嫁の立場から破産や個人再生を勧める~親族の借金と相続放棄

~自分の問題ではないけど、近親者の借金問題は悩ましい。そんなご相談に弁護士(宮城県仙台市)が回答します。~

【ご相談内容】(義理の) 親族の債務の整理と相続放棄について

義父の借金(住宅ローンを含む。)に関するご相談です。

私も結婚するまで分からなかったのです。

私が結婚した夫の父親、つまり、義父のことです。

ものすごい借金を抱えていることが分かったのです。

とある学校の教員として定年を迎えたのですが、お恥ずかしなら、ギャンブル(特に、競艇)と外での飲み歩き(主に、スナック)で浪費して借金を重ねてしまったそうです。

夫もさすがに激怒しました。

「そんな恥ずかしい親父の顔も見たくないし、声も聞きたくない」

って言うのですが、この問題に、現実的に正面から向き合おうとはしてくれません。

私が

「個人再生とか債務整理とかあることを教えてあげたら?」

と何度か夫に促しましたが、

夫は、全く、聞く耳を持ってくれません。

私が

「せめて、安いアパートを借りてあげて、毎月の食費だけでも援助しようか?」

と気を回しても、

「余計なことするな!つけ上がらせるだけだ!」

と逆に私が怒鳴られます。

もし、義父が、このまま借金も返さず(返せないと思いますが)、

借金の整理もしないで、倒れてしまったりした場合には、長男である夫に

「借金を代わりに支払ってください」

などの連絡が来るようになったりするのでしょうか?

もし、義父が亡くなってしまった場合はどうですか?

夫には、弟(次男)もいるのですが、九州にいるという情報しかなく、音信不通です。

こんな言い方はなんですが、正直言って、義父が借金に追い詰められて、長男である夫のもとへ、

「助けてくれ!」

って来るのが怖いんです。

義父を引き取って同居するなんて考えられないんです。

【ご回答】

借金まみれの義父が亡くなった場合~相続の発生

先に、もし、義父が亡くなられた場合についてお答えします。

義父が亡くなられた場合には、もし、相続をするのであれば、借金(債務)についても相続することになります。

相続人資格を有するのがそのご兄弟お二人ということなら、2分の1ずつ借金(債務)の支払い義務を承継することになります。

ただし、ご主人も、そんな借金まみれの義父を相続することにあまり意義が見いだせませんでしょう。

ですので、通常は、相続放棄をすることになります。

相続放棄をすれば、借金(債務)の支払い義務も免れることになります。

相続放棄は自分だけでは危ない

留意すべきは、もし、お子さんがいらっしゃるのであれば、お子さんも相続放棄をしないといけないということです。

ご主人だけが相続放棄をすると、引き続き、お子さんが代襲相続してしまうので、その点はご注意ください。

ですが、それでお終いです。

おそらく、不動産については、競売がなされるでしょう。

借金まみれの義父が借金を返せない場合~親族としての対応

他方で、義父が、病気やケガで倒れてしまった場合については、まだ、義父が存命なわけですから、結論としては、借金の支払い義務も義父が負い続けることになります。

いくら親子だといっても、ご主人に支払い義務が回ってくるということはありません。

もっとも、このままでいくと、例えば、病気やケガで病院に運び込まれた時点で、連絡がつくご主人のもとに、病院から連絡が来ることは間違いないでしょう。

借金とは別の扶養義務の問題がある

また、義父が家を競売でうしなっていよいよ、住むところもないなどという段階に至れば、役所からも、ご主人の方に、

「子供なのだから、親を扶養する義務がありますよ」、

などという連絡も来るでしょう。

したがって、借金の支払い義務自体を負わされることはなくても、実の親子の縁を切る術が法的にありませんので、扶養義務という形で、ご主人がいろいろ影響を受けることはまず間違いないと思います。

援助するのがいいとは限らない

「じゃあ、住む場所だけでも手を差し伸べようか」、

とアパートを借りてあげても、今のような生活を改めないと、また、同じような状況になる危険性は大です。

その意味では、

・病院から連絡があろうが、

・家を競売でうしなおうが、

・役所から何かを言われようが、

極限まで無視し続けるというのもある意味一つの方法ではあると思います。

もし、仮に、家庭裁判所の審判などで、扶養義務を負わされるのであれば、それには従わざるを得ないのはその通りです。

ですが、それまでは、任意にしなければならないということもないです。

しかも援助したからと言って事態が好転するとも言えなそうですから。

もちろん、助けを求められても、

例えば、

「破産なり、個人再生なり債務の整理をすることが助ける条件だ」、

というのでもよいと思います。

基本的に、周りが心配して、破産がいいだの、個人再生があれば家に住み続けられるだの言っても、当の本人にやる気がなければ絶対にうまくいきません。

おそらく、個人再生は、住宅ローンを滞納していて、しかも、まじめに銀行に対応してなければ(してなさそうですし)難しいと思います。

~近親者の悩ましい借金問題のご相談に対して、弁護士(宮城県仙台市)からの回答でした。~