~任意整理というのは、いまある借金(債務)について、各債権者とリスケジューリングして、できればなるべく長期の分割払いにすることです。個人再生は返済期間は3年ないし5年ですが、任意整理は債権者によっては、7年程度の長期を認めるところもあります。長期にすればするほど、月の支払額が少なくなります。それだけ見ると、長期にすればするほどよいのですが、その期間にいろんな経済上のトラブルが発生することもあり得ます。今回は、こんなケースについて、弁護士(仙台・宮城)が解説します~
【ご相談内容】任意整理のリスク・デメリット(返済が継続できない)について
やってしまいました。
実は、以前、司法書士に依頼して、債務の任意整理を行い、その後約3年間、現在に至るまで、なんとか無理して働いて、決められた返済分を月々払って参りましたが、なんと、やってしまいました。
急カーブで曲がり損ねて、自損事故で車が大破してしまいました。
一度、クレジットカード類は全部、使用停止になっており、しかも、自動車ローンについても、任意整理をしたときに、たしか、司法書士から7年間はローンは組めないと言われた記憶があります。
といっても、現金で車を購入するなど、今の経済状況ではできません。
他方で、車がないと通勤できず、通勤できなければ仕事も続けられないので、あまり考えたくはないですが、最後の手段である破産をしなければならないかもしれません。
両親にも相談してみましところ、
「なんで、そんな馬鹿な任意整理なんて途方もなく長い契約したんだ!」
と怒られました。
その時は、それしか方法がないと思ったからなんですが、両親も、知り合いの弁護士さんに話を聞いてくれて、
「個人再生でも自己破産でもやっといた方がよかった」
と言われたそうです。
ただし、その弁護士さんによると、個人再生でも、破産でも、するのにお金がかかり、個人再生や破産をするのに200万程度は必要だそうです。
ただ、両親によると、
「破産をするとすれば費用もかかる上に、そもそも破産をするな」、
「会社にいられなくなるから、給料も入らなくなる」、
「なので、なんとか、這ってでも頑張って会社に行って、返済を続けろ」、
と無茶なことを言います。
なお、任意整理をしてきたたものの返済すべき金額としては、あと350万程度あります。
八方ふさがりでどうにもなりません。
これまで、真面目に必死に頑張ってきたのに、こんな目にあうなんて、正直、やってられない気分です。
【ご回答】
任意整理の返済で金がないけど車が必要
自動車の事故で、これまで頑張って返済し続けてきた緊張の糸がぷっつりと切れてしまった感じでしょうか?
車がないということで、通勤ができないとなると、たしかに会社にお勤めを継続することができなくなるわけで、問題を整理すると、要は、通勤用の車がないからどうにかしたいということですよね?
任意整理中と言うことで、まだ、債務返済の遅滞が完了してないということでしょうから、自動車ローンの審査はたしかに通らないでしょう。
ですが、月々の返済で余剰もないので、現金では買えないということでしょうから、困りましたね。
ただ、ローンが組めないということでしたら、それこそ、ご両親の名義で車を購入していただいて、月々のローン返済額をレンタル料として、あなたから両親にお渡しする、などということはできないものでしょうか?
もちろん、通勤に必要だから車を購入するということですから、必要最低限の超安い車を購入する必要があります。
ちなみに、自動車の保険はかけていなかったのでしょうか?
保険のカバーの範囲もありますが、自損でも保険がおりる契約になっている場合もありますので、もう一度、よく確認されてはいかがでしょうか?
任意整理を継続(返済)できない場合どうするか?
それで、せっかくこれまで返済を頑張って続けて来たようですが、返済原資がない以上は、今後の返済は厳しくなるので、個人再生や破産も検討しなければいけないかもしれないです。
たしかに、個人再生や破産も費用がかかります。
そして、個人再生や破産に必要な司法書士費用ないしは弁護士費用は各司法書士事務所ないしは弁護士事務所によって異なります。
ですが、個人の個人再生や破産手続きをするのに、負債総額350万円なのに、個人再生や破産の費用が200万円かかるというのはちょっと考えづらいです。
法人(会社)なら分かりますけど、個人なら40~50万ぐらいではないかと思います。
それに、その金額でも一括は難しいでしょうから、分割払いで対応してもらえる事務所を探した方がいいでしょう。
そもそも、あなたご両親の聞き違いかもしれないので、まずは自分自身で、どこかで相談してみてください。
それで、200万円と言われたのであるとすれば、セカンドオピニオンというか、相見積もりというか、もう一度、どこかで相談しなおした方がいいと思います。
破産管財人費用、再生委員費用が別途かかる場合がある
なお、破産事件については、破産管財人がつくか、つかないかで、費用が変わってきます。
破産管財人が就いた方(これを「管財事件」といいます。)が、費用が20~30万程度高くなります。
個人再生の場合には、司法書士に依頼した場合には、再生委員というがつけられるので、その費用も別途、上乗せで支払わなければなりません。
しかし、個人再生で再生委員がついた場合でも、破産が管財事件となった場合であっても、個人の個人再生や破産の場合にはその費用は、総額でも、
60~70万
ぐらいではないかと存じます。
もちろん、個人再生や破産費用を一度に工面するというのも、お話を聞いていると難しいみたいですが、現実的には、通常、個人再生や破産費用の積み立てを認める司法書士事務所ないしは弁護士事務所がほとんどです。
ただし、どこまでの長期分割払いを認めてくれるのかは、大きく異なりますので、そのあたりは、よく探してみることです。
破産しても会社を辞めなくてもよい
個人再生や破産費用の件もご両親の説明が合っているかどうかは疑わしいですが、破産すると会社を辞めなければならなくなる、などというご両親の説明は間違ってます。
おそらくは、ご両親は、「破産」という言葉に、猛烈に拒絶反応があるのでしょう。
今更、こんなことを言うのはなんですが、任意整理をした当時の事情は 、いろいろ、 あったにせよ、債務整理の方法として、任意整理を選択した場合には、長い返済期間中、このような突発的なこともあることを考えるべきでした。
今回は、自動車事故でしたが、
会社をリストラされたり、
体を壊して働けなくなったり、
子供の教育費が予想外にかかるとか、
離婚になって慰謝料・財産分与をするとか、
本当に、人生いろいろなことが起こります。
(他方で、宝くじがあたったりとかいうことはそう滅多に怒らないのですが)
長期の任意整理をする場合には、個人再生や破産も視野に入れて、総合的に検討した方がよいというのはそういうことです。
いずれにせよ、やけを起こしてはいけません。
なんの慰めにもなりませんが、人身事故を起こさなくてよかったではないですか。
刑事事件ともなれば、それこそ目も当てられませんよ。
落ち着いて考えれば、解決策は必ずあるはずです。
~本件は、問題は通勤交通手段ということですから、法律上の話もともかく、その手段をなんとか確保できないかを落ち着いて多面的に検討することが必要です。以上、弁護士(宮城・仙台)からの解説になります~