~倒産(破産・再生)したら、債権者は何をしてくるのだろうか?会社はその後どうなるのか?家は?子供の進学はどうなるのか?とイメージがつかめませんよね?弁護士(宮城・仙台)が経験をもとに解説!~
【ご相談内容】会社が倒産した場合の家族への影響及び債権者の動向について
父が社長をしている会社の件です。
私は、東京でサラリーマンをやっていたのですが、それを辞めて、父の仕事を手伝うために戻ってきました。
母も取締役役員になっていますが、やっていることは会社の経理のようなことです。
私は、現場監督などを主にやっています。
ここ数年、確実に、仕事が減ってきており、銀行からは、
「新規の融資は難しい」、
「折り返しもかなり厳しい条件になる」、
「連帯保証人を新たに立ててくれ」、
など言われております。
父と母とは毎日のように喧嘩しています。
喧嘩の発端は、母が「どうするの?」
と詰め寄るからですが、最後は、父が怒鳴りだして喧嘩になるだけです。
父ももう、どうしようもないのは分かっています。
給与はなんとか支払っていますが、現場でも
「この会社もやばいんじゃないか」
みたいに噂されています。
(さすがに、息子の私の前ではしませんが、いろんな方向からそういう話が聞こえてきます。)
顧問の税理士さんも、
「もうそろそろ、弁護士とも相談しておいた方がいいのでは?」
とアドバイスしてくれています。
ですが、父は、
「税理士はおとなしく、税金の申告だけしていればいいんだ!」
と怒鳴ってしまって、以降、税理士もしらけてしまっているようです。
会社が倒産したら、債権者が押し寄せてくるでしょうか?
会社が倒産するというのがどういうものなのかあまりイメージが持てずに困っています。
民事再生というは、倒産ではないのでしょうか?
プライベートでは、まずは、家がなくなると思いますが、すぐに、銀行に取られてしまうのでしょうか?
私は、またサラリーマンに戻るしかないですが、妹は、まだ高校生で、少なくとも高校は卒業させてやりたいのです。
できますでしょうか?
【ご回答】
会社が倒産すると債権者はどうするか
会社の業種によって、債権者の種類が異なり、債権者の動向も変わります。
現場監督をやるような業種ですと、多くの場合に、債権者が押し寄せてきます。
押し寄せてくる債権者というのは、例えば、
外注業者さん、
下請けさん、
協力業者さん、
材料屋さん、
など、非金融業者です。
あまり、銀行、信販会社、クレジットカード会社、消費者金融等の金融業者が押し掛けてくるというのは、ありません。
余談ですが、闇金業者も会社自体には、あまり姿を現わしません。
押し寄せるタイミングとしては、
支払期日に支払いがなされない場合、
または、
(弁護士に依頼してある場合)弁護士から、各債権者に通知が行った場合、
などがあります。
また、押し寄せられても、そもそも支払うお金がないため、支払いができないと説明するしかないのですが、そんな冷静な話では済みません。
事情を説明して納得して帰ってくれるということはなく、
「どうしてくれるんだ!」
「いつ支払ってくれるんだ!」
「何でこうなったんだ!」
「納得できない!」
「絶対、許さない!」
「詐欺だ!」
「こっちだって支払いがあるんだ!」
「俺らはどうやって生活すればいいんだ!」
と債権者も必死ですので、怒鳴ったりして、今後の会社の整理についての説明など、その場では聞いてはもらえません。
場合によっては、脅迫めいた言葉を言ったり、直接的に脅してきたりもします。
「今日のところはお帰りください」
と言っても、帰ってもらえず、結局、警察が出動という事態もあります。
ただ、これは、弁護士が現場にいる場合のケースですので、
弁護士がいなければ、もっと、ひどい状況であることも考えられます。
ただし、永遠に、こういう押し問答というか現場の混乱が続くわけではありません。
いつかは必ず収束して、次の段階に移行します。
現場の混乱から法的手続き(破産・民事再生)へ
次に、破産ないしは民事再生の手続きにのってスケジュールが動いていきます。
民事再生も倒産は倒産です。
ただ、
破産は、全く会社がなくなってしまう、
のに対して、
民事再生は、負債の一部をカットして、その会社を存続させてながら、残額を返済していく、
という点が異なります。
ただし、破産にせよ、民事再生にせよ、生きている(稼働している)会社の倒産処理は、費用も結構掛かります。
特に、法人の民事再生事件では、東京地裁(東京地方裁判所)を例にとると、
負債総額が
1億円以上5億円未満で400万円
5億円以上10億円未満で500万円
10億円以上50億円未満で600万円
を予納金(裁判所におさめるお金)の基準額とする運用がとられており、
弁護士費用もこれに加えてかかります。
ですので、費用がなければ、きちんとした倒産処理もままなりません。
破産の場合、規模によっては少額(簡易)管財手続きが使える
破産の方が、少額(簡易)管財手続きというのがあるので、もう少し、費用が安く済む場合があります。
ですが、費用を安くすませるためには、弁護士が破産の申し立て前にかなり倒産後の会社の残務処理(従業員、売掛、不動産、在庫、仕掛り等)を進めておかなければなりません。
したがって、弁護士費用は高くなる傾向にあり、いずれにせよ、かなり費用がかかることは間違いありません。
ただし、残務処理がかなりあるということは、売掛金の回収や、在庫処分、不動産の売却等で費用が捻出できる場合がほとんどでしょう。
会社が倒産したら家はどうなるか?
家については、よく、
「銀行に取られてしまう」
っていう言い方がされておりますが、銀行が自分のものにするわけではありません。
正確には、銀行が担保に取っている(抵当に入れている)不動産を自らが取るわけではなくて、その不動産を換金するのです。
具体的には、債務者に不動産を売らせたり、あるいは、競売にかけて、その不動産をお金に変えて、銀行からの貸付金の返済の一部(または全部)に充当するわけです。
ですが、競売の場合には、
値段がつくかどうかわからない、
あるいは、
値段がついても安い値段しかつかない、
ということも考えられます。
そこで、いきなり競売にかけるという事は少なくて、普通に売却することを債務者に勧めてきます。
これを「任意売却」といいます。
「任意」というのは、債務者が自発的に「任意で」売却するためです。
(ただ、現実には、これを断れば競売にかけられるだけなので、「任意」とは言い難いですが。)
いずれの場合にも、任意売却の売り出し期間中(あるいは競売の手続き期間中)は、
ローンが払えていませんが、まだ、新たな買主が決まっているわけではないので、その間は、事実上、家に住んでいられます。
ただし、最終的には、その家を出ていかざるを得ません。
会社の倒産と子供の教育資金
「妹は、まだ高校生で、少なくとも高校は卒業させてやりたい」
という点については、要するに、
高校を卒業するまでの学費を払い続けてあげられるか、
ということにつきます。
別に、親(親の会社)が倒産(破産・民事再生)したからと言って、
子供が学校を辞めさせられるということはありません。
さすがに、債権者が子供の学校にまで行くことはありません。
さすがに、そこまでやったら、警察沙汰(刑事事件)です。
なお、これまで、そのように、子供が就学途中で、親の会社が倒産になったというケースもありました。
しかし、多く場合には、奨学金であるとか、学費の納付猶予などの措置をとって学校も制度の範囲内では協力してくれます。
少しでも遅れたからすぐ退学という学校はありませんでした。
もちろん、「弁護士さんから○○の書類をもらってくれ」
などと言われて、対応した場合もあります。
ただ、きちんと事情を説明して、まじめに対応すれば、そんな酷いことにはならないと思います。
~以上、一般的には、事業規模が大きければ大きいほど、いろいろなことが起きますが、本当に、発生する問題は細かいことで言うと千差万別です。以上、弁護士(宮城・仙台)からのご説明でした!~