~FX取引の破産法における免責不許可該当性について弁護士(仙台発)がご相談内容にお答えします~
【ご相談内容】FXが賭博にあたるのか?について
FXはギャンブルって言われましたが、一応、まともな仕事と思ってやっていたんです。
FXの専業トレーダーをやっています。
(というかやっていました。今は資金がないのでできてません)
しかし、どんどん目減りが続いて、資金が足りなかったので、日本政策金融公庫に運転資金を借りに行きました。
ですが、私のような商売は、そもそも融資の対象外だと言われて借りれませんでした。
そこで、仕方なく、いわゆるカードローンやキャッシングを使うようになりました。
しかし、それらの返済にあてるのが目一杯なのと、返済前にもう少し、大きくポジションをとりたいと思ってしまいました。
そこで、少し、返済を後らせて勝負したりしていたら、さらに、借金が増えてしまい、消費者金融からも借りるようになってしまいました。
そして、先日、強制ロスカットにあってしまい、すべて手仕舞いになってしまいました。
資金もなく、FXトレードも続けられないので、先日、弁護士事務所に相談に行ったら、
「FXの借金はギャンブルでできた借金と同じ。」、
「免責不許可事由となって、免責は認められない。」、
「つまり、破産しても借金はなくならない。」、
ということになるので、個人再生を勧められました。
ですが、もう、手元資金がないので、FXの仕事はできません。
つまりは、
「これからは地道な仕事について、その給与の範囲で個人再生をするべきだ」、
と言われました。
もちろん、借金を返せない立場なので、とやかく言える立場ではないです。
ただ、FXトレーダーで仕事をしている人は、
・我々みたいにフリーでやる場合
もありますし、
・誰もが知っている上場企業、一流と呼ばれる企業内でトレーダーをやる場合
もあります。
それなのに、どうして、
「ギャンブルみたいなもんだから」、
「投機行為だから」、
と言われてしまうのでしょうか。
その弁護士さんにも聞いたのですが、
「とにかく、そういうなっていることだから」、
ということで、それ以上のお話はできませんでした。
【ご回答】
FX取引は全て免責不許可になるのか
FX=ギャンブル=免責不許可事由!?
大概の弁護士さんは判で押したように、FX=ギャンブル=免責不許可事由
と説明すると思いますよ。
まあ、そんなもんでしょう。
免責不許可事由については、破産法第二百五十二条に規定があって、そこには、
「第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」
となっているので、その個別の事件単位ごとに、何か免責の関係で問題がある場合には免責を許可しないのではなく、
該当する免責不許可事由がなければ、免責を許可しないといけない
のです。
わかりますか?
『厳密には、免責不許可事由に該当しないかもしれないけど、なんか感じとしては似たような事情なので、免責を許可しない』
ということはできないのです。
それで、破産法第二百五十二条を見ますと、その第四号に、
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」
というのがありますが、
お仕事でやっているFX取引や株取引が「浪費又は賭博」に当たるはずがないですよね。
そうだとすると、おっしゃる通り、大◎証券や野◎証券のトレーダーやみんな「浪費又は賭博」をやっているということになってしまいます。
「射幸行為」とは?
では、「射幸行為」なんですか?
「射幸」とは、辞書によると、
努力をせずに偶然の利益や成功をねらうこと。
と定義されています。
トレーダーによるFX取引って、
宝くじみたいに、ただ、やみくもに買って、上がる(下がる)のを待っているんですか?
そうではないですよね?
それが正しいかどうかは別として、いろいろな情報をもとに、
売ったり買ったりしているんですよね。
ですので、FX取引自体が「浪費又は賭博その他の射幸行為」とは言えないんです。
「いや、でも、その相談した弁護士さんがそう言っていた・・・」とか、
そういう話をしても仕方がないです。
FXと不当な財産減少行為
むしろ、免責不許可事由との関係で言うのであれば、破産法第二百五十二条一号に、
「一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」
というのがありますけど、その中の
「破産財団の価値を不当に減少させる行為をした」
に該当する、というのであれば、まだ分かります。
(「分かります」、というのは、個々の取引の態様により、そういう解釈の余地があるということです。)
「FX取引(外国為替証拠金取引)をしたこと」
とズバリ定義されているのならいざ知らす、そもそも、あなたのその取引が免責不許可事由を定めた条文に該当するのか、については、少なくとも、
「浪費又は賭博その他の射幸行為」
にはあたりません。
ただし、そのように捉えている弁護士が多いと思います。
FX経験者の自己破産申立て(実例)
以前、破産の申立のケースで、依頼者にFX取引の履歴があったので、その旨を記載して、
「ただし、『浪費又は賭博その他の射幸行為』にはあたらない、なぜなら・・・」
と申立書に記載したときには、書記官ないしは管財人から何か指摘があると思っていましたが、特に何もなく、普通にスルーされて終結したので、議論する場もありませんでしたが。
それで結論ですが、破産の免責の関係では、FX取引だからと言って、
『浪費又は賭博その他の射幸行為』にはあたらない
ただし、
『破産財団の価値を不当に減少させる行為をした』
に該当する余地はあり、それには、その不当性を判断するために、
・個々の取引のあなたのポジションの取り方
・突っ込んだ金額がいくらだったのか
・マージンコールやロスカットやどのようにあったのか
・自動売買だったのか(その信頼性はどのように判断したのか)
等を考慮して判断する、ということになります。
(いや、「免責不許可事由」にあたるかどうかだけを知りたかったんで、そんなどの条文のどの文言にあたるのかととかそんな難しい話されても・・・って感じですか?)
~以上、FX取引の破産法における免責不許可該当性についての弁護士(仙台発)の回答でした~