任意整理しても債務の元本が減額されない場合
(1)利息が利息制限法の利率に収まっている
利息が利息制限法の利率内で、過払い利息がない(払い過ぎた利息がない)ということですと、元本は減額されません。
過払い利息があるかどうかは、その借り入れの時期とか借り入れた先(銀行か、カード会社か、消費者金融か等)によります。
借り入れ時期の話からしますと、2010年(6月)以前は、貸金業者は、利息制限法以上の利息であっても、出資法の範囲内の利息であれば、所定の要件を満たせば、利息をとってもよいという事になっていたのです。
所定の要件というのが、「みなし弁済」というのですが、結局、それを満たしていないという事で、利息を払い過ぎていたということになり、いわゆる「過払い金」の問題になるわけです。
それで、話を戻しますが、いずれにせよ、出資法が2010年に改正され、利息制限法で定めた利息を超えて利息を定めることができなくなりました。
ですので、2010年7月以降の借り入れは、利息制限法で定めた範囲内の利息しか請求されていないはずなので、利息を払い過ぎたということがないのです。
払いすぎた金がない以上、元本は減らずに、今ある元本をどうやって、分割して支払うかという話になるのです。
(2)銀行からの借り入れやショッピング
銀行からの借り入れについては、時期を問わず、利息制限法内の利率ですし、ショッピングについては、立替払いなので、そもそも過払い利息が発生する性質のものではありません(※)。
※ショッピングの立替金について、リボ払いに変更すると、キャッシングと同様に見えますが、あくまで、立替払いにすぎないので、利息制限法(同法律は、金銭貸借の利息について定めたもの)が適用されないのです。
ですから、この場合も、払いすぎた利息はなく、元本が減るとかいう話にならず、元本の返済期間をどうやって長めにとって月々の支払い負担を減らしていけるのかという点が焦点になります。
引き直し計算
以上の通りで、そもそも、元本が減らないものについては、そのままなのですが、逆に言えば、2010年(6月)以前の銀行等以外からの借入金であれば過払い利息が生じている可能性があります。
それで、どうするかというと、各債権者に対して、これまでの取引履歴を出してくれと通知をして、取引履歴を入手して、その書類を見て、過払い利息があるのか、いくら過払い利息があるのか、を計算するのです。
これを「引き直し計算」と言います。
具体的には、実際に支払われた利息を改めて利息制限法内の利息として再計算して、利息制限法の超過部分の利息返済がある場合に、その支払った金額を元本に充当するのです。
そして、どんどん元本に充当していって、元本がなくなってしまう場合もあります。
その場合には、今度は、逆に、債務者であった人が債権者になって、貸金業者に過払い金の返還請求をすることができます。
これが世に言う「過払い金請求」というものです。
過払い金があっても請求できない場合がある(消滅時効)
過払金返還請求権は取引が終了した時(取引終了時)から10年を経過すると消滅時効で請求できなくなります。
取引終了時というのは、最後の借り入れ、ないしは、最後の返済のことを指します。
ただ、完済しないまま10年間、何事もなく経過するというのはあまりなく、問題になるのは、「分断」と言って、一旦、完済したのだけど、そこから、しばらく空けて、また新たに借入・返済の取引をした場合です。
その場合には、完済時点で過払い金が発生していたのだけど、10年間が経過しているので、もはや返還請求ができないということになります。
(こういうのがあるとすごく悔しいです。)
引き直し計算をした結果
そして、引き直し計算をした結果、元本が減った場合には、その元本を分割払いにする和解を債権者と行います。
【元本が減る場合】
例えば、250万円が120万円になった場合
3年間の分割だと、約3万3000円/1か月あたり
5年間の分割だと、 2万円/1か月あたり
7年間の分割だと、約1万4000円/1か月あたり
となります。
例えば、400万円が300万円になった場合
3年間の分割だと、約8万3000円/1か月あたり
5年間の分割だと、約5万円/1か月あたり
7年間の分割だと、約3万4000円/1か月あたり
となります。
【元本が減らない場合】
そして、引き直し計算をした結果、元本が減らない場合は、つぎのような計算になります。
250万円の場合
3年間の分割だと、約6万9000円/1か月あたり
5年間の分割だと、約4万円/1か月あたり
7年間の分割だと、約2万9000円/1か月あたり
となります。
400万円の場合
3年間の分割だと、約11万円/1か月あたり
5年間の分割だと、約6万6000円/1か月あたり
7年間の分割だと、約4万7000円/1か月あたり
となります。
※ただし、7年間は、債権者によってはなかなか受けいれられません。
ですので、そんな月々の支払金額になるのであれば支払いが不可能だということになりますと、個人再生ないしは自己破産も検討する必要が出て参ります。