公務員が連帯保証人として借金を負った場合、破産よりは個人再生?

~たとえ親族といえども連帯保証人になるというのは非常にリスクが高いものですが、断り切れないというのも事実です。また、公務員が破産できるか、個人再生ならどうかについて、弁護士(仙台 宮城)が回答します。~

【ご相談内容】被相続人の連帯保証と公務員の債務整理について

先日、父親が亡くなりました。

ですが、悲しくもなんともありません。

むしろ、アルコール中毒で散々家族に迷惑かけたので、本当にほっとしたという心境です。

また、これも、お決まりなのかもしれませんが、父親には遺産などは何もなく、あるのは借金のみです(これも「負の遺産」ですが)。

既定路線として、相続放棄をします。

ところが、問題は、私は全く知らなかったのですが、私の弟が父親の借金の連帯保証人にさせられていたのです。

大人しくて、人のいい弟なので、うまく言いくるめられてしまったのでしょうが、弟は公務員であるので、破産もできません。

『個人再生』という手続きがあると聞きましたが、そちらの手続きなら、公務員でも問題ないでしょうか?

また、そもそもの確認ですが、やはり、相続放棄をしても、連帯保証債務は逃れられないんですよね?

【ご回答】

被相続人の連帯保証をしている場合

通常は、被相続人に借金があっても、相続放棄をすればその借金の返済義務を免れることができます。

ですが、被相続人の連帯保証人になっている場合には、相続放棄をしても借金の返済義務を免れられないのです。

ですので、ご相談の点については全くその通りです。

免れられません。

相続放棄をして免れられるのは、父親自身の返済義務のみです。

父親自身の債務(主債務)と連帯保証債務は全く別個の債務なのです。

公務員は破産できないのか?

次に、「公務員であるので破産できません」という点なのですが、

国家公務員法第38条(欠格条項)にはこのように規定されております。

(欠格条項)
第三八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

一 成年被後見人又は被保佐人

二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

三 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

四 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十二条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者

五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

以上のように、欠格条項には、「破産」の文字はどこにも見当たりませんし、「借金」ないしは「債務」がどうとも規定されていません。

次に、地方公務員法16条(欠格条項)にはこのように規定されております。

(欠格条項)
第一六条 次の各号の一に該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。

一 成年被後見人又は被保佐人

二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

三 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

四 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第五章に規定する罪を犯し刑に処せられた者

五 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

ほぼ国家公務員と同じですね。

つまり、国家公務員であろうと、地方公務員であろうと、

何も根拠がないのに、欠格事由にあたるということはないのです。

どこから、公務員は破産すると辞めなくてはいけなくなるということが出ているのか分からないですが、結論として、破産手続きをとることは公務員の欠格事由ではありません。

公務員が破産すると職場に通知される?

「公務員たる者が破産したなんて職場にばれたら恥ずかしい」

たしかに、恥ずかしいかもしれませんが、一々職場に通知されるということはありません。

ですので「ばれる」機会というのが想定できません。

官報にのることはのりますが、それを日々チェックするような職場でもなければ、ばれることはありません。

そもそも、官報を日々チェックする職場ってそんなにない気がします。

ただし、こういうことは考えられます。

つまり、連帯保証債務を請求されているのに、これを無視し続けていると、ついには、裁判(訴訟)を起こされてしまいます。

判決(支払い命令)が出てしまいますと、もし、どこに勤めているかをその債権者が知っていれば、給与の差し押さえをしてきます。

このように、給与の差し押さえを契機として、職場に借金があることがばれてしまうということはよくあります。

だから、逆に言うと、いざというときに給与を差し押さえできるように、お金を貸す側の金融機関は、債務者や連帯保証人の勤務先を記入・記載させるのです。

だから、いくら連帯保証債務だからといって、何もしないで放っておくと危険なのです。

個人再生だったら職場にバレない?

なお、個人再生をすることも可能ですが、個人再生についても官報にのります。

ですので、その意味では、つまり、ばれるばれないの観点からは両者にあまり差異がないでしょう。

どうしても、官報に載ることを回避しなければならないということですと、任意整理しかありません。

つまり、原則として、債務の全額を長期の分割払いで返済する方法しかないです。

いくら返済期間を長くとったとしても、債務の金額が支払えないほど多額の場合には、それも難しいことになります。

自分のせいで借金を作ったわけではないので堂々とする

仮に、万万が一ばれたとしても、それは恥ずべきことでしょうか?

何も自分自身が浪費したりして借金を作ったわけではないのですし、身内(父親)にどうしても頼まれてなった連帯保証による結果なのです。

職場の人も同情こそするでしょうが、職場にバレたからと言って、それによって、何かの不利益を被るとは考えられません。

何度も言いますが、そもそも、すみやかに手続きを進めればバレる可能性もそんなにないわけです。

法的整理(破産・個人再生)をおすすめしたいところではあります。

~イメージからでしょうか?公務員が破産できないというのはよく聞く話ですが、その点についての弁護士(仙台 宮城)からの回答でした~