別居中でも個人再生で住宅を維持することは可能?

【ご相談内容】別居中の個人再生(住宅資金特別条項)について

現在、別居中です。

理由は私の借金と妻に男がいることです。

ですが、まず、妻は一切そのことを認めようとしません。

加えて、妻は、私の借金のことばかりを離婚の理由として私を攻撃してきており、私に対して慰謝料を寄越せと言っております。

ですので、私としても、男の件を棚にあげて、全ての責任を私に押し付けようとするので、つい頭にきて、持っていたスマホを妻に投げつけたら、妻の額に当たってしまいました。

妻は、大騒ぎをして警察を呼び、私は警察にそのまま連行されました。

警察官から、

「奥さんは、あなたが大人しく家を退去するのなら被害届は出さない、と言っているけどどうする?」

「被害届を出されたら、一応、うち(警察)としても、あなたを逮捕しないといけなくなる。」

と言われて、やむなく、家を出ました。

子供は、7歳の息子が一人ですが、完全に妻に取り込まれ、洗脳されてしまったため、私には会ってくれなくなってしまいました。

借金は、私の趣味である車に少しお金を掛けすぎたことが理由で、その点は否定するつもりはないのですが、このまま妻に家も子供もとられてしまうのは絶対に納得できません。

そもそも、一緒に暮らしていたときも、妻は、いつも、

「こんな家なんて欲しくなかった」

「前の賃貸マンションの方が全然、良かった!」

と言っておりました。

ですので、妻は連帯保証人にもなってくれず、私が100%住宅ローンを背負って、ここまで頑張ってきたのです。

そこで、借金の整理については、私は、個人再生をして何としても家を守り、併せて離婚裁判を起して、妻を追い出し、子供を取り戻します。

ですが、とあるインターネットのホームページを見たところ、

『住宅ローン特別条項は自分で住んでいないと使えない』

『離婚前提の別居中においては、個人再生で家は守れない』

と書いてありました。

なんとかならないのでしょうか?

あわせて離婚も頼める弁護士を探しております。

【ご回答】~弁護士(仙台・宮城)から~

住宅資金特別条項の適用要件

住宅資金特別条項(住宅ローン特別条項)は、他の借金と異なり、住宅ローンだけは支払いを続けて、住宅を守ることができるようにする特別な条項(条件)なのです。

ですので、住宅ローンを抱えており、かつ、借金の整理をしたい方は、個人再生を選択するのです。

自己破産ですと、住宅ローンも含めて全ての借金の支払い義務がなくなりますが、その代わりに、住宅は処分(売却)されてしまいますからね。

ただし、どんな場合でも、住宅ローンを特別扱いできるのかって言うと、そういうわけではなく、住宅ローン特別条項を利用するための要件(適用要件)というものがあるのです。

(1) 【専ら自己の居住の用に供される】

そもそも、なんで住宅ローン特別条項が、民事再生法上認められているのかというと、経済的な「再生」をするのに、家はあった方がいいからです。

「じゃあ、『破産』の場合だって、家や住宅ローンも特別扱いしてくれてもいいじゃないか!」

そう思いますよね。

ですが、借金を全額免除(免責)する関係で、そこまですると、今度は債権者が怒るからです。

(個人再生の場合でも、債権者の人は怒るときは怒りますが、それが全額免除かそうでないかの違いです)

それで、ともかく、住むところを確保するための特別条項なのだから、住んでいない住居、例えば、別荘とか、賃貸用不動産とか、そういうものは、趣旨に合わないんじゃないっていうことで、特別条項が使えないのです。

あくまで、「住むこと」が必要です。

条文上も、

”個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が【専ら自己の居住の用に供される】もの”

と明記されてしまっております。

但し、四六時中ずっと住んでいることとは書いておらず、

【専ら自己の居住の用に供される】

とあることから、例えば、海外赴任で何年か家を空けていても、最終的に戻ってくることが予定されておりさえすれば、

【専ら自己の居住の用に供される】

と言えそうじゃないですか?

というか、少なくとも、海外赴任の場合には、大丈夫です。

住宅ローン特別条項を使えます。

それで、本件のような場合にも、

【専ら自己の居住の用に供される】

と言えるかどうかが問題ですが、結論としては、行き掛かり上、状況的に、あなたが離婚のための交渉を平和に進めるために、一時撤退(?)しているだけとも言えるでしょうし、少なくとも、状況的にあなたが自宅失うとは思えないです。

今後、離婚も弁護士をつけるそうですが、この状況で家を諦めなければならない、と言われることはないでしょう。

(担当弁護士によっては分かりませんが)

ですので、正々堂々と、

【私が専ら住むための家だ!】

と言って、個人再生手続きを進めてよいです。

(2)住宅資金特別条項の対象となる債権が「住宅資金貸付債権」に当たること

この要件は大丈夫ですか?

住宅ローンだと言っておられるし、ペアローンでもなさそうですから問題はないとは思いますが。

(3)その他の個人再生一般要件

もちろんですが、その他、個人再生をするには、継続的な収入があるとか、個人再生を進めていくための一般的な条件がいろいろとありますので、それらをクリアしていることが必要ですよ。

あくまでも、住宅ローン特別条項は、特別の条件であって、個人再生にさらにプラスアルファでくっついているものなのです。

~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(仙台・宮城)から、別居中で自分が住んでいない自宅の個人再生についてご説明しました。離婚も含め、検討を祈ります。両方引き受けてくれるいい弁護士が見つかるとよいです~