自己破産により、債務の返済義務が免除されるのはよいとして、その後、自分の会社勤めはどうなるのか?自営で商売をやったり、会社を立てて、再度、勝負できるのか?について、ご説明いたします。
自己破産は、お勤めに関して何もデメリットをもたらさない
自己破産をしたとしても、そもそも、会社(勤務先)が、あなたが自己破産の手続きをしたことを知る可能性はまずありません。
「でも、【官報】という書類に掲載されるらしいから、会社がそれを見たらバレるのでは?」
という心配があります。
その心配についてですが、【官報】は、そもそもインターネットでも見られます。
「やっぱり、そうしたら、会社の人がインターネットで検索したらバレるじゃないか!」
と心配しなくて大丈夫です。
インターネットで見れるには見れますが、無料では見られる期間も短期間ですし、検索機能もありません。
無料であなたのことを調べるのは不可能です。
「もし、会社が【官報】を検索できる有料版をもっていたらバレるじゃないか!」
と心配しなくても大丈夫です。
そもそも、普通の会社でわざわざ有料版の官報検索に加入してるところはまずありません。
それにですが、例えば、弁護士事務所で、ひょっとしたら、その従業員がこっそり自己破産しているとしますよね?
そうすると、その人の名前を入れて検索すれば出てくるはずですよね?
(当然、弁護士事務所なので有料の官報検索システムに入っています)
ですが、そんなことを定期的にするかと言ったら、まず、しません。
暇ではないし、たとえ暇であっても、他のことをします。
そういう感じで考えて頂ければと思います。
そして、さらには、万万が一、会社にそのことがバレたとしても、それを理由にあなたを解雇することはできません。
ただ、変な噂になって嫌だ、恥ずかしい、というのはあるでしょうでしょうから、その場合に備えた説明の仕方は考えておいた方がいいかもしれません。
自営業の場合
(1)自己破産する前から自営業をしていた場合
そもそも、自営業している方がその自営の商売を継続することを前提に自己破産するというのは、かなりハードルが高いです。
なぜなら、自己破産をすると、
あらゆる支払いはすべてストップしなければならず、
あらゆる金目の物・権利はすべて破産管財人が処分してしまう、
からです。
運送屋ですと、業者に対する支払いをとめて、車は売却されてしまいます。
建築業ですと、材料屋さんに対する支払いをとめて、工具や資材は売却されてしまいます。
ですので、実際問題として、商売を続けていくことが難しいのです。
(2)自己破産後にあらたな自営業をやろうとする場合
こちらは、何の心配もありません。
どんどん、やってください。
ただし、借り入れは難しいです。
ですが、そもそも、立ち上げたばかりの商売ですので、いきなり借り入れを起こさない方がいいです。
借り入れからスタートすると、その返済に追われることになり、落ち着いた商売ができなくなります。
ともあれ、自己破産後に商売をするのは自由ですし、実際に、商売を始めた方もいます。
ご紹介できる1つの例としては、健康食品の委託販売を始めた方がいます。
在庫を持たずに、各健康食品メーカーから商品の提供を受けてドラッグストア等に営業をかけて契約をとり、商品を入れております。
自己破産で資産を失うとしても、営業力・トークセンス等は、破産管財人でも没収できません。
もう1つの例としては、不動産の仲介・管理です。
宅地建物取引士(宅建主任者)が自己破産をしたとすると、一旦、登録を削除しなければならなくなるのですが、この人は自己破産が終わってから、新たに、試験を受けて合格して、宅地建物取引士の免許をとったのです。
自己破産歴は、試験を受けることや宅地建物取引士の登録をすることの妨げにはなりません。
ただし、宅地建物取引士の登録にあたっては、「身分証明書」の提出が必要です。
「身分証明書」というのは、【破産手続きを受けていないこと】を証明する書類なのです。
ですが、【破産手続きを受けていないこと】というのは、その登録申請をする、まさにその時に【破産手続きを受けていないこと】を意味しますので、破産手続きが終わっていましたら全く問題ないのです。
(ですが、その方もびっくりして問い合わせをしてきました)
ですので、無事、登録もできて、不動産業界で、しっかり働いております。
会社の取締役(役員)の場合
(1)自己破産する前から会社の取締役(役員)をしていた場合
そもそも、会社の取締役をしている方が自己破産すると、一旦、会社との契約が解除になってしまうので、そこで取締役の地位をうしないます。
ただし、再度、会社の取締役になることは可能です。
これは、別に裁判所からの免責の許可を受ける前でも可能なのです。
まして、裁判所から免責をもらって自己破産の手続きが全て終了した後であれば、全く問題なく取締役になれます。
(2)自己破産後にあらたに会社設立しようとする場合
こちらも、全く問題がありません。
会社設立の登記をして、100%でも、50%でも、好きだけ出資して、しかも、取締役にも、代表取締役社長にもなれます。
自己破産したからと言って、会社の出資者になることが拒否されたり、新会社の取締役になることが無効になったりはしません。
ただし、同業でやるのは、現実的には、結構大変です。
仕入れ先や外注業者に損をさせたわけですので、そこが取引を再開してくれるとは思えませんし、しかも、そのようなうわさは結構、同業者間では広まります。
~いかがでしたでしょうか。以上、弁護士(仙台・宮城)から、自己破産後のお仕事をのお話です。なお、世の中、いろいろな仕事・働き方があるので、気になることはどんどん弁護士に相談の際に聞いてみましょう!~