~破産や個人再生をするとクレジットカードはずっと持てないか?という質問は本当によくありますので、この際、整理して、弁護士(宮城・仙台)がお答えします~
【ご相談内容】自己破産・個人再生をした場合にクレジットカードが作れなくなる期間について
私は、多重債務(クレジットカードのキャッシング、時計のローン、車のローン、英会話の教材のローンなど)を抱えております。
先日、弁護士事務所にその整理の相談に行きました。
弁護士さんの言うところによりますと、
「自己破産か個人再生を選択した場合には、約7年ないしは10年、ローンを組めない」
「同じ期間、クレジットカードも持てなくなる」
ということでした。
私がふと、
「自分の蒔いた種ですが、クレジットカードも持てないのは辛いなあ」
と言ったら、弁護士さんから、
「そんなこと言っている場合ですか!」
「これからは一生、全部現金払いで生活しなさい!」
と言われてしまいました。
「約7年ないし10年」というのは、どこに書いてあるのか、何の法律で定められているのかが、自分なりに調べてみてもよく分かりませんでした。
もちろん、積極的に、クレジットカードを作る気はないのです。
今回きちんと債務整理をしたいです。
「クレジットカードが作れなくなるから債務整理をしない」
などと言ったつもりはないのです。
ただ、あの弁護士の方には多分、お願いしないと思います。
【ご回答】
クレジットカードが作れない期間を定めた法律はない
クレジットカードを作れない期間とかローンを組めない期間とか、そんなことを定めている法律なんてないのです。
ただし、ご存知でしょうが、クレジットカードを作成するには、クレジットカード会社の審査を通らなければいけません。
そして、クレジットカード会社が審査をする際、信用情報機関の信用情報を照会するのです。
そして、照会の結果、その人の信用情報に支払いを滞りそう登録されている場合には、クレジットカードを作ってくれないのです。
これが世に言う「ブラックリスト」です。
信用情報機関は3つある
ところで、信用情報機関は3つあるのですが、全てのクレジットカード会社が加盟しているのが、
株式会社シーアイシー、通称、CIC です。
したがって、クレジットカード会社は、クレジットカード作成の審査において、
CICの保有している信用情報に照会をかけます。
そこに、問題のある情報が載っていると、
審査が通らない=クレジットカードが作れない
ということになるわけです。
CICの信用情報はどのように登録されているのか
では、CICの信用情報がどのようになっているのか見てみましょう。
★CICの信用情報の見方★
上記がCICの開示報告書の見本です。
(ちっちゃくて見づらいと思います。すいません。)
《お支払の状況》という項目には、
「26.返済状況」
というのがあります。
そこに
【異動】
という記載がなされると、
これは、
(1)返済日より61日以上または3カ月以上の支払いの遅れ(延滞)がある(あった)
もしくは
(2)保証会社が代位弁済した
もしくは
(3)破産手続きの開始決定が出された
のいずれかがあったな、ということが分かるわけです。
いずれにせよ、貸した方にしてみれば支払い事故扱いということですね。
CICにおける「個人再生」の取扱い
ですが、個人再生(民事再生)に関しては、CICでは
『裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか?』
という質問について、
【特定調停や民事再生の申請および債務整理を依頼した事実に関するコメントは登録されません。】
との回答がなされています。
いますが、もう一度、【異動】の記載がなされる場合を思い出してほしいのですが、
(1)返済日より61日以上または3カ月以上の支払いの遅れ(延滞)がある(あった)
という場合には、【異動】扱いになるのです。
個人再生をなす場合には、多くの方が支払いができていない(返済が遅れている)状況が続いているのが通常ですので、
返済日より61日以上または3カ月以上の支払いの遅れがある場合
には、たとえ、破産でなく個人再生を選択しても、やはり【異動】になります。
他方、まれに、ぎりぎりまで、きちんと約定の返済日を守って返済し続けて、
「もう、来月から無理だ!」
と個人再生する方もいます。
その方は、CICの【異動】扱いにならないかというと、それでも、個人再生の申し立てから、終了(認可決定)までは、半年程度かかります。
そして、当然ながら、その手続きの期間中は、債権者に対する支払いは停止したままです。
つまり、個人再生手続をしている間に、
61日以上または3カ月以上の延滞→【異動】
になるのです。
それから、
《貸金業法の登録内容》という項目には、
「47.終了状況」
というのがあるのですが、例えば、破産手続きの場合には、最終的に、裁判所からの免責許可がおりると、支払い義務が免除されて、終了します。
そして、これを、
「法定免責」
と言います。
この「法定免責」の文字が信用情報に記載されるのです。
したがって、CICに照会をかければ、「ああ、この人は破産手続きをしたんだな」というのが分かります。
なお、個人再生というのは、借金(債務)のすべてが免責されるわけではありませんが、一部(8割前後)が免責されますので、その部分については、破産と同じ効果があります。
したがって、個人再生によって終了しても、やはり、「法定免責」と言えます。
ですから、厳密には、「法定免責」と登録されている場合には、
「この人は、破産か個人再生をした」
となるはずなのですが、CICは、法定免責は破産の場合だけをとっています。
いつまで信用情報に載り続けるのか?
以上、延滞による「異動」ないしは「法定免責」も、無限にCICに登録されているわけではありません。
クレジット情報(クレジット情報加盟会員と締結した契約の内容や支払状況を表す情報)
には、
【■お支払状況に関する情報】として、
報告日
残債額
請求額
入金額
入金履歴
〔異動(延滞・保証履行・破産)の有無〕
異動発生日
延滞解消日
〔終了状況〕
等が含まれているのですが、これら情報の保有されている期限は、
契約終了後5年以内
です。
破産や個人再生の手続きが開始すれば、当然、契約は終了しますので、そこから、
5年
で、一旦、信用情報はリセットされるはず・・・です。
自己破産で免責になったのに延滞のままになっている場合
ただし、債権者によっては、破産手続きの情報をつかんでおらず、
いつまでも延滞【異動】情報がのり続ける場合もありますが、
その場合には、情報が間違っているわけですから、きちんと訂正する旨の申し立てをすることができます。
ちなみに、以前、破産したAさんが本当に5年を経過後に、当事務所に電話をしてきて、
「あのう、破産の書類のコピーを送ってもらえませんか?」
「自分の記憶だと、もう消えているはずなんですけど」
と言われて、秘書が倉庫からAさんの書類を引っ張り出してきて、その書類を確認したら、やはり、Aさんの記憶の方が正しくて、AさんがCICに連絡とって訂正させました。
信用情報機関は相互に情報交換している
ところで、
信用情報機関は、3つあると言いましたが、
CICのほかに、
◎株式会社日本信用情報機構(通称、JICC)
※主に消費者金融系でその他、クレジット(CICと両方加盟している会社は多い)、リース、保証会社等
◎全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
※銀行系(アメックスは全銀協にも加盟)
という機関があります。
これら3機関は、
Credit Information Network(通称、CRIN:クリン)
というネットワークを通して、相互に、
各機関の延滞
代位弁済等の情報
および
本人申告情報の一部
を相互に利用することができます。
すなわち、どこか1つの信用情報機関に延滞・異動情報が登録されていると、例えば、CICにしか加盟していないクレジットカード会社に申込みをしても、その情報は分かってしまいます。
したがって、クレジットカードの審査は通らないということになります。
JICC の信用情報はどのように登録されているのか
そもそも、CICのみならず、JICCにも加盟しているクレジット会社は多いのですが、いずれにせよ(JICCに加盟していてもいなくても)、クレジットカード会社は、JICC上の信用情報を、照会することになるわけです。
★JICCの信用情報の見方★
JICCの信用情報記録開示書見本です。
これも小さくて申し訳ないですが、一番右欄に
「異参サ内容」欄
というのがあります。
破産だとか個人再生とかが気になる方は、まずは、ここを見ましょう。
「異参サ内容」欄 というのは、「異動参考情報」及び「サービス情報」と言って、
「異動参考情報」
は「遅延等にかかわる情報や法的手続きにかかわる情報」です。
具体的には、
延滞、元金延滞、利息延滞(お客様のご入金予定日から3ヵ月以上ご入金がされていない情報)
延滞解消(ご入金等がなされて延滞ではなくなった情報)
債権回収(ご契約先が強制執行や支払督促などの法的手続き等をとった情報)
債務整理(お客様がご契約先に返済金額の減額等を申し入れた情報)
その他、破産申立・特定調停・民事再生などがあります。
「サービス情報」
は名義注意・本人否認・死亡などです。
そして、
債務整理(お客様がご契約先に返済金額の減額等を申し入れた情報)
破産申立
特定調停
民事再生
などは、
《発生日から5年を超えない期間》
記録され続けます。
こちらは、CICと違って分かりやすいです。
全銀協の信用情報はどのように登録されているのか
次に、全銀協も見ておきましょう。
★ 全国銀行個人信用情報センター(全銀協) の信用情報の見方★
全銀協の開示情報報告書は2ページあります。
破産や個人再生の関係で重要なのは、2ページ目です。
(これも小さいですよね。申し訳ないです。)
この2ページ目に、【官報情報】という項目があります。
《官報公告区分》
として、例えば、
破産手続開始
や
小規模個人再生開始
などの情報が《事件番号》とともに掲載されるのです。
全銀協の場合、延滞等の取引情報は、
契約終了日ないしは延滞解消日から5年間
載り続けますが、
「官報情報」は、
10年間
載り続けるのです。
「うん?ということは、CRINによって、延滞情報が、3つの信用情報機関で交換されているから、
10年間、
破産ないしは個人再生があったことが分かるのかな?」
と一瞬思いますよね。
(CICないしはJICCに加盟している)クレジットカード会社が、全銀協から、官報情報を取得していればたしかにその通りです。
ですが、交換するのは、すべての情報ではなく、
各機関の延滞
代位弁済等の情報
および
本人申告情報の一部
を相互に利用するのです。
ここに、
「官報情報」
は含まれません。
ですので、10年間、クレジットカード会社がこの官報情報を照会することによって、審査を落とし続けるということは考えられません。
官報情報検索はしないのか?
他方で、官報情報検索サービス(https://search.npb.go.jp/)というものがあります。
これは、昭和22年5月3日の日本国憲法施行日以降、直近までの官報情報を検索できます。
ですので、この検索機能を使えば、
その人が過去に、破産ないしは個人再生したこと
を調べようと思えば調べられるのです。
そうすると、破産ないしは個人再生をすると、
その人は 無限に(永遠に)、 クレジットカードを作れないことになります。
ですが、上記のAさんは、VISAもMASTERもカードを持っています。
ということは、官報検索で永遠に調べ続けるという運用はしていないということが分かります。
カード会社によるのでしょうが、すべてのクレジットカード会社でそのような運用をしているわけではないことが分かりますね。
(Aさんが作ったカード会社は、すいませんが、ここではご紹介できません。)
結論としてですが、5年が一つの目安になると考えています。
それでもなんとかなる方法
ちなみに、クレジットカードの問題については、仮に、ご本人名義で審査が通らなくても、いくつかの工夫をして皆さん、なんとかしております。
1)会社を新設してその法人カードを持つ
2)奥さんのカードの家族会員としてカードを持つ
3)デビットカードをクレジットカード代わりに使う
と皆さんいろいろ工夫しております。
~以上、破産や個人再生とクレジットカード審査のご説明を弁護士(宮城・仙台)からさせていただきましたが、各社によって運用・審査基準は異なりますし、まことしやかに間違った情報が流れやすいので注意してください!~