や保証会社がそれ(巻き戻し)においそれと協力してくれません。
勝手に、住宅ローン条項を作って裁判所(再生委員)に提出してしまうということもできなくはないですが、裁判所から履行可能性をかなり厳しく問われることになります。
なにせ、尋常一通りでない努力が必要ですが、やると決めたら、覚悟を決めて臨んでください。
巻き戻しは、できないとは言いませんが、当事者(依頼者)自身が、金融機関との協議において、やたらと、あれは無理、これも難しい、と言っていると、
「それほど自宅のことにはこだわっていないのではないか?」
「本当はもう諦めているのではないか?」
と思われてしまいます。
~競売開始決定がなされてから、個人再生手続きを申し立てるということは、一旦、競売開始決定をストップさせて、その間に、保証会社と協議して、再度、住宅ローンを銀行に戻してもらって、新たな約定で、住宅ローンを再開させるということですが、なかなか容易な話ではありません。保証会社が普通、応じません。しかも、債務者側もある程度まとまったお金を準備するとか、求められた書類は可能な限り迅速かつ誠実に準備するなど尋常でない努力が求められます。過去に2件ありましたが、1件はうまくいきましたが、1件は話になりませんでした。
今回は、競売の概要と借金の整理について、弁護士(仙台、宮城)からのお話でした~