借金が圧縮されない場合がある(多い)
例えば、自己破産であれば、基本的には、借金は全部なくなります(※1)。
個人再生であれば、基本的に、借金の8割ぐらい(※2)はなくなり、残りの2割程度を返済すればよいです。
ですが、任意整理の場合には、元本が全く減らない場合があります。
つまり、せっかく費用をかけて債務整理(任意整理)をしたのに、元本が全く減らず、ただ支払期限だけが延ばせたということがあるのです。
もちろん、
「この債権者からの激しい督促がやめばよい」
「支払い期間が長くなり月々の負担が減ればよい」
「将来、利息が発生しなければよい」
という方であれば、任意整理で十分その目的を達成できます。
※1 自己破産の場合には、免責の許可が下りれば、借金(債務)の支払い義務は消滅してしまうのが原則ですが、例えば、税金(住民税・固定資産税・自動車税)や国民健康保険料・国民年金、また、婚姻費用や養育費については、支払義務は残ります。
※2 個人再生の場合には、負債が500万~1500万の方は、原則としてその負債の8割がカットされ、それを超えるとさらに負債のカット率がだんだん高くなり、300万円を超えると負債の9割がカットされます。
なぜ任意整理では借金が圧縮されない場合があるのか?
逆に、任意整理では、なぜ借金が圧縮されることがあるのかというと、それは借り入れの時期によって、過払い利息を支払っていた場合があるからです。
具体的には、2010年以前に、キャッシング等で借りたり、返済していた場合には、貸金業者は当時は、利息制限法を超える利息をとっていましたから、その取りすぎていた分は、すべて元本の返済に充てられることになります。
ですので、元本が減るのです。
つまり、2010年以降から、取引を始めた人は利息を支払っていたとしても、それは、利息制限法内の利率の利息ですから、過払い利息ではないわけです。
過払い利息がない以上、元本は減らないのです。
「交渉でなんとかなりませんか?」
法人や会社経営に関する債務整理であれば、会社をつぶすよりかはマシだという銀行ないし金融機関の判断が入りますので、交渉できる余地があります。
しかし、その場合には額が違います。
個人の方の場合に、債権者に対して、
「お宅が任意整理で元本を半分にしてくれないと自己破産するしかない」
と申し入れしても、
「元本カットは社内で受けられないという事になっておりますので」
と担当者も一律に断ってきます。
ですので、任意整理は、債権者との話し合いだ、交渉だ、等々、言いますが元本を減らすのはかなり難しいというか、会社として受けないようにしています。
ただし、
「一括で払うから、端数をカットしてくれ」
というのは、あります。
返済期間が長くて途中で支払い事故があるとやったことが無駄になる
「なんとか、7年間の返済期間で合意できました」
「ありがとうございます」
「すごい、助かります」
とその瞬間は、月々の支払い負担が少なく済むとお喜び頂くのですが、3年後ぐらいに、
「会社が潰れちゃって」
「妻が病気で働けなくなって」
「子供が公立全部、落ちちゃって学費が・・・」
とこうなると、次に、自己破産か個人再生をしなければなりません。
債務整理自体の費用が二重にかかりますし、また債務整理をするって言っても気力も続かないですよね。
それなりに、これまでの3年間も大変だったはずだと思います。
これが、自己破産や個人再生であればとっくに終わっていたはずです。
ということで、支払い事故(支払いが途中で力尽きてできなくなる)リスクをよく考えてから出ないと、一概に返済期間を長くできたからいいというものではないのです。
なのに、なぜ任意整理を選択する人がいるのか?
(1)手続きが簡単
任意整理は、裁判手続きではないので、
「あの書類が必要です」
「ここにこう書いてください」
等々の書類や手続きが要りません。
(2)官報に載らない
なぜか、官報に載ることを極度に警戒される方がおり、通常はそんな官報を見る人などいないと思うのですが、
「100%官報に載っていることがバレないですか?」
と言われると、そこまでの保証もできないので、
「まあ、そこまでお気にされるのであれば」
と任意整理を進めることにはなるわけです。
(3)自動車ローン等特定の債務を支払い続けたい
自己破産にしても、個人再生にしても、自動車ローンについては、支払いをストップしなければならず、場合によっては、そのことによって自動車を引き揚げられてしまうおそれがあります。
そこで、特定の債務を支払って、特定の債務については任意整理をしたいという要望があります。
その特定の債務が住宅ローンであれば個人再生を選択することができますが、住宅ローン以外の特定の債務、たとえば、どうしても支払いを止められない親族・友人・取引先等がある場合には任意整理が便利です。
結論(メリットとデメリットの比較)
デメリットとメリットをよく検討して、任意整理にするかどうかを決めましょう。
なお、任意整理をしたとしても、自己破産・個人再生と同様に、信用情報にはその旨が登録されます。